今後の話し合い
「ヤマト、あのメイドさんって……」
ヒロシは宿泊する部屋でヤマトと2人でいる。部屋は広い、比較的大きなサイズのベッドか2つ、アンティーク調の調度品に3人掛けのソファがある。バルコニーがあるが、外の景色は森、マイナスイオンが溢れている気がする。
「やはり気になるよな。送迎したのがシャロン、後で夕食の時に料理を運んでくるのがリーナ、今頃女性陣と楽しく話をしてるのがニーナ。リーナとニーナは双子、シャロンはその7歳違いの姉」
「そういうこと聞いてるのではなくてだね……ヤマトってご主人様とか言われてたから、夜のお勤めとかも……」
「あるわけ無いだろ。3人はオレの家族みたいなものだからな。ヒロシがお願いしてみてもオレは一向に構わないけど、みんな護身術の達人だから命の保障はしないよ」
ある程度答えはわかっているが、ヒロシはヤマトに質問をしないと気が済まなかった。お決まりの回答が来るくだり、心地いい……。
「あまり詮索しない方がよさそうだな。多分女性陣の方が騒ぎ立てていると思うよ。とくに……あおいとか」
「そうだよな。ニカは耐性有りそうだけど、あおいあたりは不潔、とか勘違いするかもな(笑)。アイドルだし」
ヤマト、正気なのであろうか……。学年トップの頭脳で生徒会長、こんなに優秀なのに、あおいからの好き好きビームを感じない……。ヒロシにだって分かる。ニカからも相談を受けているのだが。でも黙っておこう、せっかく仲良しグループになりつつあるし、ギクシャクするとクラス替えがないので高校生活に支障をきたす。
「その辺はニーナが得意だから任せるしかない。下手にオレから話すと怪しいしね。でさ……ヒロシには先に伝えておくけど、オレと関わるようになるとビックリすることが多々あると思う。でもそれはスルーしてくれ」
「スルーって……聞くことくらいはいいだろ、今回みたいに」
「それはいいけど。あまり驚かないでほしいってこと」
「分かった。少しだけ聞いてもいいかな…………」
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「そうなんですか! ニーナさんは香港生まれなのね」
ニカもあおい、静と共に部屋にいる。ちょうどヤマト達の部屋の向かいにある。ベッドは4台、ピンクが基調になっていてソファやカーテンなんかも薄いピンク、とても可愛らしい部屋だ。カーテンを開けると見晴らしがいい、眼下には花がたくさん咲いている庭園が広がっている。部屋にはメイドの一人、ニーナさんが来ている。黒髪にショートカット、身長はニカと変わらない160センチ前後、カワイイ系であるが……隻眼である。左目に黒い眼帯をしている。
「そうなんです。私達姉妹は小さい頃から日本語勉強してますので、日本語は大丈夫なんですよ。アジア系だから日本人と容姿はあまり変わらないけど名前はねー、日本語名あるけどダサいの」
「えー、教えて下さい!」
ニカはニーナと話をしている。ニーナは話し好きなのか流暢な日本語で答えてくれる。
「駄目よ。その代わりさっきお話したでしょ! ヤマトくんとの関係。ヤマトくんは命の恩人なの、だから私達三姉妹はヤマトくんのお役に立てることをしてるの」
話を聞いていたあおいか口を挟む。
「じゃあ、もしヤマトが男女関係を迫ってきたりしたら応じるってことなの? そもそもメイド服を着ろって命令も下ってるんでしょっ」
あおいはかなりキツメなトーンで話している。ニカはあおいからヤマトへの気持ちを打ち明けられている。当然の反応だ。
「あおいさん。ヤマトくんはヒトトキの欲望で行動するような普通の男の人とは違うの。なんて言うのかしら……聖人君子って感じかな。あまり詳しく話すことは出来ないけど、私達三姉妹は劣悪な環境で育ったの。はるか昔にオンナであることを捨てた。そんな私達にせめて女の子らしく、ってことでメイド服なのよ」
「あおい、あまり詮索しない方がいいよ」
ニカが見かねて口を出す。凄く大きなものを感じたからだ。隻眼という要素の影響もあるのだろう、生きていれば人はそれぞれ十字架を背負うが、彼女達は何か恐ろしいモノを背負っている、そう思わせる何かがある。
「あおいさん、ヤマトくんの事好きなんでしょ? 大丈夫、応援するわ! 私達の願いは……ヤマトくんが幸せになってくれることなのよ(笑)」
ニーナのその一言でビクッと反応したのは静の方だった。ニカはそれを素早く察知していた。もちろんあおいも反応したが、返答に苦慮している。
(静もかぁ、私は到底勝ち目ないから降りよう……)
ニカもとってもヤマトは気になる存在であった。先にあおいの気持ちを聞いてしまったことで諦めつつあったが、静の反応で完全に諦めることにした。
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夕食か始まった。リーナが作ったものを本人が持ってきている。ニーナとは瓜二つ、だが、ニーナとは違い隻眼ではない。
「みなさま、とうぞ、お召し上がりください」
「リーナさん、でいいですよね?」
「はい、何か」
「なんでメイド服からお着替えたんですか? お似合いでしたのに」
ヒロシが余計なコミュニケーションを取っている。リーナは薄いブルーのワンピースに着替えていた。元々リーナはメイド服嫌いなのである。
「あの服だと、お料理するとき暑いのです」
リーナが人と話している。その光景にヤマトは安堵する。リーナの心の傷が少しずつ癒えてるのであろう。ヤマトは3人と出逢ったあの日を思い出す……。
みなさんいつもありがとう
新しいキャラ登場です。次回からは2年前の三姉妹との出逢いを投稿します。面白おかしく、って作品は……作れない性分なんですよね……。




