ダンシングヒーロー
本日から夏休みスタート! すべき事が多く忙しいのは承知しているがどこか嬉しい。そして今日は足立舞さんのサッカー教室、あおいが仕事で来れない様なので、代わりに静に来てもらった。ニカとヒロシを含めて4人で足立さんの手伝いをする。
「今日はよろしくね、日本サッカー協会の高梨です。サッカー教室の運営全般の責任者です。皆さん、カトレアなのね! 私の後輩達かぁ」
「よろしくお願いします。高梨先輩!」
「そろそろ舞が来る時間ね。ヒロシくんは用具係ね、重いものもあるからよろしく。女子2人は会場案内係、列の整理とかお願いします、ヤマトくんはカトレアの生徒会長よね、代表して舞に挨拶したあとヒロシくんに合流」
ニカと静は来場する子供達や保護者の案内をすることに、二人とも見た目は抜群なのでうってつけ。ヤマトはヒロシと雑務、その前に足立さんに挨拶。決まっていたかのような差配、高梨さんやり手である。高梨さんに連れられて足立さんを出迎えにいく。
駐車場に向かうと、ちょうど一台それらしい車が入ってくる。足立舞さん、現役日本代表、先の国際大会ではMVPにもなっている。助手席から降りたのは割と小柄な女性、さすが現役、雰囲気がある。
「おはよう、舞、今日はよろしくね」
「おはようございます、高梨さん。お出迎えなんていいのに……」
足立さんはすぐにヤマトに気付いた。
「舞、今日イベントを手伝ってくれる私達の後輩。桜井ヤマトくん、他に3人来てるけど今仕事してもらってる」
「桜井ヤマトです。足立さんよろしくお願いします」
「よろしく、ヤマトくんね。私のことは名前で呼んでね。ヤマトはカトレア生なんだ、何年生?」
「1年生です」
「お手伝いってことはサッカー部なの?」
「いえ、生徒会長をしています。昨日就任の挨拶をしたばかりですけど」
「1年生で? 凄い! ではイベントの手伝いなんて楽勝ね。高梨さん、今日の夕方からの予定、キャンセルってできますか? せっかく後輩達が来てるのでお食事くらい連れてってあげたいの」
「協会本部に伝えておくね。桜井くんは大丈夫なのかしら?」
「はい! 少なくとも私は大丈夫です。他の3名にも後で確認しておきます」
思わぬ形で絶好のチャンスがきた。3人には個別に連絡をした。女子2人はOKだったが、ヒロシは都合が悪いようで舞さんとの会食は3人で行くことに。
サッカー教室が始まった。ヤマトはヒロシと合流し用具係を手伝う。三角コーンの設置やビブス配布、ゴールを移動させたり大忙しである。ミニゲームが始まる頃に大方のことが片付いた。
「ヤマトってサッカーしたことあるの?」
「少しは……サッカーチームに入ってたこともあるけど、いつもゴールキーパーやらされてたよ、デカかったから」
近くで舞さんがチビっ子とミニゲームをしている。舞さんに笑顔はない……チビっ子に対して容赦なく仕掛けて抜き去っていく……まるで踊っているみたいだ。ダンシングヒーロー、舞さんに付けられた二つ名、その名の通りの事が眼前で起きている…………。
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「ヤマト、ニカ、静、今日はありがとうね! では我がカトレアに乾杯!」
サッカー教室は問題なく終わった。舞が食事会に呼んだのは手伝いをした後輩達3人と高梨さん、高梨さんにはいつもお世話になっている。全員カトレア関係者、1人男の子だがこの男女比がしっくりくる。ヤマトは……さすが生徒会長、微塵も臆してる気配はない。とても堂々としている。
「みんな1年生なんだよね。羨ましいな。カトレアの頃、ホントに楽しかったんだから」
「舞の代から男子が入ってきたのよね。私達の時は派閥抗争が凄くて……今は派閥抗争なんてないの?」
「まだ入学したてなのでよく分からないんですけど、生徒会の権限は凄いですね」
ニカが最近のカトレア事情を話してくれた。たまにサッカー部には顔を出すが殆どサッカーの話題。学院がどう変わったか、などはあまり聞くことはない。
「舞、知ってる? 櫻会っ今ないんだって。日本文化の会みたいになってるらしいよ」
「そうなの? じゃあトイレ抗争もなくなったの?」
「なんですかそれ?」
今の学院にはトイレを牛耳っていた櫻会がないらしい。舞は少しだけ当時のことを思い出してきた……花京院……どこかで……
「ねえ、もしかして、花京院さんって、レロレロの?」
「え?」
「そうそう、すみれさん。私の1学年上で、櫻会の会長さんだった……もしや静の親戚とか?」
「あー、それ伯母です。母は三姉妹なんですよ。3人揃ってカトレアなんです、そして母も櫻会でした。トイレ抗争の話はよく聞きますよ(笑)」
「なんか懐かしいわね。すみれさんに会ったら、よろしく伝えておいて。私達とてもお世話になりましたって。今度カトレアに顔だそうかな……」
いけない。これ以上昔の話をすると……姫の話題になる。せっかくの楽しい会話が台無しになりかねない。
「それならぜひ! 生徒会としても歓迎致します。どうでしょう……近々ご招待したいのですけど」
「そうね。行こうかしら……香菜にも会いたいし。藤川先生が今校長なんでしょ、時の流れを感じるよね」
姫の事を言わずに終わらせるには、自然な会話、この流れしかなかった。そして、ヤマト達と連絡先を交換することとなった。
みなさんいつもありがとう
今日はPV少し多い(笑)。前作のメインキャラ一人目? かな。明日も午後に2本投稿します。現在執筆は11月に入ったところ、カトレア祭が終わったところなので進みが遅いです。