5背表紙には本のタイトルが載っている
「彼は僕の新しい仲間なんです!勇者の仲間には特権が与えられているじゃないですかっ!?」
「そ、それは、そうですけど…………」
モンドがバートンをちらりと見遣った。勇者の仲間になった者には、例え元犯罪者や賞金首であったとしても、堂々と街を歩く権利が認められている。しかし、勇者が魔物を仲間にした事例など聞いたことがない。モンドはこの魔物を通すのか、それとも門番として止めるべきなのか、難しい判断を迫られていた。
その様子を気だるそうに眺めていたバートンが、2・3度鼻を引くつかせる。
「……なんだか焦げ臭くないか?」
杖代わりに寄りかかっていた剣から顎を上げ、背筋を伸ばし街を見澄ます。バートンに釣られて、4人も街の方へと視線を向けた。凝視しなければ気づけない程に微かだが、空に黒煙が伸びている。煙のあがっている方向から、人々の叫び声も聞こえてきた。
「みんな、行くよ」
いの一番に、セインが走り出す。普段は頼りないところもあるが、人の危機を察したときの判断の速さは目を見張るものがある。バートンはどこか嬉しそうな表情で、セインの後に続いた。
「あっ!ちょっと待ちなさいよっ!女の子を置いていく気!?」
ワンテンポ遅れて、スワンは二人を慌てて追いかける。モンドも街の人たちのために向かいたかったが、自分には門を守るという役割がある。歯痒そうに顔をしかめるモンドの肩を、緑色の手がポンと叩いた。
「心配しなくていいぜモンド、おいちゃん達に任しときな!」
カッパは親指を立てると、頭頂の皿をきらりと輝かせ、マントを翻し颯爽と街に向かって駆け抜けていった。その背中は、前を行く三人に劣らず気高く、そして大きい。
「…………よろしくお願いいたします!勇者とそのお仲間方っ!」
モンドは新たな仲間を一人加えた、若き勇者のパーティを見送った。