9火は使い方を誤るとすべてを奪いつくす
焦げ臭い香りがあたりに漂う。パチパチという火が弾ける音。魔法によって放たれた炎の燻ぶる白い煙の中に、人影が立っていた。一陣の風が吹く。そこには不動でこちらを睨み続ける、セインの姿があった。
「な、に…………」
イーギルは驚きを隠しきれない表情で、目を見開く。セインは不敵な笑みを浮かべたかと思うと、
「……ッう熱!熱!アッチチィ!?」
服に燃え移った火を叩き消しながら、緊迫した空気をぶち壊した。どういうことだと、イーギルは思考が固まる。
「……ちょっとアンタ、うちの勇者殺す気?何してくれてんのよっ!」
セインの遥か後方、野次馬に混じっている女が声を荒げる。大きなつば付きの帽子を片手で上げ、右手で持った杖の先端をこちらに向けている。この女……俺より後にファイアーボールを放ち、勇者セインに当たる前に相殺しやがった……ッ!こいつの使う火魔法は、『火片』で強化された俺と同程度、スピードは向こうのほうが上だ。
イーギルは奥歯を噛み締める。
「お前、こいつの仲間かぁ?見たところいい服を着ていやがるなぁ!魔法の才能にも恵まれて、流石貴族様って訳かい?えぇ?」
両手を広げて吐き捨てる。"貴族"には碌な思い出がない。イーギルは貴族を仲間に加えているセインのことが、ますます気に入らなくなった。
「はぁ?アンタ馬鹿なの?貴族に生まれたからって、魔法が上手いわけないでしょ?私個人の実力よ実力」
胸に手を当て、誇らしげに胸を張る。その自信に満ちた態度が、イーギルの癪に触った。
「上等だ雌ガキぃ……ッ!!そっちのブス相手するのはやめだ、今日は俺たち全員で、お前を輪姦してやるよぉ……ッ!」
ゆらりと、どす黒い魔力を背中に纏わせ、イーギルが踏み出す。
「えー、そっちっすかぁ……俺あっちの胸のでかい娘の方が……」
「馬鹿!見てみろよあの高飛車な目、ああいうやつが泣きわめくのを犯すのがいいんじゃねえか!へへへ……」
「ハハハ!胸もないガキ犯して何が楽しいんだよこのロリコンがよぉ!」
好き勝手なことを抜かしながら、イーギルのパーティが歩み出る。どいつもこいつも、勇者のパーティよりも山賊の方がしっくりくる見た目と中身をしていた。
スワンしか映っていないイーギルの目の前に、剣が突きつけられる。邪魔をするのは、ところどころ焼けて焦げ付いた、能無しの『勇者』様だ。もはや眼中にすらない存在に邪魔をされ、イーギルはガン付けながら凄んでみせる。
「……あぁ~~ん?なんの真似だぁ?カス野郎がよぉ?」
「僕の仲間に、近づくな」
決定だ。この無能野郎は殺さずにふん縛って、目の前で仲間を凌辱してやる。イーギルは邪悪な笑みを浮かべて、仲間たちに命令した。
「殺して犯せ」