表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

優しい上級生たち

 始めにプティを出迎えたのは広大な庭園。

 赤、白、その他様々な色とりどりの花。

 中央には噴水があり、その水はんでおりキラキラと光を反射している。


 そのあまりの美しさにはしゃぎ回るプティ。

 花へ噴水へと次々に駆け寄っては目を輝かせる。


「わあ……キレイ」


 思わず感嘆の声もれる。

 と、その時、敷地内へと鐘が鳴り響いた。


「ウェルカムトゥスクール……夜虹やにじ魔法学校へようこそ! 生徒諸君には今後、自由に魔法を探究してほしい。基本的に学費は取らないので安心してはげんでくれたまえ。我が目的は富ではない。共に魔法を学び、いつの日か夢を叶えることである。よって、規則もただ一つ。皆、仲良くすること。それだけだ。さあ、仲間たちよ! 共に魔法の道を突き進もうではないか! 我ら夜虹魔術師団ナイトレインボーに栄光あれ!」


 必要最低限……とさえ言えない手短な挨拶あいさつ

 こうしてあっという間に入学式を終え、皆が順に校舎内へと入っていった。


 初日ということもあり、まず最初にやるべきことがある。

 お互いの面識を得る者、カリキュラムを組む者。

 それぞれに今後の目標や予定を立て、時間は過ぎてゆく。


 やがて、お昼になると皆それぞれにランチタイムに入った。

 昼食を持参した者もいれば、学校の外へ向かう者もいる。

 そんな中、プティはどうしていいかわからず、ただ一人ポツンとたたずんでいた。

 と、そこへ……。


「よお、おじょうちゃん! ごはん食べないのかい?」


 近くのテーブルから声がかかった。

 振り向いたプティの目に映ったのは、気さくに笑う骸骨がいこつ

 戸惑とまどうプティへと手招きしている。


「オレはスケルトンのボブ。よろしく!」

「わ、私はプティ……」

「プティちゃんか。おなかいてないのかい?」

「それが……持ってきてなくて……」


 うつむくプティ。

 そんな彼女へと、ボブはみずからの弁当からトカゲの丸焼きをつかみ取り、差し出した。


「食べるかい?」

「ひやぁ!」


 悲鳴を上げて飛び退くプティ。

 首をかしげ、頭をくボブ。

 残念なことに、彼には微塵みじんの悪気もない。

 そこへ丁度通りかかった若い魔女が、ボブの頭をたたいた。


イテッ! 何するんだよアキ!」

「アンタ何度言ったらわかるのよ! 女子にトカゲなんか食べさせちゃダメって!」

「何でだよ? 上手いんだぞ? それに、女子でも食べる子いるし」

「気味悪く思う子だっているのよ! 覚えなさい!」

「へいへい、気を付けます」


 しょんぼりするボブ。

 その様子を見て戸惑とまどうプティ……のお腹が鳴った。

 うつむくプティへとアキが歩み寄る。


「さ、行くわよ」

「えっと……どこに?」

「外に果物がってるわ。こっちよ」


 そう言って歩き出すアキ。

 果物と聞き、目を輝かせながらついていくプティ。

 しばらくして、二人は敷地内にある果樹園へと着いた。


 プティは頭上にっている葡萄ブドウを見上げ、ジャンプしだす。

 が、届くわけもない。

 見かねたアキが魔法を使い、一房ひとふさ取るとプティの目の前に浮かせた。


「ほら」

「わあ、ありがとう!」


 プティは喜んで手に取ると、パクパクと食べだした。

 その様子を見て、アキが苦笑する。


「皮ごと、ふさごと食べるのね、あなた」


 言いながらも、また苦笑するアキ。

 首をかしげるプティの前で、彼女も葡萄ブドウ一房ひとふさ取る。

 すると、一瞬いっしゅんにして全ての粒をふさから取り外し、皮も全てくと粒を弾けさせた。

 弾けた粒は宙に浮かび、形状を保っている。

 そこへアキが手を差し伸べるとコップが現れ、粒はそこに入ってゆく。

 それを優雅ゆうがに飲む姿を見て、プティがあこがれの眼差まなざしを向ける。


「すごーい! 同じ新入生とは思えない!」

「まあ、アタシはこの学校の設立にたずさわった一人だから。セブンスとは前から面識があるし……」

「セブンス?」

「校長のことよ。彼は部長と呼んでほしいみたいだけどね。ほら、さっきの挨拶あいさつ聞いたでしょ? 学校の外で勧誘ショーもしたらしいから、見たんじゃないかしら?」

「あの人!」

「そう、その人。私はセブンスから上級生として生徒を導くよう頼まれてるわ。ボブもその一人よ」

「そっか……。じゃあ、アキお姉ちゃんって呼んでもいい?」


 目を輝かせ、問うプティ。

 対するアキは顔を赤くし、視線をらす。


「す、好きにすれば?」

「わあ……! よろしくね、アキお姉ちゃん!」


 満面の笑みを浮かべるプティ。

 その横で、アキは顔をそむほおを真っ赤に染めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ