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 章間話


 ─── 1 ───


 「もぉー。ユウトの奴はいったい何処で何してんのよっ!」

 「まぁまぁ、シャル落ち着いてよ」

 これが落ち着いていられるかっての!

 私、シャルラッハ・ロートは、ロート領アルヒの町を治めるロート家の長女で、父は伯爵。母は『劫火の女帝』と呼ばれる魔法使い。

 2か月ほど前、アルヒの町を散歩をしていた私の前に、見かけない男の子が現れたの。

 話を聞くと、両親もいないみたいで、これから一人で特訓して魔法学園の試験を受けるって言うじゃない。

 このままじゃこの子は受かりもしないし、へたすりゃ路頭に迷う事になる。

 領主の娘として、貴族の淑女として、それは見過ごせないわ。

 そう思った私は、家に連れて帰ってお父様とお母様にお願いして、一緒に住まわせてあげる事にしたの。

 訳あって一緒に暮らしていたシュエも一緒に、三人で魔法の特訓を始めたのはいいけど、なんで魔法が使えないの?

 それだけならまだしも、魔力すら出せないってどーゆーことよ。

 これで試験を受けたいだなんて、よく言えたものね。

 でも、本人の頑張りもあって、試験前には火属性の初級生成魔法が使えるようにはなっていたし、自信も持ってるみたい。

 まぁ合格はしないだろうけど、うちの家で働ける様にお父様にお願いしてあるから、路頭に迷ったり、無茶な冒険者になって命を落とすことは無いでしょう。

 でも、試験に合格したって聞いた時は驚いたわ。

 今年は合格者は多めとは聞いていたけど、それでも全体からすれば2割弱ぐらい。

 初級生成魔法しか使えないユウトが合格したなんて、信じられないわ。

 いったい試験でどんなことをしたのかしら。

 まぁそれはいいとして、せっかく一緒に学園へ通える様になったんだから、私がきっちり魔法を教えてあげなくっちゃ。

 じゃないとユウト、卒業どころか進級すら出来そうにないんだもん。


 入学してからは寮暮らし。寮は一階には食堂やお風呂、学習室や魔法練習場があって、二階が女子部屋、三階が男子部屋になってるの。

 建物は魔力石材と魔木を使っているから、常に一定の温度が保たれていて、快適に暮らせる様になっているわ。

 当然、年頃の男子が女子部屋に、男子部屋に女子が入るのは良しとされていない。

 でもだからって、一度も訪ねて来ないのはどーかと思うわ。

 ユウトと会えるのは、食堂や練習場、学校の中だけ。

 クラスが同じだから、良かったって思ってたのに…………。

 入学早々、ハザック先生とゼークル先生に呼び出されて、その後はず~~っと修行だ、特訓だって私たちの相手をしないのよ!

 べっ、別に相手になってほしいなんて思っていないわ!

 ただ、シュエが……そう! シュエが寂しがるかと思ったから、私はユウトと接する時間を作ろうとしただけ!

 ユウト自身もきっと私たちと会えずに寂しい思いをしているはずだもん。

 こうなったら、私が二人の間に入って、もっと話せる時間を作ってあげなくっちゃ。

 そう。これは私の為じゃなくて、二人の為なんだから!

 そこ、勘違いしないでよねっ!


◆ ◆ ◆


 私の名前はシュエ・フェーヤと言います。

 魔法学園に入学してから、シャルが不機嫌な日が増えました。

 それはきっと、ユウトさんとお話が出来ていないからだと思います。

 ユウトさんは不思議な人です。おっちょこちょいで、魔法の基礎や一般常識などを何も知らないみたい。

 だけど、同じ年なのに大人っぽくて、優しいユウトさんが、私は好きです。

 あっ! 好きって言うのは、お友達としての好きってことで……。

 まだ私には、恋とかは分かりません。でも、ユウトさんの側にいると、温かい気持ちになれるんです。

 最近は、ハザック先生たちとの魔法の特訓で、ゆっくりお話しが出来なくて寂しいです。

 きっとシャルも同じだと思います。だから不機嫌になっているのだと。

 ユウトさんに少しでも時間作ってもらえないか、お願いしてみようかな~。


◆ ◆ ◆


 私の名は、ルフレ・コーニングと申します。

 コーニング王国の第三王女。今はスプランドゥール魔法学園に通う、一人の学生に過ぎません。

 同じクラスの皆様ともっと仲良くなりたいのですが、やはり王女という肩書に恐縮されているのか、中々お話して頂けません……。

 ですが、入学試験の日にお近づきになれた、シャルさんとシュエさんとはよくお話したり、一緒に学食でお昼を食べたり、お喋りをしたりしています。

 今まで一人で過ごすことの多かった私は、お友達と呼んで良いのかわかりませんが……シャルさんたちと、とても楽しい毎日を過ごしています。

 ですが、最近シャルさんはご機嫌斜めのご様子。

 それは、ユウトさんという、試験前に知り合ったもう一人方。

 明るく、なんにでも興味を持たれる楽しいお方。

 その彼が、ハザック先生とゼークル先生から特訓を受けていると、毎日忙しくされているみたいで、私たちとお話出来る時間がとてもとても減っているんです。

 その彼と中々一緒にいられないのが、シャルさんを不機嫌にしている原因だと思います。

 魔法の修練も確かに大事ですが、少しくらい私たちにも構ってくれてもいいと思うのです。

 シャルさんの為にも、少しは時間を作ってくれるように進言してみるのもいいかも知れません。

 あくまでシャルさんの為で、他意はないんです!


◆ ◆ ◆


 ユウトの奴は相変わらず特訓が大変なのか、授業の空き時間は中庭で初級生成魔法を練習したり、お昼休みもさっさと食べて校庭を走りこんだりと、一向に休む気配を見せない。

 それで、授業中は寝ているかっていえば、普通に起きて授業聞いてるし。

 もう何なの! どこまで魔法に対して本気なのよ!

 まぁ、それは良い事なんだけど。

 でもそんなユウトの様子に良く思わない人もたくさんいて、


 「あいつ、先生たちに裏金払って入学したらしいぜ」

 「あーやっぱり。じゃないと受かる訳ねーよな」

 「先生たちへの頑張ってるアピールご苦労さん」

 「あれをしとかないと、卒業どころか、留年確定だろ。ぎゃははは」

 「つか、あんなに色々やって、基礎魔法しか出来ないとか、ヤバ過ぎじゃね?」

 「そういや、入試の時に、ちぃーさい火を出したぐらいでドヤってたよな」

 「マジで? あははははっ。そりゃ傑作だわ」

 「そんな奴が俺たちと同期だなんて思われるとか無いわー」

 「ちょっとあいつに現実の厳しさを教えてやる?」

 「いいね。ちょっと分からせてやるか」

 

 なんて会話が、教室のあちこちでされている。

 まぁ色々言っているけど、実際に行動に移した人なんていない。

 だって、先生の許可なく学校内での魔法の使用は禁止されているもの。

 ユウトは他の生徒に追いつく為という理由で『休み時間内・校庭・中庭のみ』という制限の元、魔法の使用が許可されている。

 もし校則を破れば、事によっては退学だってありえるから、誰も本気になってユウトにちょっかいを出す奴なんていない。

 私もそう思っていたんだけど…………。



  ◆ ◆ ◆


 「ユウト。何故貴様だけが、ゼークル先生に教えてもらっているのだ。忌々しい」

 「そーですとも。本来であればサウラー様こそその逸材。先生方の目は節穴なのですかね?」

 「馬鹿かお前は! ゼークル先生は偉大なお方だ! 『智略の巨匠』と呼ばれ、参謀として参加された魔物との戦では、全戦全勝の偉業を成した方だぞ! ハザックの様な脳筋とは違って、その智略は全世界屈指の物! そんなお方の目が節穴なはずなかろう!」

 「も、申し訳ございません! でしたら、何故あのような者に? 何か裏があるのですか?」

 「ふむ。あやつは入試前にルフレ王女様と親しげであったな。もしかすれば王女がゼークル先生に頼んでいるのやも知れん」

 「なんと! た、確かにそれなら、あの様な無能に先生方が教える理由も納得できますね。さすがサウラー様、頭脳明晰」

 「ふっ。まぁそうと分かれば対策はいくらでも出来よう」

 「っと言いますと?」

 「なーに。簡単な事よ。あいつには仲の良い雌が二匹ほどいたな。その片割れがいなくなり、この町から去れ。さもなくば娘がどうなっても知らんっと言われれば、自ら学園を辞め、この都市から去っていくだろう」

 「お~何たる策略。ですが、学内で大事を起こせば我々だってたたでは済まないのでは?」

 「ふんっ。別に自ら動く必要は無かろう。たまたまバリシォーイへの侵入経路や、雌が学外に出る時間帯を知っていた何者かが犯した犯行まで、私たちが背負うことはあるまい。これは単なる想像であって、もし起こったとしても偶然にしか過ぎない出来事なのだ」

 「な、なるほど。さすがサウラー様です」

 「はぁーっはっはっはー」

 「いぃーひっひっひっー」

 夜も更けた頃、男子寮のとある一室からは、不気味な、そして嫌悪感を感じる笑い声を上げる者がいた。




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