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獣の棲む森にて  作者:
人狼
38/66

四日目投票

1(東吾)→6(妃織)

2(浩介)→8(章夫)

3(哲弥)→6(妃織)

6(妃織)→8(章夫)

8(章夫)→6(妃織)

9(梓乃)→8(章夫)

10(幸次)→8(章夫)

15(邦典)→8(章夫)

16(晴太)→6(妃織)

17(博)→6(妃織)

18(識)→6(妃織)

19(歩)→8(章夫)

画面に、表示が表れる。

…どうなってる…?同票?!

東吾が必死に数えていると、その結果が出るより先に、声が言った。

『同票となりました。もう一度投票してください。再び同票の場合は、二人共に追放となります。』

「待ってよ!」妃織が叫ぶ。「ダメよ、私を吊らないで!真占い師なの!」

識が言った。

「そんな問題ではない。」皆が、うろたえた顔で識を見た。「両方吊ったら縄がガクンと減るぞ。適当に入れた者は、もう一度考えろ。とはいえ、この感じを見ると私情が入っているからなかなか変わらないかもしれないがな。」

時計表示がどんどんと減っている。

邦典が、叫んだ。

「急げ!とにかく投票しろ!」

東吾は、迷わず6、妃織に入れた。ここで章夫が吊られてしまっては、せっかくの勝利への道が断たれてしまうかもしれない。

吊られるにしても、明日以降にして欲しかった。まだ、章夫から遺言をもらっていないのだ。

『投票が終わりました。結果を表示します。』

機械的な声が言うのを聞いているのだが聴こえて来なくて、東吾は必死にモニターを見上げた。

1(東吾)→6(妃織)

2(浩介)→8(章夫)

3(哲弥)→6(妃織)

6(妃織)→8(章夫)

8(章夫)→6(妃織)

9(梓乃)→8(章夫)

10(幸次)→8(章夫)

15(邦典)→8(章夫)

16(晴太)→6(妃織)

17(博)→6(妃織)

18(識)→6(妃織)

19(歩)→8(章夫)

誰も変えていない…?!

東吾は、表示を見上げて戦慄した。

皆、考える暇などなかったのだ。

同じ所に入れたのだろう。

「ああ…!!同票か…!」

東吾が、絶望的な声を上げる。

機械的な声が、告げた。

『№6とナンバー8が追放されます。』

扉が開いた。

また、フードの一団がやって来る。

章夫は青い顔をして小刻みに震えていたが、黙ってそれを睨むように見た。

「…薬が無いけど?乙矢が飲んじゃったからね。」

声は震えていたが、章夫はそう言った。

フードの一人が、章夫にあの小瓶にそっくりな物をスッと差し出した。

不思議な事に手が見えないのだが、確かにそれは存在し、章夫は意を決したようにそれに手を伸ばした。

「章夫!」

東吾が叫ぶ。

章夫は、青い顔をしながらも、気丈に二ッと笑うと、言った。

「…僕は平気だよ。勝ってくれるんだろ?僕を陥れた奴らを、徹底的にやっつけちゃって。」

章夫は、そう言い終えると小瓶の蓋を取って、グッと飲み干した。

そして、途端に椅子の上で、くたりと倒れて動かなくなった。

「いやよ!」妃織は、椅子から飛び出して必死にフードの化け物から逃げて走った。「私は真占い師よ!こんなのおかしい!」

だが、宙に浮いているフードの化け物相手に、逃げ切るなど土台無理な話だった。

瞬く間に追いつかれて囲まれると、妃織の姿はそのフードの向こうに見えなくなった。

「きゃあああああ!!やめて!やめ…ぐううううう!!」

妃織が絨毯敷きの床に倒れて、のたうち回っている足が見える。

東吾は、グッと目を閉じてそれを見ないようにした。

それよりも、章夫の所へ行きたい。

早く終わって、フードの化け物たちに去って欲しかった。

「ぐぐ…うう…!」

妃織が漏らす声が、それで途切れた。

そして、パタリと手足が床に落ちたのが見えると、フードの一団がスイッと浮き上がって、目を見開いたまま絶命している妃織の姿が、転がっているのが見えた。

『…№6と№8は、追放されました。夜時間に備えてください。』

その声と共に、スーッとフードの化け物たちは消えて行った。

そして、章夫の手にあったはずの、小瓶も跡形もなく消え去っていた。

「章夫…!」

東吾は、章夫に駆け寄った。章夫は、他の追放された者達とは違い、しっかりと目を閉じていた。

「…部屋に連れて行くわ。」梓乃が言う。「触らないで。」

だが、東吾は浮かんで来る涙を抑えて、伸ばして来る梓乃の手を振り払った。

「お前が殺した癖に!お前こそ、章夫に触るな!章夫の敵陣営だったんだろうが!」

梓乃は、首を振った。

「きっと陣営は同じよ。でも、この人は生きていたら私に近寄るなって言うから。死んでしまったらそんな事も言えないわ。あなたまで近寄るなとか言うの?だったら吊ってやるわ。」

珍しく、識がやって来てぐいと、梓乃の肩を掴むと、脇へと突き飛ばした。

「なんと鬱陶しい女。章夫はお前など死んでも傍に来て欲しくなったはずだ。私は章夫の遺志を尊重する。自分を殺した女などに、触れられたくはないだろうからな。死ぬのは君だ。君は黒、吊っても問題ない。明日確実に吊ってやる。」

皆が識の静かな怒りに驚いていると、梓乃もその抑えているのに激しい怒りが伝わる様子に怯んだようで、唇を震わせているが声を出せずにいる。

博が、寄って来て言った。

「…運んでやろう。章夫に投票した奴らは、そっちの妃織さんを運んでやるがいい。オレ達は章夫を殺したくなかったから妃織さんに投票したしな。こっちは責任を持って部屋へ連れて行くよ。」

東吾は、知らず知らずのうちに、涙が流れているのを感じた。

邦典がそれを見て、バツが悪そうな顔をしながら妃織を運ぼうと、幸次達と妃織の方へと歩いて行った。

東吾は、ただただ章夫が居なくなったことが、つらくてならなかった。


梓乃は、黙って章夫を運ぶ東吾、博、識、哲弥、晴太の後ろからまるで幽霊のようについて来たが、部屋の前で追い出されて外へと置き去りにされた。

章夫は、青い顔をしてただ目を閉じていて、眠っているようにも見えた。

哲弥が、言った。

「…真だったとオレは思うのに。」と、悔しそうに言った。「澄香の白を見たって言ってたんだ。あんな狂った女の私情で殺されて…明らかに村目線じゃない。明日は、絶対あいつを殺そう。」

識が、頷いた。

「私目線では、あいつは人狼だ。自分が生き残るために章夫を殺した癖に、死んだ章夫をいいようにしようというのが気に入らない。ここに、時間ギリギリまで見張って居ることにする。章夫を放って置いたら、あの女が何をするか分からないからな。どうせ、10時になったら鍵が閉まるのだ。」

哲弥は、身震いした。

「え、死体と一緒に?」

識は、眉を上げた。

「確かに今は死体だが、実際多分死んではいない。君は死体が怖いのか?」

哲弥は、もじもじと居心地悪そうな顔をした。

「まあ…だって、生きてないわけだし。」

博が、気遣って言った。

「オレも残るよ。だから、出て行きたい者は出て行って、夜時間に備えてくれたらいい。」

東吾も言った。

「あ、大丈夫だ。10時までオレも見張りに交代をするから。哲弥は無理だったら、いいから行って。大丈夫だよ。」

晴太も、頷く。

「うん、オレも大丈夫だ。心配するな。」

哲弥は、感謝の視線を皆に向けると、頷いた。

「すまないな。澄香は大丈夫だったんだが、どうも他は気持ち悪いような気がしてしまって。じゃあ、また。」

哲弥は、そのまま扉を開いて外の様子を見てから、サッと出て行った。

奇しくも人狼ばかりになった部屋の中で、識が言った。

「…困った事になった。私は梓乃という女を殺したい。ただの私情だが。」

博が、驚いた顔をした。

「え、お前が?珍しいな、感情的なのは嫌いだったんじゃなかったか。」

識は、チラと博を見た。

「そう、嫌いだ。ああいう女は特に嫌いだ。許せないし、視界に入ることから許せない気持ちになる。章夫が気の毒だ。殺されたからとかではなく、あんな異常な女とずっと生きて来たのかと思うと、その人生があまりにも哀れに思えてならない。だからこそ、あいつには章夫と同じだけの苦しみを与えて殺してやりたいと思う。」

晴太が、困惑した顔をした。

「あいつは猫又だぞ。こっちも死ぬ事になる。」

識は、フンと鼻を鳴らした。

「…はめてやろうと思っている。」と、東吾を見た。「この中で、一番章夫と部屋が近いのは君だな、東吾?」

東吾は、頷いた。

「ああ。オレは1号室だから、斜め前だし目の前だ。君達はみんな三階だろ?」

識は、頷く。

「そう。そして、あの女の部屋はどこだ。」

晴太が、答えた。

「あいつは9号室だから階段挟んで向こう側だよ。だから?」

識は、言った。

「まず、私達は10時までここには居られない。なぜなら、階段を上がって部屋へと戻る時間が必要だからだ。遅くとも5分前には絶対にここを離れないと、間に合わないだろう。だが、東吾は違う。自室の扉を開いたままで居たら、ギリギリまでここに居ることができるだろう。そして、あの女だが、執着が半端ないだろう。せっかく章夫がここに無抵抗で居るのに、簡単にあきらめるとは思えない。」

博が、ため息をついた。

「ああ、扉の外に居る。」識以外の皆が驚いた顔で博を見ると、博は続けた。「聴こえるんだ。中を窺おうと扉に貼りついて、爪でがりがりと扉を掻いている。まるで化け物だな。」

その様子を思い浮かべた東吾はゾッとした。

梓乃は、扉に貼りついて中から東吾達が居なくなるのを待っているのか。

絶対に章夫を一人にできないと、東吾は思った。

識は、言った。

「…それを利用する。」皆がどういう事だと眉を寄せると、識は続けた。「もう終わらせたいからな。梓乃を殺す。東吾に指示をするから、それを聞いてくれ。」

東吾も、他の皆もゴクリと唾を飲み込んだ。

識は、その策を人狼たちに話して聞かせた。

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