6職業は貴賤を反映しない
「ひ、ひぃぃいっ!?勘弁してください……勘弁してくださいっ!!」
炎上する自分の店を背に、娘を腕に抱いて必死に懇願する親父を男たちが取り囲んでいた。そのうちの一人が、ニヤついた笑顔でつかつかと歩み寄る。怯える親娘に顔を近づけ、チンピラのように凄んだ。
「あ~~~ん?許して欲しいのか?この『火片の勇者』さまにィ?」
「はい、どうか……どうかご勘弁を……っ!!」
火片の勇者は頭を下げる店主から目を離し、娘の方を見やる。娘は屈辱と敵意に満ちた瞳で、火片の勇者のことを睨みつけていた。
「……ん~~、娘の方は許して貰う側の態度じゃないよなぁ?えぇ~?」
「っ!人の胸を触っておいて、よくもそんな!!」
看板娘のリルは、このガラの悪い男たちに突然身体をまさぐられたのだった。頬を叩いて抵抗したところ、怒った男が店に魔法を放ち、火を付けたのである。当然の抵抗だが、相手が悪かった。まさかこのチンピラが、国公認の勇者の一人だったとは!どんなに性根が悪かろうと、国のために戦う勇者には優遇措置が取られてしまう。店を一つ焼いたところで、この男はなんのお咎めもなく過ごせてしまうだろう。
「俺みたいな有能な勇者さまが、お前みたいなブスの身体を触ってやったんだぞぉ?むしろ感謝して、今晩抱いてくださいと懇願するべきじゃないのか?なぁお前たち!」
火片の勇者の言葉に、仲間たちが下卑た笑い声をあげる。人を、女性を、あまりにも馬鹿にした態度に、リルは怒りを強めた。
「ふざけないでよ!」
「あぁぁ……よすんだリル」
父は店を燃やされようが金をとられようが、娘だけは守る腹積もりだった。しかしそれももう無理そうだ。火片の勇者はリルの顎を掴むと、無理やり自分の方を向かせる。自分には逆らえないことを知りながらも、なおも抵抗の意思を捨てていないリルを見て、火片の勇者は舌なめずりをし色欲に塗れた笑みを浮かべた。
「これは今晩、ベットの上で詫びを入れて貰うしかなさそうだなぁ……」
「へへへ……まったくだ!」
「顔はいまいちだがそそる身体してやがる、俺たちにもやらせてくださいよ?勇者さま!」
とことん腐った態度で、火片の勇者パーティが騒ぎ出す。店の親父が娘を守るため、命を捨てる覚悟で抵抗しようとしたその時、
「そこまでだっ!」
駆け出しの勇者、セイン一行が現れた。