表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界には築城士という職業は無かった  作者: 並矢 美樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/177

スライムの罠完成か

 ルーミエがヒールを使えるようになったことをシスターに報告してから、僕はなかなか時間が経たないのをジリジリとした気分で過ごした。

 早く夜の寝床の中で、自分のことを見たくて仕方なかったからだ。


 僕が作ったスライムの罠に、初めてスライムが落ちて行った。

 何匹か落ちて行ったのを確かに見たから、そのうちの半分とはいかなくても、落ちたスライムの1/3くらいは、核に穴のそこに植えてある竹槍が刺さったのではないかと、僕は期待で一杯だったのだ。


 スライムの経験値は1だと分かっているから、1匹刺されば確実に[次のレベルに必要な残り経験値]が1は減っているはずだからだ。

 罠にかかって討伐されると、かかった獲物の経験値の半分が余計に入るから、2匹かかれば1.5×2で、[次のレベルに必要な残り経験値]は3減っているはずだ。


 この減っている数がちゃんと解るには、魚を獲ったことで減っている分を考えなければならないのだけど、僕はやっとここ数日の[次のレベルに必要な残り経験値]の減り方を考慮することによって、魚1匹の経験値は0.2で、罠で獲ると0.3の経験値になるのだと確信した。

 魚は別にモンスターではないから、普通に獲ったのでは経験値にならないんじゃないかと思うのだけど、罠師は罠で獲れば確実に経験値になることは、解説文を読んで分かっている。

 そして、昨日までに21匹の魚を獲っていて、[次のレベルに必要な残り経験値]は6減って21になっている。

 今日は2匹獲ったから、合わせて23匹ということになる。

 0.3×23=6.9で、ほんの少し足りなくて、魚の獲れた分だけでは今日は[次のレベルに必要な残り経験値]は昨晩見た時と変化はないはずなのだ。

 でも、穴に落ちたスライムが、たとえ1匹だけ核に刺さったとしても1.5が加算されて、2は最低でも減っているはずなのだ。


 待ちに待った就寝時間が来て、僕は大急ぎで自分の寝床に潜り込んだ。

 まさか1匹も核に刺さらなかったなんてことはないよな、あれだけ何匹も落ちたのだから、絶対に数匹は刺さっているはず。

 僕はドキドキしながら、寝床に入って頭の方まで上にかけている布を引き上げて、ちょっとだけ自分だけの場所を作った気になって、すぐに自分を見てみた。

 見るのはもちろん[次のレベルに必要な残り経験値]だ。


 見た瞬間、僕は驚きであげそうになった声を、懸命に押し殺した。

 [次のレベルに必要な残り経験値]の数字が21から19になっていたら良いな、と思っていたのに、一気に15になっていたのだ。

 なんと6も経験値が入った事になる。


 入った経験値が6って、スライムが1匹罠で討伐出来たとしたら入る経験値は1.5だから、4匹も討伐出来たっていうこと?

 見ていた時に、穴に落ちたスライムは5匹か6匹だった気がする。

 もしかしたら、見えてないけど落ちたスライムがいたとしても、精々7匹か8匹だろう。

 その半数かそれ以上が、核に槍が刺さったという事になる。

 すごい奇跡的な確率だ、と僕は興奮した。


 興奮がとりあえず収まるまでに、ちょっと時間がかかったのだけど、僕は少し冷静になって、違う可能性に気がついた。

 もしかしたら、落ちて核に竹の槍が刺さったスライムに、レベル2のスライムが1匹いたのかもしれない。

 レベル2のスライムがいたとしたら、そのスライムが1匹罠で討伐されるだけで3の経験値が入る。

 それならあと2匹、普通のスライムが討伐出来ていれば、6の経験値になる。

 この方が可能性が高いのではないかと僕は思った。


 レベル2のスライムがいたとしたら、最初に横から飛びついて、先に登っていたのに邪魔されて落ちた、あの1匹だな、と僕は思って、その時の光景を思い出したら、なんとなくまた笑いが込み上げてきてしまって、声を抑えるのに苦労してしまった。


 でも僕は俄然スライムの罠作りにやる気が出た。

 経験値が6って、普通のスライムと6回戦って討伐しなければならない経験値を、1回餌を仕掛けただけで、危険を冒さずというか、ほとんど怖い思いをしないで得ることが出来たのだ。

 これなら、あと15の経験値なんてすぐに達成出来て、僕はまたレベルを上げることが出来るだろう。

 その次のたぶんだけど、81必要な経験値も難しい数字ではなくなるし、不可能に思えたまたその次の243の数字だって、ちょっと時間はかかるかもしれないけど、到達できる数字に思えてきた。


 そうしたら僕は危険なく、そんなに苦労なく、レベル7まではスライムの罠だけで、簡単に到達できるのではないだろうか。

 もしかしたら、その次の8まで行けるかもしれない。

 えーと243匹の次は729匹だから、今までの分と合わせると優に1000匹を越えるけど、それだけの数のスライムは、うん、十分に居るな。

 それにスライムも増えていくから、スライムが居なくなってしまうことはないと思う。

 スライムが増えて困って、特別に討伐依頼が出ることがあると聞いたから、別に減らす分には問題はないな、と僕は考えた。


 興奮はとりあえず冷めたつもりだったのだけど、本当には冷めてなかったらしくて、僕はそれから眠れなくて、ずっとスライムの罠の改良を考えていた。

 ルーミエのおかげなのかどうか分からないけど、餌を穴のそこに置いておくという囚われから自由になったからだろうか、僕はスライムの新しい罠の形を色々思いついた。

 その思いついた中の、これが良いと思った一つを明日は作ろうと決めて、具体的にはどうすればと明日の工程を考えようとしたら、僕は気づかずに眠っていた。



 翌朝、遅くまであれこれ新しいスライムの罠を考えていたからだろうか、朝いつものようには起きられず、隣のジャンに起こされてしまった。

 「ほらナリート起きて、もう朝だよ。

  珍しいね、ナリートが朝、起きれないなんて」


 「うん、何だか昨日はなかなか眠れなかったんだ」


 僕は素直に自分が昨晩なかなか眠れなかったことをジャンに言った。

 やっぱりモゾモゾと、いつもと違う動きを寝床でしていたと思うので、隣のジャンはそれに気がついていたかもしれないから、素直に認めた方が良いと思ったのだ。


 僕はその日は、もういつものことなのだけど、いつも以上に大急ぎで自分に課せられている柴刈りをした。

 それからはもう懸命にスライムの罠の改造だ。


 穴を今までより少し広げて、その形も丸から少し長丸にした。

 穴を掘るのは、前の経験から、地面の中にある石の形を探知して、地面の中の様子を頭の中に描いてから掘ったので、前よりずっと簡単に掘ることが出来た。

 新しく掘ったところにも同じように竹槍を植えた。



 そして今回の改造の1番の目玉は、餌をどこに取り付けることにするかだ。

 僕は前の晩、スライムの罠の改造を考えていた時に、ルーミエと魚釣りという話をしたことを思い出して、釣竿の先に餌を付ければとちょっと思いついたのだ。

 釣竿の先の餌を目指してスライムが何匹も竿に取り付いて、そのために釣竿がシナって、ブルブル震えるので、それでスライムが落ちてしまう、そういう映像が頭の中に浮かんだのだ。

 その発想をもう少し考えて進めて、僕は竹の細くなった先に、そのまま餌を取り付けるのではなくて、その先にまた細い棒を直角に取り付けてその先に餌を取り付けることにした。

 竿自体もある程度細い竹で、最初から曲がっているのを選んだ。

 穴の縁に根元を据え付けて、曲がっている先は穴の上にする為と、スライムが何匹か取り付いて重みがかかると、竹の先の方は曲がって下向きになってしまうようにするためだ。


 一番力を入れて作ったのは、竿の根元を据え付ける穴の縁の部分だ。

 僕は中洲で竿に餌を取り付けて、それを罠に持って行って取り付けようと考えたから、危険を回避するためにも、素早く取り付けられて、なおかつ竿の先の方が正確にしなったりした時に、穴にスライムを落としてくれる位置にならなければいけないからだ。

 僕は餌の付いていない竿で何度も試して、据え付ける部分を穴を掘ったり、大きめの石を積んだりして作った。


 そんなこんなで時間が大分過ぎてしまってから、僕は餌の必要もあって急いで魚の罠を見て、魚を焼いて食べないとと思った。

 その時になって、魚の罠が自分のだけでなくて、ルーミエの作った罠もあることを思い出した。

 きっと孤児院に戻ったら、ルーミエが自分の作った罠に魚がかかっていたかどうかを聞いてくるだろうな、と思って両方の罠を確かめると、僕の罠には1匹だったけど、ルーミエの罠には2匹の魚がかかっていた。


 ルーミエが次に川に来るのは明後日だから、ルーミエの罠にかかっている魚をどうしようかと考えたのだけど、もう時間が迫っているので、何かしている余裕がないので、そのまま放置しておいた。

 僕は自分の罠にかかった魚だけを大急ぎで捌いて焼いて食べて、魚の罠に土を掘った時にいた虫の幼虫かなんかを入れて川の中に戻し、スライムの罠の竿を仕掛けると、その結果の様子を見ている時間的余裕はなくて、そのまま駆け足で孤児院に戻らなくてはならなかった。


 僕が孤児院に戻って、水場に急ぐと、もう小さい子の第一陣は連れてこられていて、ルーミエはその子たちが農作業で汚れた手足を洗ったりを手伝っていた。


 「ナリート、今日はちょっと遅かったね」


 文句を言われるのかと思ったのだけど、ルーミエの声には僕を責める調子は含まれていなかった。


 「うん、色々とすることが多くて、ごめん、ちょっと遅れた」


 ルーミエはちょっと僕に近づくと小さな声で言った。

 「私の罠に魚、入ってた?」


 僕も小さな声で答える。

 「うん、2匹入ってたよ」


 ルーミエは嬉しそうな顔をチラッと見せて、小さい子の手伝いに戻って行った。

 僕も水を汲んでやったりの世話に専念する。


 小さい子の第2陣が来るまでの、ちょっとだけ空いた時間に、またルーミエが近寄ってきたので、僕は思い出して、周りに人はいないけど小さい声で言った。

 「ルーミエの罠にかかった魚、どうしようか?

  今日は、見ただけでそのままにしておいたのだけど、あまり何日もは罠の中では保たないかもしれない」


 「今までナリートが獲ったのを、私がもらっていたのだから、私の罠にかかったのも食べちゃっていいよ。

  それよりも、ナリートは小さい子でヒールの練習をしていたんだよね。

  どういう風にやっていたの?」


 ルーミエは覚えたヒールを使いたくてしょうがないのだな、と僕は思った。

 ルーミエに自由にさせたら、どんどんヒールを使いまくるのではないかと思ってしまった。

 でもシスターに注意されていたから、ルーミエは僕に一応尋ねてきたのだろう。

 僕もシスターに、ルーミエがところ構わずにヒールを使わないように監視するように言われているから、ルーミエに釘を刺す。


 「ルーミエ、ヒールが使えるからって、簡単に使ってはダメだ。 シスターに注意されただろ」


 「だから、こうしてナリートに相談しているじゃん」


 僕はちょっと考えてしまった。

 僕はなんらかの項目が見えたり、そのレベルが上がって数字が変わっても、ただそれだけでは駄目で、ちゃんと練習したりしないとその能力が上がらないことを知っている。

 僕自身は、それはヒールという治癒能力もそうなのではないかと思って、知られないように気をつけながら、小さい子に何度もヒールをかけて練習している。

 ルーミエは[職業]聖女だから、きっと僕よりもずっと強力なヒールが使えるようになると思う。

 だけど、やっぱりいくらその能力があっても、きっと僕と同じように、練習をしなければ使えるようにはならないのではないかと思う。

 きっと[職業]の違いから、僕なんかよりずっと早い速度で強力なヒールが使えるようになるのだろうと思うけど。

 でも、練習が必要なことは、絶対に変わらないのではないかと思った。


 僕はきっと黙り込んで、難しい顔をして考え込んでしまっていたのだろう、気がつくと不安そうな顔をしてルーミエが僕の顔を覗き込んでいた。


 「ルーミエ、ルーミエがヒールを使えることは秘密にしなければいけないんだ。

  だから、小さい子たちにも分かるようなヒールをかけたらダメだ」


 僕がそこまで言うと、ルーミエはとてもがっかりした悲しそうな顔をした。

 僕は慌てて、言葉を続けた。


 「でも、練習しないとシスターみたいなヒールは使えないと思う。

  どんなことでも練習しないで上手く使えるはずはないからね。

  僕はルーミエはすぐにシスターみたいな強力なヒールが使えるようになると思っている。

  もしかしたら、シスターより凄いヒールが使えるようになるかもしれない。

  そのためには練習が必要だ。

  だから、こっそりと、分からないように練習するんだ。

  僕もやっているのだけど、小さい子の自分でも気にしていないような、小さな擦り傷、治っていても、いつ治ったか分からないような、小さな傷を洗ってやったりしてて見つけたら、何も言わずにヒールをかけてやるんだ。

  そうして練習すれば良い。

  もし、小さい子に変に思われたら、『あ、小さい傷がある、痛いの痛いの飛んでいけ』とか言って、誤魔化してしまえば、きっと分からない。

  でも一番は変に思われないように、気付かれないくらいの傷だけにして、ヒールの練習を積むんだ」


 「うん、分かったよ。

  小さい子にヒールを私がかけたことを気付かせないように、小さな傷ならヒールをかけても良いということだよね。

  上手くやるから心配しないで」


 ルーミエは、僕がルーミエがヒールを使うことを完全には禁止しないどころか、気づかれないように気をつけてだけど、どちらかというと使うことを勧めるようなことを言ったので、僕の言葉をとても真剣に聞いて、ちゃんと上手くやると言った。

 僕はルーミエが、「気付かれないように気をつける」と約束してはくれたのだけど、ルーミエがヒールを使いまくって、すぐに気付かれるのではないかと、とても心配になった。

 ルーミエはなんていうか、見るからに気合い一杯という感じだったからだ。

 だけど僕の心配は、全くの杞憂だった。

 僕は自分ではあまり感じなかったのだけど、魔法を使うにも体力がいるらしい。

 ルーミエはほんの2-3回、小さな傷、小さな子が気にしていなくて忘れてしまっているような傷にヒールをかけたら、もう疲れてしまって、それ以上ヒールを使うことが出来なくなってしまったのだ。

 ルーミエはまだ体力がなくて、とても周りに気付かれるほどのヒールは使えないようだ。


 もっとルーミエの体力と健康をしっかりしないと駄目だ。

 僕はルーミエのレベルを2にしたことで少し安心し過ぎていたようだ。



 夜、寝床の中で、僕は寝る前にいつものように自分を見て、また驚いて声をあげそうだった。

 [次のレベルに必要な残り経験値]の数がなんと一気に5にまで減っていたのだ。

 つまり今日だけで、一気に10減ったのだ。

 その内の1は魚が1匹、罠にかかったからだろう、それは今までの経験からわかる。

 あとの9はスライムの罠にかかったスライムによるのだろう。

 9って、6匹も討伐出来たということだよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ