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福徳小学校の七不思議  作者: スネオメガネ
怪3 小さきモノ
12/35

兆し

 今日も、職員室に一人残り仕事をする。


 なるべく遅く帰るように心掛けている結果だ。


 沢田先生から小人の話を聞いてから、一ヶ月ほど経つが、特にそれらしいモノに遭遇した事はなかった。


 物音はなく、外で降っている雨音だけが、職員室を包んでいた。


 時計を見ると22時近くになっていた。いつもなら、まだ数人は職員室に残っている時間だが、金曜という事もあり、みんな早く帰宅していた。


 …今日は、ここまでだな。


 私は、机の上を整理し始める。ふと、隣の席を見ると、黒田先生の机の上には、閉じられたノートパソコンのみが置かれており、非常に整理されていた。

 その隣の沢田先生の机は、ノートパソコンの右隣に書類の山が二つ積まれおり、左隣には一つの山が積まれていた。


 私は自分の机を見て、ノートパソコンの隣に積まれた書類を見て、思わず苦笑いが溢れる。


 沢田先生程ではないにしろ、一度整理しないと、そう思い、帰るのを先延ばしにすることにした。


 すでにデータ化された書類と不要な書類は、シュレッダー。メモ書き等がある書類はスキャナーにかけた後、シュレッダー。


 それぞれ、層別して書類を分けていく。


 スキャナーに掛ける量が思った以上に多かったので、スキャナーに掛けるのは月曜日にすることにして、廃棄する分だけシュレッダーに掛けたら帰ろう。


 そう考え、書類の束を持ってシュレッダーに向かう。


 カタン…。


 物音がした。


 何の音だ?


 私は、周りを見回すが、音の発生源が見つからない。


 小人か!?


 とりあえず、音を立てないよう動きを止める。

 呼吸は、できるだけ音が立たないようゆっくりと。

 心音は、どうしようもないので放置。


 自分の心臓の動きで、まるで床が揺れているような気持ちになってくる。


 顔は、動かさずに、目だけを動かして辺りを見る。

 その瞬間、視界の端を何かが動いた気がした。慌てて、それを追って顔を動かす。


 何もいない。


 とにかく、何かが動いたと思われる場所付近を隈なく探す。…やはり何も見つからない。


 そうして、探し始めて、どれくらい時間が経ったのか?


 時計を見たら、一時間程経っていた。


 きっと、ネズミが走ったのだろう。


 結局、何も異変を見つけられないまま、シュレッダーを掛けて、帰宅することにした。


________________________


 月曜になり学校に行くと、早めに登校したはずが、すでに教頭がいた。


 教頭に挨拶をして、途中やりだった書類の整理を始める。


 ふと、教頭なら何か知っているのかも?という好奇心が湧く。


 だが、どう切り出していいかわからない。


 どうしたものかと考えていると、後ろから突然声を掛けられた。


「先生!おはよ〜」


 子供の声に驚いて後ろを見ると、篠宮少年がいた。


「今日から週番なんだ」


 週番。

 6年生になると、委員会と呼ばれるものに入る事になる。放送委員会や風紀委員会、体育委員会などだ。それらは、学校の運営の一部を生徒が担う事が目的で、6年生になると、全員何かの委員会か児童会に所属する事になる。

 放送委員会は、朝の放送、給食時の放送、帰りの放送を担当。

 体育委員会は、運動会などの運動系のイベントの運営。

 児童会は、児童会長、副会長、書記から構成され、教師とともに学校の運営や方針を決めていく。


 そして、風紀委員会は校内の戸締りや開錠などを行う。その際、毎週交代で行われるものを週番と呼んでいる。


 週番になると、その週は朝早くに登校し、職員用玄関から入り、児童玄関や各クラスの開錠や見回りを行い、帰りも各クラスの施錠等を行うので、風紀委員会は、生徒達からハズレ委員会と呼ばれている。


 残念ながら、篠宮少年はハズレ委員会の一員だったようだ。


「今から、開錠していくから、先生、よかったら付き合ってよ」


 私は、書類の山を見て、ため息を吐く。


 整理は、今日じゃなくてもいいか。


「わかりました。一緒に回りましょうか?」


 私は、篠宮少年に聞きたい事を聞けるいい機会だと考え、付き合う事にした。


 職員室を出て、まずは渡り廊下の扉の開錠を行い、隣の校舎に向かい、児童玄関を開錠する。その後、各クラスの開錠を行う流れになっている。


 職員室を出たところで、篠宮少年に話しかけた。


「篠宮さん、初めて会った時の話なんですが…」


 そこまで話しかけて、言葉が止まった。


 声が聞こえたのだ。


 初めて、この学校に来た時に聞いた声のように思えた。


「なに?今の?」


 篠宮少年は、動揺していた。


 無理もない。こんな時間に生徒がいるはずもないのに、子供の笑い声のようなものが聞こえたのだから。


 少し悩んで、篠宮少年を見詰める。


「確かめよう」


 そして、声が聞こえた気がした階段あたりに向かう。


 また、笑い声が聞こえた。


 他にも何か言っているが、うまく聞き取れない。


「上だ!」


 私は、篠宮少年に声を掛け、ともに階段を登り始めた。

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