表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失敗は出逢いのもと  作者: みたらし風花
第一章
16/25

《14》虹色に輝く魔法石

オズワルド様とエリオット様の突撃訪問があったその日の夜、私はふかふかベッドの上で、今日拾ってきた加工されておらず普通の石の形とはそう変わらない魔法石を眺めていた。


私はこの使い道をどうするか決めていた。

ひとつは小遣い稼ぎに売る用。

もうひとつは…力試し。

あの日私はびびって限界まで力を出せなかった。だから、今日は限界まで力を出してみようと思ったのだ。



魔法石の中でも最高位と言われる虹色……



無理をすれば倒れるとのことだったので、なら寝る前にやれば結果オーライじゃね?という安易な発想からだった。

セシルさんは虹色の魔法石を作り出すことが出来るらしい。それは作ったことがあるから言えること。なら私は……?初めて魔法石に魔力を込めたあの日、あのあと体調が崩れるかと思ったのだが平気だった。もしかして虹色も作れるのでは…?興味本位でということもあるが、私は自分の力がどこまであるのか知りたかったのだ。もちろん、作り出せたらもう自分から作ることはしない。そして作り出せたら、その魔法石はクローゼットの奥にでも封印しようと思う。



私の手元には二つの魔法石。ひとつはビー玉サイズより少し大きめの石と、その半分しかない小さな石。私は小さい方から魔力を込めていく。前回は握ってて魔法石の様子を見られなかったから、今回は握らず手のひらに乗せたまま魔力を入れてみることにした。こうしないとどこまで魔力入れちゃうかわからないからね。



前回の感覚を思い出す。魔力が空っぽの状態の白い魔法石が淡く光り、だんだんと色付いていく。次第にそれは赤となり、橙、黄…

"緑の下"となったところで魔力を止める。



「…あ、小さいからもしかしてもう少し入れても問題なかったんじゃ…?」



そう。魔法石は込められた魔力によって価値が変わるのだが、石の大きさも影響する。魔法石はいわば器なので、大きければ大きいほど魔力が入る。今回は標準であるビー玉サイズより小さいものだったので、その分魔力が入らない。ので、この"緑の下"の魔法石は、標準サイズの"緑の下"以下なのである。同等のものを作るのなら、青の魔法石くらいは作っても良かったのかもしれない。と、気づいたころにはもう魔力は入れられなくなっていたので諦めるしかなかった。



そして私が虹色の魔法石を作るのに大きい石のほうを選んだのには、この石の大きさに理由があった。私は前回標準サイズで魔力をはかったのだ。ならば今回も出来れば同じサイズで試したかった、再チャレンジをしたかった。少し標準サイズより大きいがそう変わらないだろう。



もしここで私が倒れてもそのまま眠りにつくだけなので問題はない(はず)ただ明日いつも通りに起きられるかどうかだけど。



気を取り直して次はもうひとつの魔法石を手に持った。

さっきと同じ要領で魔力を入れていく。みるみる色が変わるとあっという間に前回の"紫の上"が出来上がった。ここからが未知の領域。思ったよりすぐには色は変わらないらしく、面倒なのでぎゅっと強めに魔力を入れてみた。数秒後魔法石に変化が現れた。先ほどまで紫色をしていた魔法石が七色に光り出した。そして充電満タンで充電が止まったかのように、魔力が魔法石に入らなくなったのを感じた。これがこの魔法石の限界なのだろう。



淡く光っていた魔法石の光が消え、普通の石へと戻る。普通の石といっても、色が虹色なのだから普通ではないが。虹色の石はどのような模様をしているのだろうかと想像したことがあった。私は想像力が乏しいので、シマシマの七色を思い浮かべた。普通に想像するとダサイ。

虹色の魔法石はそんなシマシマではなく、七色がそれぞれ混じり合って変な色を作り出すことなく、絶妙な混じり方をした綺麗な七色のまーぶる模様であった。それは魔力に反応した淡い光がなくとも、ただそこにあるだけで輝いていた。



「………綺麗」



誰もが言うセリフだと思うが、本当に綺麗だったのだ。しかも、それを月明かりに照らせば、どの宝石にも劣らない輝きを放ったのだ。これが加工された魔法石であれば、どんなに美しかったか。



(そういえば、体調に変化がない)



ぶっ倒れることを想定していたのだが、そんな予想も大きく外れ、私はベッドに仰向けになる。

これで確定した。

私は国に重宝されるだけの魔力を持っているということ。それは今、虹色の魔法石を作り出して起きながら平然としているこの結果が理由である。



そしてなんの地位も持たない、平民の私にとってこれが過ぎた力であること。階級社会のこの国で、王命など下された日には逃げられないし逆らえない。



(もしそんな日が来たらどうしよう)



夜だから悪い方向はと考えてしまうのだろうか。



(死ぬ覚悟くらい、持ったほうがいいのかな)



私の心は強くない。たとえ強い魔力を持っていたとしても。きっと起こりえる理不尽に耐えられない。私は現代っ子だもの。ゆとり世代と悟り世代の狭間に生まれた、精神的ストレスに弱い若者だよ。きっとすぐに死にたくなってしまうはずだ。



昔の日本ではないが、自分の誇りを守るためならば、潔く死ぬこともひとつの手段であろう。理不尽……望まぬ結婚、監禁、奴隷…

魔力に頼り、魔力の強さが国を支えているユーピテルター王国。あり得ない話ではない。



(はー…めんどくさいなぁ)



力があるのに最大限発揮できない窮屈な現実。最大限発揮といっても、それで数々の敵を倒したいとかそういうものではない。自分のやりたいことを自由にやれる環境であったならな、と思ったのだ。



そうこうもんもんと考えている間に、私の意識は眠りへと落ちていった。




※ ※ ※




そこからさらに数日、特になにもなく、ただただ平穏な日常が訪れた。私はというと、あらかた生活で必要な魔法陣の基礎を覚えることができたので、ついに複合魔術を覚えることとなった。基礎の魔法陣の応用編である。いくつもの単体の魔法陣を組み合わせるのである。



これはとても必要なことで、たとえばコンロに基礎となる「火をつける」だけを備えたとしよう。だが、それはあくまで「火をつける」だけであって「持続」はしない。もちろんずっと魔法石に触れていれば火をつけ続けることはできるのだが。まさか料理中片手を魔法石に触れてることなどできないので、一回の発動で火を「持続」させておく必要があるのだ。



魔法陣の欠点。

それは、魔力を持続的に行使しなければ術が消えてしまうという点。発動した魔術は大きさや中身によって差が出るが、一定の時間でしか出現しないのだった。

「火をつける」だけでは料理に適応出来ない理由がこれである。



あれ、「持続」も術なら、これも一定では?チッチッチッ。この「持続」、あくまで物事の"状態"を表す術なので、これ単体では稼働しないのだ。何かと合わせて初めて意味を成す術なので、こういった"状態"系の術は、解除させない限りその状態が続くのだ。



さて、先ほど解除されない限りとあったが、もちろん陣の発動を補佐する魔法石や、魔法石を使わず自身の魔力で発動させる術者の魔力が尽きた場合は強制的に解除される。その他強制的解除の方法があるが、結構魔力を消費するので陣の作成者は気を付けなければならない。



たとえば、コンロに必要な火の魔法陣には「つける(着火)」「持続」「消す」が必要なのだが、もし「消す」の魔法陣を忘れたら……強制解消しない限りずっと火が出続けるという事態になるのだ。なので、作成者は気を付けなければならない、本当に。後始末もきちんと考えておくことが基本。



てことで!複合魔術に入ったわけだけど!これがまた複雑~ただし、コツというか、法則を覚えてしまえば自分で新たな魔法陣をポンポン作れるようになるらしい。なんだろう、複合魔術ってこうコンパスで円書いて、直線引いて、接点からまた円を書いてクルクルクルクル~って増やしていく感じ。面白い。



ああ、ただ複合魔術に関しては、ある程度の数の組合せだったらお手本があるから参考にすればいいんだけど、自分のオリジナルとかになってくると発動出来るかがわからないらしい。だから、ひとつの陣にあれもこれも~と追加するのはいいけど、限度を超えると未知の領域で発動するか分からないらしい。そしてセシルさんの研究分野でもある。ひとつ組合せを増やして成功すれば、またそこに新たな陣を組み込む。そしてそれを発動させられるようにする。そんなに必要かなぁ?とは思うんだけど、この研究分野は完全に趣味なんだと。



「これだけ機能が追加出きるなら、いろんな家庭製品が開発されてもっと発展しそうなんだけど……やっぱ魔力かぁ」



セシルさんに一度質問したことがあった。魔法や魔術があるのにも関わらず、何故発展していないのか。



「魔法は魔力が強くないと使えないから限定的で普段の生活には不向きだ。だが、魔法陣は違う。魔法陣はもともと武器として使われていたんだ」



それが、今まで発展に関わって来なかった理由なのだと。



魔法陣は魔法を補佐するためのいわば道具。



自分の不得意な属性の魔法を、魔法陣を補助として魔術を使うもの。魔力の弱い人は魔法石の魔力で魔術を使うひともいた。

そしてそれは、武器として、戦うための道具として使われた。主に、戦争の。



「戦争の一番の武器は魔力だ。強い魔力を持った人がいる軍は負けなしとも言われる最強の武器。だが強い魔力をもつ者が少ない国は?それはもう魔法陣で補うしかなかった」



魔法陣はものによって魔力を消費するが、組合せ次第でどうにでもなる。組合せ次第でどうにでもなるのだから、どの国も魔法陣の研究に力をいれた。より強い攻撃ができる陣を、より堅く防御できる陣を。それぞれが研究し、開発されていった。



「皮肉だよな。今のこの生活を支えてるのは戦争の成果のひとつでもあるんだ」



平穏なこの生活を支えているのが、実は戦争の成果である魔法陣。戦争によって数々の魔法陣が開発され、研究が進んだからこそだった。



これは日本でも聞いたことがある話だ。今、馴染みのある物が、企業が、実は戦時中に活躍したものだったということ。もともとは戦争の道具として開発された物、もともとは武器を作るところだった企業。探せば出てくる。戦争があったからこそ技術が発展した、そしてそれが今を支えている。よくある話である。



「だからこそ俺は、魔法陣で人の生活を豊かにするための支えをしたいと思った。あくまで自分の趣味の延長として、だけどな」



もともと生活に組み込まれていなかった魔法陣。しかし、隣国と平和条約を結ぶようになったこの10年で、かつて戦争の中心でもあった魔法陣が、今度は生活の中心になっていた。彼は前職騎士団だった。最近まで戦争をしていたことを考えたら、戦争を前に、なにか思ったことがあったのだろう。



(わたしも、何か出きることがあるのだろうか)



セシルさんはどういう思いで、魔法陣に触れるのだろう。

ただの趣味で、仕事は延長にすぎない、そして住民の生活を支えてるというのはあくまで結果なのだと。そうかつて話してくれたセシルさんは、どういう思いで魔法陣に触れるのだろう──




いろんな単語が出て来てごちゃごちゃするので一旦整理。


【魔力】

人が持っている力。個人差あり。

【魔法】

魔力を具現化させたもの。火、水、風etc.

【魔法陣】

魔法を補佐するためのもの。

【魔術】

魔法陣を使った魔法のこと。

【術者】

魔術を発動させた人のこと。

【魔法石】

魔力をこめた石。主に魔力が足りない人が、魔力石を補助として使うことが多い。現在では家庭製品に使用される。


変換ミスで、ん?というものがあるかもしれません。どれも単語が似ているので見落としがあるかも…あれば修正します。すみません。


次の更新はもしかしたら31日になってしまうかもしれません。気長に待っていただければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ