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獣の棲む森にて  作者:
人狼
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チュートリアル2

「あの…初めての人ばかりで萎縮してしまっていただけです。私は村人、特に役職もありません。」

幸次が、言った。

「ふーん、初日は別に白に当たっても役職さえ吊らなければ良いかなって思ってるから、役職が無いなら筆頭位置かなあ。潜伏してる狩人とか猫又にさえ当たらなかったら、グレーが縮まるから良いかってのがオレの考えなんだ。」

章夫が、頷いた。

「そうだねえ。僕もそう思うよ。梓乃は居てもあんまり発言しなさそうだし、吊っておいたほうが後々悩まずに済むかもしれないからねえ。」

梓乃は、身を硬くした。

「え、私を吊るの?」

貞行が、言った。

「役職無しって公言してるのがグレーの中で君だけだからね。役職保護のためにも、その方が良いって思うから。」

「後二分。」

博が後ろから言う。

「ヤバイ、他の精査ができないぞ。」久隆が、言った。「そうだな、そっちで黙ってる佐織さん?何かある?例えば、占い師は誰が真かとか。」

佐織は、いきなり言われて慌てて言った。

「ええっと占い師は今のところ分からないわ。最後に出て来た澄香さんが真だと思いたいところだけど、なんかそれを狙った狼な気がする。狐とか背徳だったら、最初から出るんじゃないかって。狼は、他に仲間が四人も居るから誰かが出ないか見てからでないと出られなかったと思うの。だから、澄香さんは真か狼かなって思ってる。残りの二人は分からないわ。」

佐織は白っぽいかなあ。

東吾は、思った。思ったより考えて見ているからだ。

隣りの邦典が、言った。

「あ、オレもそれは思った!オレは最初から狼だから仲間の様子を見て出たんじゃないかって思ったんだ。バッティングしたらまずいから。だから澄香の事はあんまり信用してないし、狐が出てるって言うなら歩か日向さんのどっちかだと思うね。」

同意だと白いとは思わないから不思議だな。

東吾は、思いながら聞いていた。本当にそう思っていたとしても、それがいい意見だから乗っただけともとれるからなのだ。

「残り一分です。」

久隆が、急いで言った。

「占い師は、指定先を二人言ってくれ!」

歩が、早口に言った。

「じゃあオレは乙矢さんと…幸次さん!」

澄香が言う。

「え、え、じゃあ私は妃織さんと東吾さん!」

オレ?!

東吾は、どうして自分を指定したのかと眉を寄せたが、皆そんなことを聞いている暇もないようだ。

日向が言った。

「私は、じゃあ残って居る哲弥さんと…しゃべってない晴太さん!」

久隆は、それをスマホにメモしているようだ。

「じゃあ、それで頼む。今回は何だかグレー精査が進まなかったけど仕方がない。今の指定先以外に投票してくれ!何か言い残した事はないか?」

梓乃が、慌てて言った。

「私が吊られてしまうわ!こんなのフェアじゃない、私は村人なのに!」

確かにそうなのだが、最初に名前を出されたんだし、役職が無いと言ってしまったのだから仕方がない。

だが、もし梓乃が白だった時、最初に怪しいとか言い出して、それに乗って来た数人は人外かもしれないので、情報にはなるのだ。

「時間になりました。議論時間終了です。では、準備ができた人から一人ずつ手を上げて、投票してください。」

東吾は、すぐに立ち上がって梓乃に投票した。その際、明日の梓乃の結果次第で、梓乃を吊り押した人たちの色が見えて来るかと思うので、狩人は霊媒師を守って欲しい、と言い添えた。

皆が次々に投票していく中、やはり梓乃が最多得票だった。

梓乃自身はと言えば、最初に梓乃の名前を出した哲弥に自分に黒塗りして来た人外、と言って投票していた。

結局、満場一致の状態で、梓乃は吊られる事になった。

「では、本日吊られるのは、梓乃さんです。」と、梓乃を促した。「じゃあ、こっちへ。お喋りは控えてくれ。ここから役職が見えるから。」

梓乃は、頷いた。そうして、仕方ないと諦めた様子で、ソファの方へと歩いて行って、そちらへ一人ぽつんと座った。

…誰も庇わなかったなあ。

東吾は、思った。

全員が梓乃に入れているということは、梓乃が白の可能性が限りなく高い。

「では、夜がやって来ます。目を閉じてください。」

博が言うのに、東吾は目を閉じながら思っていた。


ゲームマスターの声だけが聴こえる。

じっと待っていると、狩人の守り先を聞かれて、そうして確認してその夜は終わった。

「…では、朝がやって来ます。おはようございます。」

目を開けると、皆の緊張した顔が見えた。

博が、言った。

「昨夜犠牲になったのは、乙矢さん、日向さんです。」

二人は、顔を見合わせて立ち上がると、梓乃が居る方へと歩いて行った。

呪殺が出た!

東吾は、思った。

だが二人だ。

呪殺が起こった場合、生存していれば背徳者も共に死ぬので、この場合片方が背徳者だ。

昨日はまだ初日だったので、梓乃がそうでない限り、どちらかが背徳者で、どちらかが狐ということになる。

だが狼の襲撃は?

東吾が悶々としていると、博が言った。

「では、今日の議論時間は9分です。どうぞ。」

久隆が言った。

「呪殺が出た!指定先にどっちかが入ってたのは歩だな?」

歩は、胸を張った。

「そう、乙矢さんを占って白。だから、オレ目線じゃ日向さんが乙矢さんを囲って出て来た背徳者だ。」

「でも、じゃあ人狼の襲撃先は?」東吾が言う。「乙矢を噛み合わせてくるなんておかしい。初日はまだ背徳者が居るから、こうしてバレるからな。」

すると、貞行が言った。

「佐織さんだよ。」え、と皆が見ると、貞行は言った。「オレが狩人。昨日は、噛み合わせてくるかもって考えて、佐織さんを守った。佐織さんは白かったし、人狼が占ったふりして噛んで来たらまずいって思ってね。何しろオレも、意見を聞いて澄香さんが黒かもなあって思ってたからな。もし噛みが通ってたら、どっちが占って呪殺を出したか分からなかっただろ?オレは澄香さんが狼だと思う。」

佐織で護衛成功(グッジョブ)

東吾は、澄香を見た。

澄香は、完全にアウェイな形になって苦笑した。

「…破綻しちゃった。こうならないように考えたのに。」

歩が、言った。

「オレを噛んだ方が良かったのに。どうせいつか破綻して露出してる君は吊られるんだから、皆を守る動きをした方が良かったよ。」

澄香は、肩をすくめた。

「そうね。欲が出ちゃった。」

久隆は、言った。

「今日は澄香さんを吊る。だからこの話は終わりだ。それで大体分かってるが、昨日の霊媒結果は?」

浩介は、残念そうに答えた。

「白。梓乃さんは村人だよ。」

東吾は、言った。

「だと思った。みんな入れてたからな。だったら、一番怪しいのは哲弥、それに乗って煽った幸次、章夫か。」

章夫が、怒ったような顔をした。

「そんなの短絡的だよ。だいたい、それを聞いて梓乃に入れたのはみんなだからね。村人は五人も居るんだから、そりゃ怪しい村人だって居るだろう。梓乃は黙ってたし、僕だって白でも村利ないからいいかなって思って乗っただけだ。みんなと同じだよ。」

確かに自分も梓乃に入れている。

あの雰囲気は、他に入れられる状況ではなかった。

だが、その状況を作ったのは、哲弥を皮切りに幸次、章夫だったのだ。

確かに、この三人が人狼だったらあまりにも浅はかだしあからさま過ぎるのは確か…。

久隆が、言った。

「だがな、時間がない中で時間を取って君達が梓乃さんの事をつるし上げたのは確かだ。オレが思うに、全員ではないだろうけど、この中に人狼は確かに居ると思うし、それなら最初に言い出した哲弥より、それを利用してやろうと動いたように見える幸次と章夫のどっちかが怪しいかな。今日は澄香さんだけど、明日の事を考えて歩に護衛を寄せて明日はこの中から占わせよう。」

東吾は、頷いた。

「それがいい。オレもその方が良いと思う。」

歩が、言った。

「明後日には噛まれるぞ。ほんとにそこでいいのか。黙ってる奴らの中から消して行かなくても。」

敏弘が、言う。

「そうだな。もうこうなったら運ゲーになるし、歩のグレーって?」

歩は、答えた。

「まだ二日だから多いぞ。東吾、哲弥、妃織さん、佐織さん、章夫、幸次、晴太。」

「でもその中に三狼だ。」東吾は言った。「この中に猫又も居るし、今夜白を占ってもらったら後六縄だから吊り切りで狼は詰みだ。もう勝ったんじゃないか?」

晴太が、手を上げた。

「はいはい、オレ猫又。オレ以外の白を確定させたら残りを吊り切りで勝ちだよ。今夜一縄使って澄香さんを吊って、明日貞行が噛まれて歩の結果が落ちて、それが白だったら他を吊り切りで勝ち。そうだな、オレから見たら東吾なんか白いから占っとくといいかもな。佐織さんも、昨日から澄香さんを怪しいとか言ってたから白いしね。」

博が言った。

「あと1分です。」

時間を気にしていなかった。

東吾が慌てていると、久隆は言った。

「なんだ、もう詰まってるじゃないか。じゃあ、歩は白狙いで占ってくれ。これ、狼投了した方がいいんじゃないか?」

東吾は、まだ何があるか分からないとはいえ、もう詰みだなとは思っていた。

何がまずかったのか…多分、呪殺を一発で出されたのがまずかったんだろう。狼は、占いに出るならそこを考えて占い先の誘導しなきゃならないのか。

東吾は、勉強になる、と思っていた。何しろ、本編の人狼ゲームでは、自分は人狼なのだ。

すると、章夫が肩をすくめて、博を振り返った。

「もう投了します。ダメだこれ。ゲームが崩れちゃった。」

じっと見ていた、博が苦笑した。

「じゃあ、投了でいいね?」と、鳴り出したタイマーを止めた。「ここでゲーム終了。もうどう足掻いても人狼は勝てないって諦めたわけだな。」

ソファに座っていた、天国の皆が戻って来て、言った。

「私が悪いの。初日に囲っちゃって。占いに狐自身が出た方が良かったかもしれない。まさかこんな早くに相互占いになるとは思っていなかったのよ。」

日向が言う。乙矢が、苦笑した。

「まあ、仕方ない。オレも出ようと思ってたんだけど、日向さんが出ちゃったからね。歩の方が真っぽかったし、指定された時こりゃまずいなーって思ってたんだよね。」

澄香が、腰に手を当てて言った。

「ほんと、もっとうまくやってよ!狼だってとばっちりじゃないの!」

哲弥が、まあまあとなだめた。

「君の出方も臭かったぞ。なんか真を取ろうと出て来た感じがありありで。潜伏してた方が勝てたかもしれないのに。」

東吾が、言った。

「で、結局誰が人狼だったんだ?」

章夫が、面白く無さそうな顔をした。

「東吾が言った通りさ。哲弥と僕と幸次。初日吊りだけは避けたかったから、つい白の梓乃を押しちゃった。よく考えたら、あの時煽ったのって人狼ばっかりだったんだ。後でマズいと思ったけど、バレても仕方ないよね。」

じっと見ていた識が、口を開いた。

「…これが遊びだとは認識しているが、あまりにも浅はかだ。本戦が心配だよ。まさか年も越えずに帰る事になるのではないかとね。」

冗談かと思ったが、顔が全く冗談という感じでもない。

皆が思わず凍り付くと、博が言った。

「こら、いいじゃないか、遊びなんだし。本戦前の肩慣らしだ。本戦の時はこんな事は無い。何しろ、人狼はじっくり話し合うことができるし、狐だって背徳者と隠れて話し合うこともできるぞ。リアルタイムなんだからめっちゃ時間あるんだろうし。こんな事は無いと思う。みんな気が緩んでたんだよ。」

識は、それでも不満そうな顔をした。

「まあ、博がそう言うのなら。」と、立ち上がった。「私は、部屋へ帰る。また何か用があったら言ってくれ。」

そうして、識はそこを出て行った。

博は、ため息をついてその背を見送っていたが、東吾が控えめに言った。

「…あんまり、こんな集まりは好きでないタイプか?」

だったら、どうして参加したんだろう。

思いながら問うと、博は答えた。

「ちょっと、な。子供の頃にあんまりにも賢いから海外に留学しちまって、戻って来たらあんな感じだったわけだ。今もとんでもなく賢いヤツだから、こういう頭を使うイベントならみんなと交流して人付き合いも分かるかなあって思ったんだが…難しいよな。」

だからちょっと他とは違うのか。

皆は思って、顔を見合わせた。

博はこう言っているが、識本人は別に、上手く他人と付き合えなくても良いと考えているようだ。

章夫が、言った。

「識さんって、お仕事何をしてるの?博さんの上司って言ってたよね?」

博は、苦笑した。

「識は医師だ。研究医。オレは作業を手伝うだけの、まあ作業員というか検査員というか。そんな感じなんだ。」

「「「医者?!」」」

皆が一斉に言った。

東吾も、思わず言った。

「それって…ちょっとこっちが不利なんじゃ。っていうか、どこの陣営なのか知らないけど、生まれつきめっちゃ賢い人なんだろ?普通の医師よりずっと賢いかもしれない人なんじゃ。」

博は、ハハと乾いた笑い声を上げた。

「まあ、あっちこっちでとんでもなく頭が切れるって言われてるよなあ。それでも、頭がちょっと良いぐらいはいいんだ。でもなあ、ああいう奴らばっか見てるオレからしたら、あんまりにも頭が良過ぎたら逆に不幸だと思う。見え過ぎてさ、面白くないだよ。何もかも。」

皆は、怪訝な顔をした。

「…そうなのか?頭は良いに越したことないんじゃ。金だって稼げるし。」

久隆が言うのに、博は答えた。

「そう思うだろ?オレもそう思ってた。でも、最近思うんだ。世の中が全部絵本やデカいピースのジグソーパズルや子供番組ばっかりだったら、退屈だっただろうなあって。」

皆が訳が分からない、という顔をしたが、東吾には分かった。

つまり、識には全てが子供騙しに見えて、何もかもが面白くないと感じるのだ。

リアル人狼がそれなりに面白いかもと思って参加して、たまたまとはいえ目の前であんなゲームを見たら、失望もするだろう。

少しは骨のある人狼を見せてやれたらな、と、東吾は思っていた。

とても同い年には見えない識に、一泡吹かせてやりたいと、俄然やる気になっていたのだった。

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