もしかしたら問題が
久々の更新になってしまいました。
シスターのことも見ることが出来るようになって、了解を得て詳細を見ることになっての話になります。
シスターが許可してくれたので、シスターの[職業]の項目を詳しく見てみると、シスターが望んだ、シスターのレベルを上げる方法はすぐに分かった。
「やっぱり罠師の僕が、罠で獲物を得ると経験値が入るように、シスターもシスターの仕事で経験値が入るみたいです」
「具体的には、どういうことなのかしら?」
「えーと、それは説明に書かれていないのですけど、シスターは自分の[職業]がシスターだと知ってから覚えたことって、何がありますか?
たぶん、それがシスターの[職業]としての仕事だと思いますから」
「ということは、シスターの学校に通って覚えたことということなのかしら。
シスターとしてしていることなんて、私は何も特別なことはないと思うのだけど。
もちろん神様に祈るというのは、シスターとして当然しているのだけど、それは誰でもしているでしょ。
それ以外は、私の場合はみんなのことを世話したりもあるけど、それはしていないシスターもいるわ。
あとは、治癒魔法で治すこともあるけど、それは冒険者でも使える人がいるし、[聖女]のルーミエちゃんが使えるようになったのは当然だけど、[罠師]のナリートも使えるようになったよね」
ああそうか、シスターは自分の項目が見えないから、シスターになってから増えた項目とか解らないよな、と僕は思ったのだけど、よくよく考えてみたら、[罠師]の罠によって獲物を得ると経験値が1.5倍で入るというのも、項目には直接関係がなかった。
でもとりあえずは、見える項目に頼るくらいのことしか僕には出来ない。
「えーと、[治癒魔法]と[製薬]、それに[説法]なんてのは、シスターの学校に入ってから覚えたんだと思うので、それらのことをするのはシスターの仕事ですよね」
「もしかして、今のは私を見ると項目としてあることなの?
私、ナリート君に見てもらって、ナリート君が見えた内容を、まだきちんと知らされてないわ。
それじゃあ、先にそれを書き出してみてくれないかな」
シスターが紙と筆記具を用意してくれて、僕はその紙に見えた内容を書き出した。
シスターはその書き出された内容を見ると、ちょっと考えてから言った。
「[採取]は怪しいけど、[索敵]、[農業]、[木工]、[火魔法]、それにきっと[筋力]と[敏捷]というのは、農家の娘としての元々からかしら。
他のことはきっとシスターの学校に入ってからのことね」
「ええっ、[掃除]と[料理]も学校に入ってからのことなんですか?」
「そうよ。 シスターの学校は全寮制で、食事も当番で自分たちで作ることになっていて、料理は上級生にみっちり仕込まれるのよ。
それに身辺を清潔に保つということで、掃除がすごく厳しく毎日されていたの。
農家なんて、日々そんなに掃除なんて隅々まで出来ることじゃないから、私はなかなか大変だったわ。
でも、流石に料理や掃除はシスターの仕事ということではないわね」
「確かにそうですね、僕もそう思います。
やっぱり、[杖術]というのはともかく、[説法]とか、[治癒魔法][製薬]なんてのが、シスターの仕事に関係するのではないですか。
それに項目じゃないですけど、『真偽の耳』の技能を使うとか」
「うん、『真偽の耳』はシスターの特別なところだから、絶対にシスターの仕事になると私も思うわ。
[説法]も確かにそうだと思うけど、私なんかじゃ大したことは出来ない。
同様に、これは私だけじゃなくて、若いシスターは誰でもだと思うけど、[治癒魔法]と[製薬]は、あまり使わないのよ。
もっと高位の人が使う治癒魔法は効果がすごいのだけど、私が使える治癒魔法なんて弱いものだから、積極的に使うという程のことではないから。
製薬は、そもそもなかなか材料となる薬草なんかを、採りに行く時もないしね」
「でも、きっとその辺のことがシスターの仕事ということで、経験値になっていくんじゃないかなぁ。
僕はそんな気がします。
説法については分からないけど、治癒魔法は積極的に使うとか、製薬に励むとかしてみるのが良いと思うな」
「そうね、なるべくそうしてみるわ。
ナリートくんとルーミエちゃんが、薬草を集めてくれるのだしね」
僕とシスターの話に入れずに、ずっと聞いているだけになっていたルーミエが、そのシスターの言葉に応えた。
「シスター、あたし、頑張ってたくさん薬草を採ってくる。
傷薬を作る薬草だけじゃなくて、色々なのをちゃんと覚えて採ってこれるようになる」
「うん、お願いね」
ルーミエはシスターにそう言われて、ちょっと嬉しそうだった。
ルーミエはそれから僕の方を見て言った。
「ナリート、私もシスターみたいに、経験値を得る特別な方法を知りたい」
「あ、ルーミエはまだその辺は見えないんだ」
「え、嘘、なんで、意地悪?」
「意地悪じゃない。 本当にまだ見えないんだ。
次のレベルになれば見えるはずだから、きっとルーミエは今日レベルが上がったから、明日か遅くとも明後日になれば、見えると思うけど」
あ、しまった、後の方は言わなくても良かった。
「明日、必ず私のことをしっかりと見てね、約束だからね」
ルーミエにしっかりと約束させられてしまった。
「シスター、一つ聞いても良いですか?」
僕がそう言うと、シスターはちょっとだけ首を傾げて、微笑んだ。
了承の合図だと思って僕は続ける。
「シスターの治癒魔法には『イクストラクト』というのがありますけど、それってどういう魔法なんですか。
一度その言葉を聞いた気がするのですけど」
「えーとね、聞いたのはたぶん、砂利のところで転んだ子を治療した時ね。
『イクストラクト』という魔法は、体内の異物を外に出す魔法なのよ。
あの時は、傷口に入り込んでしまって、水で流しても取れなかった、食い込んでしまっている砂粒を、痛みを与えないで取り除くために使ったのよ」
僕は、ちょっと今のシスターの言葉に引っかかりを覚えた。
あれ、体内の異物を外に出すことが出来る魔法なんだよね。
「シスター、異物なら何でも外に出せるんですか?」
「うん、理屈ではそうなんだけど、なかなか難しいのよ。
魔法を使う人が、その異物をしっかりと分かっていないと効果がないのよ。
私が使った時は、傷口に異物が見えている状態だから、異物を完全に認識出来たから、しっかりと異物である砂粒なんかを取り除くことが出来たけど、見えない物を取り除くとなると途端にすごく難しくなってしまうの。
例えば、矢が刺さって、抜くときに体内に鏃だけ残ってしまった、なんて時は、その鏃の大きさや形が判っていないと、魔法が成功する確率がドンと下がっちゃうの」
「えーと、その魔法は、そういった物にしか効かないのですか?
僕が聞きたいのは、体内に入った生物には効かないのか、ということなんですけど」
「もちろん物じゃなくても効くわよ。
気持ちの悪い話になっちゃうけど、怪我をして、ちゃんと治療しないで汚くしていた人が、怪我の部分にウジが湧いちゃって、とても痛がったり苦しんだりすることがあるのね。
正直に言うと、そこまでになってしまった人はほとんどが死んでしまうのだけど、少なくても湧いたウジを全部取ってしまえば、かなり痛みが減るのよ。
これはウジとか、その原因になる卵とかがどんな物か判っているから、意外と簡単に私のような新米のシスターでも、取り出して楽にしてあげることが出来るわ。
私も実際に経験があるわ」
「なんかなかなか凄い魔法なんですね」
「そうね、私は高位のシスターが、凄い腹痛で苦しんでいる人を、この魔法を使って簡単に救ってしまったのを見たことがあるわ。
遠くから見ただけだから、実際にどんな物を取り出したのか分からなかったのが、とても残念なんだけど」
僕はシスターの話を聞いていて、ふと考えたことが確信に変わった。
僕は自分の考えが間違っていないか、もう一度考えてみてから、シスターに言った。
「シスター、たぶんですけど、そのイクストラクトという魔法で、僕もですけどルーミエが冒されている寄生虫も、体外に取り出してしまうことが出来るんじゃないですか?」
シスターは僕の言葉に、「あっ、なるほど」と自分では考えてみなかった方法だと感心したような顔をしたのだけど、それから少しだけ考えて言った。
「うーん、出来そうな気がするけど、私には無理ね。
私にはルーミエちゃんとナリートくんが冒されている寄生虫というモノが、どんなモノなのか解らないもの」
「イクストラクトという魔法は、失敗したら何か問題が起こるのですか?」
「どうなのかしら。 私が経験があるのは、この魔法をシスターの学校で教わって練習している時に上手く出来なかったことくらいだけど。
その時は、失敗しても取り除こうとしたモノが取り除けず、私が疲れただけだったけど」
「だとしたら、試してみてくれませんか。
僕が実験台になります。 ルーミエだと、何か問題が少しでもあったら、それこそ大問題になってしまう気がするけど、僕ならたぶん大丈夫だから」
ルーミエがその僕の言葉に何か言うかなと思ったのだけど、ルーミエは黙ったままだった。
自分でも自分の[体力][健康]を見れて、それらの問題の大きさが解ったので、僕の言葉に反論することが出来ないと思ったのだろう。
「でもね、ナリートくん、試してみるのは構わないのだけど、それ以前にさっきも言ったのだけど、私には2人が冒されている寄生虫というのが、どういったモノなの分からないのよ」
「大丈夫です。 それがどんなモノだかは、僕は3つくらいの候補を教えられます。
きっと試せば、それのどれかが該当すると思います」
「ナリートくんは時々、かなり難しい言葉を使うよね。
『該当する』なんて言葉、どこで覚えたの?
でもそれよりも、3つの候補があるとか、なんで分かって、それを私に教えられるというか、そんなことを知っているの?
私でも良く分からないのに」
「えっ、そうですね、なんでだろう。
レベルが上がったら、何だか急にそういうことを知っているのに気がついた、という感じかな」
「そこがナリートくんの不思議なところなのよね。
レベルを上げることが出来たのは、罠師という職業のせいだと理解できたのだけど、そういった知識があることは、やっぱり分からないわ。
教わった覚えもないのに、計算が出来ることに前に驚いたのだけど、同じようなことなのかしら。
レベルが上がれば、そういった知識がひとりでに付くのなら、ナリートくんと[全体レベル]が同じらしい私も、そういうことを知っていて良いと思うのだけど、私は知らないから、やはりちょっと違うと思うのよ」
シスターにそう言われても、それこそ計算が出来るのと同じように、知っていると言うか、知っていることが分かるようになったとしか言いようがない。
自分でも、シスターにそう言われると不思議なような気がしたのだけど、それ以上説明のしようがないんだよなぁ。
「とにかく、試してみることは、私も協力するわ。
今までの2人の話で、ナリートくんはともかく、ルーミエちゃんの健康問題が深刻なのはよく理解できたから、それをどうにかする方法になるなら試してみる価値はあるわ。
私も今までの経験から、試してみて失敗してもナリートくんに悪い影響はたぶん与えないと思うから」
シスターが『イクストラクト』という魔法で、寄生虫を体内から除去することができるかどうかを試してみることを約束してくれた後、僕はシスターに、みんなから「リーダーにならないか」と言われていることを相談した。
「そうね、ギレンくんが居なくなったから、もうナリートくんはみんなと離れて行動する必要はなくなったものね。
それでも外に柴刈りに行く中で一番年下の方のナリートくんが、みんなにリーダーに推されるなんて、ちょっとびっくりだわ」
「そうなんです。 やっぱりリーダーは年上の人の方が良いと思うんです。
それ以前に僕がみんなと一緒に行動するようになると、みんなを川に連れて行く訳にはいかないから困るし、ルーミエと一緒に外に行くのも休みの日だけになっちゃうかなって、思って」
「ええっ、それやだ。 今までと同じに、3日に1度がいい」
ルーミエが、今度の話ではすぐに自分の気持ちを口にした。
「なるほどね、ナリートくんが色々考えてしまうのは、その辺のこともあるのね。
えーとね、その辺のことを言うと、もう少し問題があるのよ。
ルーミエちゃんには直接は言ってないみたいだけど、ルーミエちゃんだけ休みでない日の中で1日、外に出る日があるのはズルいという子もいるのよ。
確かにナリートくんとルーミエちゃんは、ここのところ特別扱いしていたという自覚が私にもあるわ。
少し考えさせてね」




