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この世界には築城士という職業は無かった  作者: 並矢 美樹


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罠師の特別な力だった

 「えっ、ルーミエも自分のことが見えるようになったの?」

 僕は全く考えていなかったことだったので、ちょっと驚いて聞き返した。


 「うん、だけど言ったとおり、ナリートとはちょっと違うみたい。

  ナリートは色々と見えることを教えてくれているけど、私は3つだけだもん」


 ルーミエは[全体レベル]と[体力]と[健康]の3項目しか見えないらしい。

 あれっ、僕もレベル3の時はそのくらいしか見えていなかったのかな、と一瞬考えたけど、そんなことはなかったと記憶を確認した。


 「ま、3つしか見えないことは置いといて、ルーミエが自分のことを見えるようになったのは良いことだな。

  これで僕が言ってたことが嘘じゃなくて、ルーミエが自分の体のことを大事にしてくれれば、とても良かったって思うよ」


 僕がそう言うと、ルーミエは何だか少し赤くなって言った。

 「他には何か見える?」


 僕はまた少しルーミエのことを見るのに集中してしまった。 [体力]や[健康]の項目のように、ルーミエの他の項目でも何らかの説明みたいなことも見えないのかと思ったのだ。

 でも、そんなにうまい事いく訳もなく、項目1つづつをしっかり確かめながら見たのだけど、新たに説明が見えるということはなかった。

 だけど、もう1つ、ルーミエにまだ話してない項目を見て、僕は考えこんでしまった。


 僕は少し考えてしまって黙り込んでいたことに、急に気づいて、「何黙り込んでいるの」とでもルーミエに言われるかと思って、ルーミエの顔を見たのだけど、ルーミエも何か考え込んでいるようで、僕のことを気にしていなかったので、ちょっとほっとした。


 「えーとね、他にはあと1つだけ見える」


 僕がルーミエにそう声を掛けると、ルーミエの方がちょっと体をビクッとさせて驚いて、逆にバツが悪そうな感じで言った。


 「あ、ごめんなさい、ちょっと違うこと考えてた。

  で、何が見えたの?」


 「うん、あと見えたのは[次のレベルに必要な残り経験値]ていう項目なんだけど、何故だかわからないけど、これの数字が 4 になっていた」


 「えーと、どういうことなのかな。 それでナリートがその数字を不思議に思っているような気がするのだけど、なんでそう思うのかも、何も分からない」


 ルーミエは僕がきっと考えている顔をしていたので、そんな風に尋ねてきたのだろう。


 「あのね、そもそもレベル2からレベル3に上がるには、僕の経験上は 3 の経験値が必要なんだ。

  僕はそのために、3匹のスライムを討伐して、それでレベル2からレベル3に上がったんだ」


 「あたし、ナリートと一緒にスライムを1匹倒したけど、それからスライムの討伐なんてしてないよ」


 「うん、まずはそれだから何故ルーミエがレベル3になったのかが不思議なんだ。

  それだから、もしかしたらルーミエの職業である聖女の特別な力というか、特殊なことがあるのかな、と思っているのだけど、今のところ良くわからない。

  そして、レベル3からレベル4になるには 9 の経験値が必要だから、もしルーミエがレベル2からレベル3に上がったばかりだとすると、[次のレベルに必要な残り経験値]の数字は 9 のはずなんだけど、それが 4 になっている。

  つまりレベル2になった時から後に、今までに 8 もの経験値がルーミエには入っていることになるんだ。

  考えても分からないのだけど、それでも何でかなと思っちゃって」


 「そんなの私に聞かれたって分からないよ。

  私だって、レベルが上がったのに驚いたんだもの、何でだかなんて分からない」


 「うん、そうだよね」


 僕はルーミエの言葉に相槌を打つしかない。


 「あのさ、ナリート、今、レベル2 からレベル3 になるのには経験値が 3 必要で、レベル3 からレベル4 になるには経験値が 9 必要って言ったけど、その後はどうなるの?」


 「えっ、次のレベルになるのに必要な経験値?

  レベル5になるのには 27 で、レベル6 には 81 だよ。

  そしてその次はたぶん 243 で、その次なんか 729 だと思う。

  今のところは、僕の経験上は3倍づつ増えていくんだ」


 「そうなの、だとしたらナリートは凄いね。

  レベル6 だから120以上の経験値を今までに得てきたんだね。

  どうやって、そんなに経験値を得たの?」


 「うん、それは僕の職業が罠師という、ルーミエの聖女みたいに有名じゃないけど、少し特殊な職業らしくて、槍でスライムを討伐したように自分でしなくても、罠で仕留めた獲物の経験値はちゃんと入ってくるんだ。

  それも罠で仕留めると1.5倍の経験値になるんだ。

  スライムの罠が完成して、毎日かなりの数のスライムが罠に掛かっているみたいなんだ、それで大量に経験値が入ったんだ」


 そこまでルーミエに説明していて、僕はふと気が付いた。

 「あれっ、今、ルーミエ、僕のことをレベル6 だと思った?」


 「うん、ナリート、レベル6だよね。

  あたし、さっき気が付いちゃったのだけど、ナリートが私のことを見ることが出来るみたいに、私もナリートのことを見ることが出来るみたい。

  でも私の場合はさっき言ったとおり、3つしか見えないけど」


 「ごめん、ルーミエ、ちょっと待って」


 僕はルーミエにそう言われて、慌てて自分のことを見てみた。

 昨晩は色々あって、というかリーダーに反撃して殴り倒してしまって、すごく興奮したり、その興奮から冷めて、怒られることを覚悟したり、反省したりと、頭の中で考えることが多くて、自分のことを見るのを忘れてしまっていたのだ。

 今朝になっても、怒られるのを覚悟して呼ばれるのを待っていたり、神父様にあまり怒られなくてホッとしたりで、その後すぐにシスターに言われてルーミエと林に来たりで、自分のことを見ていなかった。


 「本当だ。 僕、レベル6になっている」


 「えっ、ナリート、自分がレベル6になっているの見てなかったの?」


 「うん、昨日は色々あったから、自分のことを見る余裕がなくて見てなくて、一昨日見た時にはレベル5だったから、レベル5だと思っていたよ」


 「じゃ、あたしの方がナリート本人より先にレベル6なのに気がついたんだ」


 「うん、そうなる」


 確かに一昨日見た時に、[次のレベルに必要な残り経験値]は確か16だったから、昨日の夜に見ていれば上がっていても当然だった。


 「もう少しちゃんと自分を見ても良いかな?」


 「うん」


 僕は自分をしっかりと見てみた。

 [体力]と[健康]が 6 になって、[空間認識]と[魔力]も 5 になっていたが、この4つは今のところ毎回上がっていたので、驚きはない。

 それ以外では、[治癒魔法]がポイントを入れた訳ではないのに 4 に上がっていて、今まで練習を重ねても上がらなかった[槍術]も 3 に上がっていた。

 それから新たに[格闘]という項目が出来ていた。 これはきっとリーダーにやられっぱなしになるのではなくて、殴り返したから出来た項目だろうから、何となくちょっと微妙な気分だ。


 他の項目は変わっていないが、[残ポイント]は当然だけど 3 がそのまま残っていて、数も増えていない。

 [残ポイント]を割り振ってしまうと、強制的に寝てしまう気がするから、どこに割り振るかは後で寝る前に考えよう。


 そしてちょっと気になっていた[次のレベルに必要な残り経験値]は 226 になっていた。

 ということは、レベル7になるのに必要なポイントは、予想通りきっと 243 だったのだろう。

 それが 226 になっているということは、レベル6になるのに残していた数が 16 だったから、今回というか昨日は 33 も経験値が入ったことになる。


 うん、そのくらい入ってもおかしくないかもしれない。

 ルーミエの分のスライムの罠を作ってからは、毎日27とか28くらいは、多い時はもっと経験値が入っていたから、それに昨日は槍で討伐を何匹もしたから、そのくらいは当然のような気がする。


 「あ、僕の方の問題だった」


 僕はつい声に出して言ってしまった。

 一通り自分を見て、ルーミエの時に各項目を詳しく見てみようとしたので、同じように自分の項目も詳しく見ようとしたら、前に見た時よりも罠師の説明が詳しく見える部分があったのだ。

 そしたらそこには、こう書かれていた。


 「罠師が他の者と共同で罠を作ると、そこで得られた経験値のうち、罠によって得られる増加分の半分は、罠作りを一緒した者に入る。

  多人数の場合は、その半分を手伝った者の数で割った経験値となる」


 今回のルーミエの場合だと、スライム1匹当たり、罠での増加分0.5の半分、0.25が手伝った人数はルーミエだけで1人なので、そのままルーミエの経験値になったということだ。

 僕の経験値の増え方から考えると、スライムの罠1つで10匹くらいが1日に掛かっているから、ルーミエはスライムの罠を作ってから、毎日2.5くらいの経験値を得てきた事になる。

 魚の罠にも掛かっているから、きっとそれより多いかもしれない。

 うん、これならレベルが上がるな。


 「何がナリートの方の問題だったの?」


 僕が声を出してしまったので、ルーミエに尋ねられてしまった。


 「うん、ルーミエがレベルが上がったのは、僕の職業の罠師の特別なところのせいだったのが分かったんだ」


 僕は自分が理解した内容をルーミエに教えると、ルーミエは何だか知らないけど、とても納得して言った。


 「そういうことだったのね。

  私、自分でもなんでレベルが上がったのか分からなくて、何だかちょっと怖かったのだけど、そういうことなら安心。

  それならすぐに次のレベル4にはなるよね。

  そうしたら、もう少し強力なヒールが使えるようになるかなぁ。

  シスターまでいかなくても、あたし、もうちょっと強力なヒールが使えるようになりたい。

  あ、レベル3になったのだから、少しはもう前より強いヒールが使えるようになっているのかな」


 「もちろん前より強いヒールが使えるようになっていると思うよ。

  [魔力]と[治癒魔法]、どっちの項目も 2 に数が上がっていたから、もう強力になっていると思う。

  でもさ、ルーミエ、僕は自分もヒールをかけていて倒れてしまったから分かるけど、ヒールをかけるのに体力は使うんだよ。

  ルーミエの場合、その体力をどうにかしないと、絶対にシスターのようにはヒールを使えないと思うよ」


 「うん、そうだね。 今のままだとダメだ」


 ルーミエは急に元気を無くしてしまった。

 ルーミエは自分でも見ることが出来るようになったので、僕の指摘の正しさが良く理解出来るようになったからだろう。

 僕はせっかくルーミエが喜んでいたのだから、言わない方が良かったかな、と思った。


 「あ、そう言えば、ナリートはやっぱり凄いね。

  [体力]なんて、数字だけなら、もう普通の大人よりあるじゃん。

  まだ子どもだし、栄養状態の問題があるから実際は大人よりはないけど、それでもきっとみんなの中ではダントツだよ」


 「え、ルーミエって、僕の[体力]の詳しい説明部分まで見えるの?」

 僕は急にルーミエとずっと手を繋ぎっぱなしだったことに気がついた。


 「うん、ナリートが自分を見ることに夢中で、私は暇だったから、私もナリートのことがどのくらい見えるのかなと思って、見ていた」


 何だか僕はちょっと恥ずかしくなって、そっと手を離した。

 うん、見られるのって、何だか恥ずかしいな。 僕もかってに他人のことを見たりはしないようにしよう、と思った。


 その時、僕はちょっと違和感を感じた。


 あれっ、僕はシスターを見ようとしたことがあるけど、見ることが出来なかった。

 僕は、前にシスターがシスター固有の能力である『真偽の耳』は少し立場がある人には効かないと聞いて、きっとレベルが上の人には効かないのだと思った。

 きっとそれと同じで、僕がルーミエを見ることが出来るのにシスターを見れないのは、僕よりもシスターはレベルが上だから見れないのだと考えていた。


 でも、ルーミエは僕より確実にレベルが下なのに、僕のことが3項目だけだけど、しっかりと見えるんだよなぁ。

 これは一体どういうことなのだろうか。


 「でも、私ほどじゃないけど、ナリートも[健康]はダメなんだね。

  数字はちゃんと大きくなっているけど、私よりマシだけど、栄養も足りてないし、それに寄生虫ていうのにも犯されている」


 そうなんだよな、その問題はまだどうしたら良いのか、全然見当もついていない。


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