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この世界には築城士という職業は無かった  作者: 並矢 美樹


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リーダーは年上がいいと思うのだけど

更新停滞中・・・・ すみません。

 のんびり過ごそうと考えはしても、いつものように自分の分の柴刈りはしなくてはならない。

 しかし今の自分は[空間認識]のレベルが上がったからだろうか、その数字が 5 になったら、意識したらなんとなくわかる範囲が広がって、ちょっと前までは手を広げた広さくらいしか分からなかったのが、半径10mくらいの範囲で分かるようになったので、自分の分の柴を刈ることなんて、本当に短時間で済んでしまう。

 魚を焼いて食べたり、魚とスライムの罠の補修をしたり餌を仕掛けたりも当然しなければならないのだけど、それらも大して時間が取られる訳じゃない。

 今日は色々考えることを優先しようと思っているのだけど、ただぼーっと考えているというのもダメだと思うので、頭を使わない作業をしながら考え事をしようと、僕は傷薬になる草を干す網を作ることにした。

 これなら竹を裂いたり、簡単に編んだりするだけで、頭では別のことを考えることができる。



 いつもよりはいくらかのんびりとした1日を過ごして、ちょっと早めのつもりで孤児院に戻ったのだけど、水場ではもうルーミエが小さな子が体を洗う手伝いをしていた。

 何だか上機嫌だ。

 僕もいつものようにその手伝いに加わる。


 「ねえねえナリート、寄生虫に侵されているのって、あたしとナリートだけじゃなくて、他の子たちもみんななんだね」


 「えっ、もしかしてルーミエ、小さい子たちも見ることができるの?」


 「うん、洗うの手伝っている時には、体に触っているから見えるでしょ」


 僕はルーミエにそう言われて、自分にも見えるだろうかと思って、小さい子の1人を見てみようとした。

 僕には見えない。


 「今、見てみようとしてみたけど、僕には見えないよ」


 「えっ、なんで? ナリート、あたしのことは見えるんでしょ。

 もしかして、自分とあたしのことしか見えないの?」


 「いや、そんなことない。 秘密だけど、ジャンのことも見えた」


 「じゃ、何で、小さい子は見えないの?」


 「そんなこと、僕は知らないよ。

 それにさ、神父様だって、7歳にならないと見えないから、7歳になった時に見て、職業を教えてくれるんだろ。

 ルーミエが特別なんじゃないかな」


 「そうなの?

 言われてみれば、小さい子たちって、[全体レベル]がないし、[体力]と[健康]も数字はなくて、解説文みたいなのだけしか見えないよ」


 ルーミエは自分が見えているのに、僕が見えないと言うのを不思議に思ったようだし、小さい子は見え方も違うらしくて、ちょっと自信がグラついたみたいだ。

 本当に見えているのかに、自分でも自信が持てなくなくなったみたいだ。


 「うーん、見えているのだと思うのだけど、どの子も見えることが変わらないし、やっぱり違っているのかな」


 ルーミエは次々と小さい子に触れてみて、そんなことを言っている。


 「おい、ルーミエ、僕が言うのもなんだけど、勝手に見てはダメなのかもしれないよ。

 もうやめといた方がいいよ」


 「何をやめておいた方が良いの?」


 ルーミエに気を取られていて、僕はシスターが次の子たちを連れて来ていたのに気がつかなかった。


 「あ、シスター、次の子たち。

 あのシスター、相談というか報告というか、シスターに話したいこと、聞きたいことがあるの。

 後でシスターのところに行ってもいい?」


 僕がちょっとびっくりしている間に、シスターに気付いたルーミエがシスターにそう言った。


 「また何かしでかしたの?

 それじゃあ食事の後で、ナリートくんと一緒に部屋に来なさい。

 どうせナリートくんも関係しているのでしょ」


 ちょっとだけ、「えっ、僕もルーミエの巻き添え」と思ったのだけど、確かに否定出来ないから、仕方ないと思い直した。 あれ、でも。


 「ここから戻ってすぐじゃなくて、食事の後なんですか?」


 「そうよ。 ナリートくんは急いでここから戻った方が良いと思うわ。

 ここは私も手伝うから、もう良いわ。 先に行きなさい」


 僕は訳が分からなかったのだけど、シスターに促されて、水場を離れ、孤児院の中に入って行った。



 孤児院の中では、林に柴刈りに行く年長の男の子グループが全員、食堂に集まっていた。


 「ナリート、やっと戻ってきたな。

 よしこれで全員揃った。 新たなリーダー決めをするぞ」


 自分がスライムにやられた治療を後回しにして、シスターに僕のことを助けてやってくれと頼んでいたと、ルーミエが僕に教えてくれた一番年長の子が、みんなに向かってそう言って、新たなリーダー決めが始まった。

 今までは一番年長だったのはリーダー、僕は騒ぎになってから、やっとリーダーがギレンという名前だったというのを知ったのだけど。

 そのギレンがいなくなった今は、話の中心になっている子と、ジャンの次に助けに来てくれて、同じようにスライムを1匹討伐して倒れてしまった子が一番の年長になっている。


 「一番年上の2人のどっちかがリーダーをするんじゃないの?

  僕はそうなると思っていたのだけど」


 誰も何も言わないので、どうするのかな、と思ったら、ジャンがそう言った。

 ジャンは年下だけど、一番最初に僕を助けにスライムに向かっていったから、何だかみんなに一目置かれているみたいだ。

 もう1人の助けに来てくれた子は、一番年長の当事者だから、自分からは何も言い出さなかったようだ。

 その彼が言った。


 「確かに今までは、リーダーは一番年上の者がなることになっていたけど、その為に今回あんな奴がリーダーをすることになって、みんなが嫌な思いをして、最後はこんなことになった。

 だから、これからはみんなで、こいつの言うことなら従おうと思える奴をリーダーに自分たちで選んで、そいつに従うことにしようと思うんだ」


 話の中心になっていたもう1人が続けた。

 「それで、俺とこいつで話したんだけど、俺たち2人は、リーダーに年下だけど、ナリートを推薦したい」


 「えっ、僕。 僕は一番の年下だよ。

 それに、前のリーダー、ギレンに嫌われて、今までみんなと一緒の行動も出来てなかったんだよ」


 「そんなこともちろん分かっているさ。

 でも今回、助けに走って来てくれたし、俺たちをスライムから守るために一番闘ってくれたし、スライムにやられもした。

 お前なら、俺は信用出来る。

 それにギレンの奴は気付いていなかっただろうけど、ナリート、お前は柴刈りが一番早いからな。

 お前がリーダーをやれば、今までよりも素早く柴刈りを終わらすことが出来そうだ」


 「でも僕は1人で林に行くことになっていたからもあって、柴刈り以外のことをシスターから頼まれてもいるし、3日に一度はルーミエを林に連れて行くことも請け負っている。

 そこら辺をどうするかも、シスターとも話をしないと、単純にみんなと一緒に柴刈りに行くことも出来ないと思って、今日食事の後でシスターと話すことになっているんだ」


 僕は食事の後でルーミエと一緒にシスターのところに行くのを、自分に都合良くみんなに話した。


 「そうなのか。

 まあ、お前が柴刈り以外のこともしていることは、俺たちも気がついていたさ。

 シスターがお前に色々話しているのも、もちろん分かっていたから。

 実は、その辺にも俺は興味があるというか、柴刈りだけじゃなくて、そういうことにも加わりたいとも思って、その意味もあってお前をリーダーにしたいと思うのさ」


 「僕もナリートがしていることには興味がある。

 水筒は真似したけど、他のことも色々しているよね」

 ジャンまでがそんなことを言った。


 「待って待って、僕がしていることに、みんなを巻き込んでも良いのかなんて、僕には決められないよ。

 シスターに相談するから、その辺は待って。

 それにもし、僕がしていることをみんなもして良いことになったとしても、別に僕がリーダーになる必要はないよ。

 もし許されたら、僕はみんなに教えるし、リーダーじゃなくても同じだよ。

 それにダメな時は、僕は今までみたいに1人で別行動になるかもしれないし。

 だからリーダーは僕じゃない方がいいよ」


 結論は持ち越しになった。



 晩の食事が終わるとすぐに、僕とルーミエはシスターの部屋に行った。

 もちろんシスターは待っていて、僕とルーミエを部屋の中に入れると、僕たちをベッドに座らせて、自分は机のところの椅子に座った。


 「それで話があるって、何なの?」


 「シスター、あたし、またレベルが上がったら、出来ることが増えました」


 シスターの問いにルーミエが勢いこんで答えた。


 「えっ、ルーミエちゃん、またレベルが上がったの?」

 シスターは驚いた顔をしたかと思ったら、とても険しい顔をして僕に言った。

 「ナリートくん、ルーミエちゃんのレベルがまた上がったということは、またルーミエちゃんにスライム討伐をさせたの?」


 「誤解です。僕はそんなことさせてません」


 「それじゃあ、どうしてルーミエちゃんのレベルが上がったの?」


 「はい、それも今日、シスターに話しておこうと思ったことの一つなんです」


 シスターはまだ疑っている目で僕を見ていて、自分の能力を使おうかと考えているみたいだ。


 「シスターの能力は知っていますから、僕は嘘をつくようなことはしません。

  疑わないで、落ち着いて聞いてください」


 「そうね、ナリートくんは私の能力を知っているのだから、嘘をつく訳がないわね。

 それじゃあ、落ち着いて話を聞くわ」


 「あのですね。

 僕の罠師という職業は、自分が直接討伐しなくても、罠を使って討伐しても経験値が入ってくるという能力というか利点があります」


 「うん、それは前に少し聞いたような気がするし、そこが罠師という職業の特殊なところなのでしょ」


 「はい、たぶんそうなのだと思うのですけど、そこにもう一つ知らなかった特殊なことがあったんです。

 僕はスライムを討伐する罠を作ったのですけど、それを見たルーミエが私も作ると言い出して、結局自分だけで作ったのと、ルーミエと2人で作ったのと、2つのスライムの罠が出来たのですけど、それで一つ特殊なことがあることが分かりました。

 罠を僕と一緒に作ると、それを手伝った人にも、スライム討伐の経験値の一部が入ることが分かったんです。

 もちろん罠師本人である僕に入る経験値から比べるとずっと少ないのですけど、それでもレベル2からレベル3になるための経験値くらいだと、余裕ですぐに入ってしまって、たぶんですけどルーミエは今日も一つレベルが上がって、レベル4になると思います」


 「えっ、そうなの、嬉しい。

 なんとなく、こう溜まって、満ち足りたような感じになっているのは、レベルが上がったからなの」


 ルーミエは僕の言葉を聞いて、喜んでいる。


 「今度はどうなるかな」


 「ルーミエ、僕の経験から言うと、寝てからじゃないと、レベルupは反映されないから、明日になってからのことだぞ」


 「明日はちょうど、あたしも林に行く日だよね。

 そうしたらナリート、私のこと見てくれる。

 何が変わったかな、凄く楽しみ」


 「ルーミエ、レベルupして何かの数字が大きくなっても、それだけじゃ何も変わらないんだ。

 自分でも[健康]の数字が大きくなっても、ダメダメなのが分かっているだろ。

 それと同じで他のことも、数字が大きくなるだけじゃダメなんだ」


 僕とルーミエがレベルupについての話を始めてしまったのを、シスターはちょっと呆然とした感じで聞いていたのだが、我に返ったような調子で言った。


 「えーと、ちょっと待って。

 ルーミエちゃんは、レベル2だったのが、レベル3に上がったのよね。

 それで今日、もうレベル4に上がるというの?

 そんなに簡単にレベルがなんで上がるの?

 普通だったら、成人に達して、ここで私が言っているのは婚姻が公式に許される18歳という意味だけど、その時にやっとレベル5よ。

 そこにまだ達しない人も多いと聞くわ」


 あっ、やっぱり、普通そんなものなんだ。

 [体力]の説明文で、なんとなくそのくらいが普通なのかな、という気はしていたんだ。


 「えーと、レベル1からレベル2になるのには経験値が1必要で、その経験値1はスライム1匹を討伐すると得られる経験値です。

  それだから、ルーミエをレベル2にするために、前にスライムを1匹討伐させたし、今回の騒ぎでジャンともう1人はスライムを1匹討伐したから、レベル2になったと思います。

  ジャンは確認しちゃいましたけど、もう1人も同じように熱出して倒れたから、確実だと思います。

  レベル2からレベル3になるには、今度は1の経験値ではなくて、3の経験値が必要なんですけど、それはすぐだし、その次も9の経験値だから、ルーミエはもうレベル4になったと思います」


 「スライム3匹分の経験値どころか、9匹分の経験値もすぐなの?

  一体、ルーミエちゃんにはどれだけの経験値が入っているの?」


 「えーとルーミエの場合スライム1匹が罠に掛かると、0.25の経験値が入ります。

  1日に今の所大体、罠に10匹前後のスライムが掛かっているみたいですから、1日に2.5の経験値が入ります。

  だからレベル4まではすぐだったし、レベル5もそんなにしないで達成できると思います」

 

 「えーと、レベル4からレベル5になるのに必要な経験値はいくつなの?」


 「27です」


 「3倍づつ増えていくのね」


 「はい、今のところそうなっています」


 「ま、とにかく、ルーミエちゃんがレベルが上がったことと、そのために危険なことをした訳ではないことは分かったわ」


 シスターは呆れたように言った。


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