2河童とお嬢様のローキック
「はぇ~、でっかい門だなこりゃぁ…………」
勇者セインとその仲間たちは、河童の三平太を加えて一度、街へと戻ってきていた。跳ね橋の付いたレンガ造りの立派な門を見て、西洋の建物を見たことがない純和風な三平太は感動していた。河童生初の文化的衝撃である。はしゃいでいる様子を見て、勇者セインは三平太に声をかけた。
「ははは、大きいですよね。僕も田舎出身なんで、初めて見たときはカッパさんみたく見惚れちゃいましたよ」
「あぁ、こりゃあ立派な門だよこりゃあ、見てて飽きないねぇ!」
体を横に傾けたり、色んな角度から門を眺める三平太をしり目に、魔法使いスワンがセインを肘で小突く。
「ちょっと……あいつ本当に連れていくの?ぜぇぇぇぇぇぇっっっったい、トラブルになるわよアレ」
「まだ言ってるの?いいじゃないか、喋ってみると、気さくで良い人だったじゃないか」
ここまでの道中、カッパさんは面白い話を聞かせてくれた。自分の故郷の出来事らしいが、棒二本を使ってご飯を食べるんだとか、スモウという武術があってそれが得意だとか、予想もつかない未知の国の文化だった。ヒノモトとはどんな国なのだろうか?話だけでも想像が膨らんでワクワクする。
「オーケー、悪い魔物じゃないことは私もわかったわ。でもね、そんなこと関係ないの!見た目よ見た目!見なさいよあの姿!どう見ても魔物でしょうが!」
「誰が魔物だぁっっっ!由所正しき河童さんと呼べこのガキャァ!!」
「あんたのどこが家柄が良いのよっ!!何よその甲羅?叩き割るわよっ!!」
「おいちゃんのチャームポイントを奪えるものなら奪ってみろ小娘が!尻子玉抜かれてぇかぁああッ!」
「あーちょっとちょっと、二人とも落ち着いて、落ち、落ちつ、なんで二人して僕を狙い始めたぁああ!!ちょ、おいぃぃっ!左右の足をローで責めるなコラぁッ!!」
息の合ったコンビネーションでフットワークを潰しにくる二人を、なんとかセインは宥めることが出来た。