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獣の棲む森にて  作者:
人狼
28/66

二日目の夜時間

それから、それぞれがもう、食事をする気持ちにもなれなくて、適当な物を手にして、部屋へと帰って行った。

章夫は生き残った…だが、明日はどうなるか分からない。

東吾は、昼間散々眠ったせいか、しっかりと目が冴えていて、話し合いの時間が来るのをまんじりともせずに待った。

投票結果は、まずい事に章夫を怪しんでいる者達が6人も居た。

狼陣営五人が全員久隆に入れたので、何とか吊りを逃れたのだが、これから先、誰かが吊られたら数が減って来るのだから、明日ローラーされなかったとしても後々がまずい。

そんなことを考えて悶々としていると、いつものようにバチンと音がして、部屋の閂が抜ける。

もう慣れたように部屋を出ると、斜め前の部屋から章夫が出て来た。

疲れているように見えたが、その目には怒りも垣間見えた。

東吾はなんだろうと訝しんだが、何も問わずに階段へと向かった。


昨日と同じように階段で晴太と博と合流し、四人で居間へと入った途端、章夫がまだ点灯したままのモニターを指して、叫んだ。

「見てよ!投票先!」

東吾は、思ったより多く章夫に入ったとハラハラしたのを覚えていたが、それでも何とか人狼の数で押し切って章夫は吊られずに済んだ。

章夫に入れている数が思いのほか多かったので、怒っているのか。

だが、博が言った。

「…梓乃さんが、章夫に入れてる。」

「え?!」

東吾は、思わず声を上げて慌てて確認した。

すると、博が言った通り9の投票先は、8、章夫になっていた。

「…梓乃さんと、あれから話してないのか?」

東吾が言うと、章夫は頷いた。

「泣いて出て行ってから話してないよ!でも、これじゃあ私情で入れてるわけじゃないか。精査とかしてないんだろう!」

晴太が、呆れたような顔をして言った。

「あんな振り方するからだよ。もっと優しくしたら良かったのに、とりあえずこのゲームの間だけでもさ。もう梓乃さんの票は望めないな。でも、猫又かもしれないのに噛めないし、めんどくさいな。」

「最後まで残したら面倒な事になりそうだけどな。」博が言う。「識に黒を出してもらっても、梓乃が吊られたら次の日誰が道連れになるのか分からないし、猫又がバレる。呪殺を装うにもだから、占い位置を合わせておくことができないわけだ。最悪、人狼が犠牲になるかもしれないしな。」

章夫は、ソファの上のクッションを振り回して八つ当たりながら、言った。

「めっちゃ腹立つ!殺してやりたいのに、できないじゃないか!向こうは僕を殺しに来てるのにさ!」

東吾は、言った。

「まあまあ、落ち着け。とにかく、今は誰を襲撃するかだ。明日からの事は、オレが梓乃さんを道連れにして死ぬって方法もあるから、安心しろ。最悪、そうするつもりだったしな。このまま最終日までもつれ込んで章夫が残っていて、あの子が居たら面倒だろう。票が章夫に入るってことだもんな。もう少し盤面が動いて来たら考えよう。」

博は、頷いてソファに座った。

「そうだ、落ち着け。梓乃さんの事は、狐だって黒を打ちやすい位置だから打って来るかもしれないじゃないか。そうなった時、多分猫又COするだろうが、東吾も出る事になるだろう。共有の様子だと、東吾の伏線がかなり効いていて絶対に東吾の方を信じるだろうから、有利だ。一応、危ないからと両方を吊らないことを提案して、梓乃さんに黒を出した占い師とは別の占い師にも占わせさせる。その夜、東吾が梓乃さんを噛めば、二つの死体が出るからどっちが真なのか分からないだろう。それで行こう。処理するには、それしかない。できたら犠牲を出さずに進行するつもりだが、明日の章夫の運命がまだ決まっていないからな。全員が残って勝利するのは無理かもしれない。村は馬鹿ではないからな。」

章夫は、ため息をついた。

「…めっちゃ腹が立つけど、分かったよ。東吾の命を犠牲にしてまで梓乃を殺そうとは思わない。でも、それなりに苦しい立場にはしてやるつもりだよ。皆が怪しまずにはいられないように議論で詰めてやる。僕にこれまで散々迷惑かけておいて、許さないよ。」

梓乃が自分を殺しにかかったことが、余程腹に据えかねているらしい。

晴太が、ため息をついた。

「それで?識さんは誰を噛めって言ってた?」

博は、頷いた。

「今日は共有者のどっちか。多分、狩人は邦典の方を守るだろうと思うから、オレは敏弘の方を噛もうと思ってるんだがどうだろう。」

東吾は、頷いた。

「じゃあそれで。護衛成功にはならないかな。邦典を守るってほんとに思うか?」

博は、うーんと顔をしかめた。

「まあ、護衛成功が出ても一回ぐらいなら何とか。発言力を見ても邦典だと思うんだ。連続護衛無しだから、昨日あたり敏弘を守ってそうな気がするしな。他は残しておきたいし。」

ほとんど運だ。

だが、二日連続吊りを逃れただけでも、かなり運はこちらへ良いように流れているように思えた。

「…よし。じゃあ敏弘で。」

章夫が、腕時計を開いた。

「じゃあ、僕が入力するね。」と、ポチポチと何のためらいもなくキーを押した。「終わった。これで明日噛みが通ってたらいいな。で、他に何か言うことある?」

博が、言った。

「いや、何も。識は明日、晴太を囲う。これでオレと晴太が識の白に収まって、章夫は霊媒、グレーに残るのは東吾だけになる。妃織さんが今夜誰を占っているかだな。」

東吾は、ため息をついた。

「…うん。覚悟はしてる。もしかしたら真占い師で、オレに黒を打って来るかもしれないし、そろそろ黒を出したい人外が黒を打って来るかもしれない。妃織か乙矢か、どっちが真だと思う?」

博は答えた。

「相変わらず識が言うには妃織の方だな。気付いたか?あんな感じだけど、段々白くなって来てるぞ。」

それには、東吾も気付いていた。なので、頷いた。

「知ってる。あの余裕が、仲間が居るからなのか、それとも真だからなのかって思って見てた。でも、考えたら狐だったら二人きりだ。あんな風にはなれないよな。人狼だったら別だけど。」

章夫は、言った。

「だったら妃織黒で考えておく?で、乙矢が狐か背徳者って村に思わせる方向で。なんか議論でポカしたら突っ込んで黒塗ってよ。ちなみにオレ、明日久隆黒って言うからね。」

博が、頷いた。

「だろうな。識もそう言っていた。そうするべきだって。もしかしたら、君目線で縄が足りるってことで、吊られる可能性があるけどな。出来る限り庇うが、流れ次第では難しい事もある。」

章夫は、首を振った。

「いいよ、別に。吊られる前に思い切り梓乃を黒塗りしてやろうと思ってる。まあ、状況を見てね。勝ったらいいわけでしょ?ゲーム後で笑って死体蹴りしてやるつもり。」

東吾は、さすがに言った。

「こら。ダメだって、そんな、負けた村人たちがみんな死ぬようなこと言ったら。まあ…多分そうなるんだろうけど。」

博は、ため息をついた。

「章夫に任せる。それが勝つ原動力になるならそれでもいい。とにかく、明日はそうなるからな。東吾も、念のため黒を打たれた時の対応を考えておけよ。覚悟してないと、しどろもどろになって怪しく見えて吊られるからな。久隆が何だったにしろ、これで真霊媒は居なくなった。識が黒を打ちやすくなったんだ。章夫を真と置いてもらえるように、頑張るしかない。乙矢と対抗することになるから、あいつは絶対章夫吊りを推して来るからな。」

東吾は、確かにそうだ、と頷いた。

「分かった。帰ったらしっかり考えておくよ。」

まあ、もう既に覚悟は固まってるけどな。

四人は頷いて、そうして早く寝るために、部屋へと急ぎ足で戻って行ったのだった。

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