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 第五章 入学早々、特訓開始?

 

 ─── 1 ───


 入学試験から1か月が経とうとしていた。

 入学試験は、シャルとシュエ、ルフレ王女、そして俺も無事合格。

 ただし、試験直後に俺だけは残され、ハザック先生とゼークル先生──実は試験官だけでなく、今年度から入った先生だった──に【魔弾】と【かめは〇波(魔砲と命名)】の二つの魔法について色々と聞かれることになったんだけど、誰に教わったとか、どれくらいで習得したのかとか、根掘り葉掘りの質問攻めで、もう参ったよ。

 それに、俺が独自に編み出したと知った時は二人とも口をポカーンっと開け、しばらくはフリーズしてたなぁー。

 その後は、この技はもしもの時を除き人前では使わない事を約束させられた。

 無詠唱で発動でき、実力者が使えば暗殺などを容易にさせてしまう危険性がある魔法だと説明されたら、俺は従わずにはいられない。この世界に暗殺者を増やしたい訳じゃないからな。

 その代わり、入学後には魔法使いレベル8と9の先生たちから、魔法の直接指導を受けられる様になった。

 先生たちほどの実力者なら、対峙した段階で、相手の大まかな魔力量や実力が分かるらしく、入学試験はその力をどの様に使いこなすか、もしくは、小さい力でも工夫次第で強力になるので、どこまで自分の力と向き合い、高めているかを見るものだったそうだ。

 力に溺れた者は、大雑把な魔法しか使えなかったり、魔力制御が苦手だからと、禁止の魔道具を隠れて使おうとした者たちは、ことごとく失格になったらしい。

 余談ではあるが、サウラーとス〇夫も合格していた。


 入学後は、ほとんどの生徒が寮暮らし。寮と言っても建物自体は男女同じで、一階には食堂やお風呂、学習室や小体育館ぐらいの広さの練習場などがあり、二階が女子部屋、三階が男子部屋となっている。

 建物はレンガと木で作られていたが隙間風もなく、快適に暮らせている。

 ただ、女子部屋に男子が、男子部屋に女子が入るのは良く思われておらず、シャルたちと会えるのは、共同使用の食堂や練習場、学校の中だけとなった。クラスが同じだったのは、不幸中の幸いだ。

 だけど、入学して早々ハザック先生とゼークル先生に呼び出されて「今日から俺たちが交代で、みっちりお前に魔法を教えてやる。こんなんは、そこらの魔法使いや冒険者共なら泣いて喜ぶ事だぞ? 感謝して受けろ。がぁーっはっは~」と、放課後は二日おきに特訓が入って、特訓が無い日は渡された自主トレメニュー表をこなす毎日。どうゆう魔法なのか、メニューより少なったり、ちょっとでもサボろうものなら、即座にバレてしまい、さらに激しい特訓メニューになったので、サバらずに毎日続けるこことなった。

 そのおかげか…………。


 【火よ灯れ!】

 ボッ! とチャッカマンほどの火が、指先に灯る。

 【風よ吹け!】

 ヒューーーーーウ。と扇風機の弱ほどの風が両手から吹く。 

 【土よ成れ!】

 グゴッ! と何も無いところから土が出た。

 【水よ出よ!】

 チョロチョロチョロ。掌から、湧き水程度の水が湧き出た。

 【雷よ轟け!】

 ビリリッ! と、目視できるくらいの静電気が飛ぶ。

 【光よ輝け!】

 ピカッ! 一瞬だが、電球が光った様な輝きが、手の上に現れる。


 「お~、一か月で6つの属性を出せる様になったか」

 「わたしたちの指導のおかげというのが、多いにありますが、素晴らしい進歩です」

 「詠唱は全く進歩してねーがな。がっはっはっ」

 今日は、今までの成果を見せろと先生たちに教員用特別魔法訓練室に呼び出され、今どれだけの魔法が出来る様になったのか、お披露目会となっていた。

 まだ闇属性の基礎生成魔法である【闇よ来たれ】という、辺りを暗くする魔法は成功していないものの、それ以外の属性は作れる様になった。

 自分でも信じられない進歩だ。

 これなら近いうちに詠唱も出来る様になるかも知れない。待っていろよ! きっと全ての魔法をマスターしてやる!


 「だが、これじゃあまだまだだな」

 「ええ。まったくです。これでは魔法を学んだ5歳の子に負けてしまいますね」

 「え? それはいったいどういった意味ですか?」

 俺は先生たちの発言が理解できなかった。

 適性属性以外の魔法をこれほど使えるのだから、俺ってすごいんじゃないの?


 「確かに適性以外の魔法を使うのは至難の技です。しかし、適性があれば今あなたのやっている初級生成魔法など、3歳の段階で出来ているものなのです。魔法の才能が無い者や、教育を受けられない者ならいざ知らず、わたしたちの様な上級者にここまでの指南を受けたのなら、適性さえあれば、すでに中級魔法すら使えていたでしょう」

 「まぁ無属性しか適性のないオレでも、中級ぐらいなら使えるしよ。まぁぶっちゃけ、お前には才能がねぇーんだよ」

 「そっ、そんな~~…………」

 俺はその場に崩れ落ちてしまった。あ~床も心も冷たいや。

 

 「でもよー。なんでそれなら無属性一本で教えねーんだ?」

 「まったく。ハザックは相変わらずですね。確かに適性属性一本にしぼれば、今頃それなりに戦える実力はついていたでしょう」

 俺はバッと顔を上げ、ゼークル先生の方を向いた。

 え? 本当に?

 「ですが、もし旅に出て水が無くなればどうしますか? 野宿の際には火は必要でしょう。その火を強くするには風を、洞窟を探索するには光を。なんにしても、全属性が使える方が有利になる場合が多いです。普通の冒険者や魔法使いなら、己の技術や魔法を駆使して、そういった場を乗り越える事は可能でしょう。ですが、彼の様に才能のかけらも無い、どうしようもない子には、出来るだけ多くの手札を与えてあげるのが、教える立場にあるわたしたちの使命ではないですか?」

 「おめぇーな。それはフォローじゃねーよ。こいつに止めを刺してるだけだ。ほれっ。泣き崩れてんぞ?」

 俺は床水たまりを作りながらにへたり込んでいた。

 何もそこまで言わなくても良いじゃないかぁー。


 その後、テンパったゼークル先生が更に追い打ちを掛けてきて、俺の精神的HPがゼロになりかけたところで、ハザック先生が声を掛けてくれた。

 「まぁでもよ。全属性を少しでも知ってる、扱えるってのはすげーアドバンテージなんだぜ? それぞれの良いところ、悪いところを知れば、対策も対応もスムーズに出来る。そして何より、自らの魔法を極めんとする時には必ず役に立つ!」

 俺はきっと、きょとんとした顔をしているだろう。アドバンテージや、自信の話はなんとなく分かるが、それがどうして自分の魔法を極める手助けになるのだろうか?

 「よし! 今日は特別だ。俺が魔法の真髄ってやつを教えてやる!」

 「っ! ハザック! それはいくらなんでも早過ぎです。今の彼が知ったところで理解も出来なければ、真似をしようと無理をする可能性だってあります。あれほどの魔力。彼の中でどうなってしまうか……。ですから事は慎重に進めなければいけないのです!」

 ゼークル先生が心配してくれている事は伝わるが、何をそんなに焦っているんだろう?

 「なぁーゼクよ。確かに無茶をさせたり、危険な目にあってほしくないって、お前の優しさは良くわかってる。だけどな、信じてやるってのも大事な事なんじゃねぇーか? 力のある奴が、ただ守ってやるだけじゃ、そいつは成長しなくなるぜ? 時には信じて背中押してやるってのも必要なことだろ。なぁユウト。おめぇーは大丈夫だよな? 過信をして馬鹿なことしたりしねぇーよな?」

 俺は確かに感じた。ゼークル先生の言葉が厳しいものだけど、それが俺を守ろうとした優しさだって。そして、ハザック先生のいい加減な様な言葉も、相手を……俺を信じての言葉なんだって!

 「先生! 俺は馬鹿な事はしません。どんなに力を手にしても、誰かを傷つけたり、苦しめたりする事は絶対にしないって約束しますっ!」

 俺はしっかりとその場に立ち、先生たちの目を見て宣言した。これは絶対に守らなければいけない男の約束だから。

 「バァーカ。大切にすんのは、おめぇー自身もだ。オレたちはおめぇーにも傷ついてほしいなんて思ってねーからな。んで、どうするよゼク。こいつに教えんのか? どーなんだ?」

 俺とハザック先生が、じっとゼークル先生を見つめていると、

「はぁー。まったく。あなたたちは本当に似たもの同士ですね……。わかりました。いいでしょう。しかし、わたしが危険と判断したら、即刻止めに入りますからね。いいですね!」

 「はい!」

 「おうよ!」

 俺たちは異口同音に、決意の強さを伝えた。



 ─── 2 ───


 「それじゃあまずは、魔法とは何なのかを教えてやる」

 「はい先生!」

 俺の元気な返事にハザック先生は満足したのか、うんうんとうなずいている。その横では、はぁーとため息を漏らすゼークル先生が。

 「魔法っつーのは己の魔力とイメージ力の混合で出来てんだ」

 「?」

 「それじゃあなんで詠唱が必要あるのかってーと、自分の中のイメージを強固なものにするためよ。この詠唱を唱えて魔力を流すと火が出るって、深層心理に叩きこむ。すると、魔力が変化して、魔法となる。これが真髄だ」

 どうゆうことだ? 魔法は世界の中で作られると授業で習った。個々人のイメージでどうこうなるものじゃあないでない?

 「魔法は世界によって生み出されている。これが今までの定説です。しかし、わたしたちの師匠曰く、魔法とは人が創り出すもの。世界はそれを実現させる環境にしか過ぎない。とおっしゃっています」

 ゼークル先生が俺の考えを読んのか、補足説明をしてくれた。

 「個人によって創り出される魔法。オリジナル魔法なんて呼ばれているが、オレたちは『心創魔法しんそうまほう』と呼んでる」

 「……心創魔法」

 「あぁーそうだ。心で創る魔法と書く。属性適性がなくても、他の属性を使えるのは、イメージ力を強くもっているからだ。おめぇーが火の魔法を初めて使えた時は何を考えていた? 例えば身近な物、小枝に火が灯る所をイメージしたんじゃねぇーか?」

 正直、俺がイメージしたのはチャッカマンだ。指先をチャッカマンの先っぽだと強く思って、詠唱がボタンを押す代わり。魔力がガスの代わりと、イメージすると、出来る様になった。始めは慣れるまで苦労したが、確かに詠唱と魔力で火が出せるという感覚が固まったら、チャッカマンをイメージしなくても出せる様になった。

 「つまりはイメージ力しだいで、どんな魔法も使えるし、生み出せるってこと?」

 「おうよ。だがな、それがそう簡単じゃねーんだ。おめぇー【魔弾】ってのを試験の時に使ったよな?」

 「? はい。でも威力がイマイチでこれじゃあ不合格になるって思いました」

 「いいか。見てろよ。うぉーーーーーーー」

 「!!!!!!」

 ハザック先生が人差し指だけを伸ばした拳を前に出して壁に向けた。そして、

 「【魔力球!】」

 ズドンッ!

 「ハザック先生も【魔弾】を使えたんですか!」

 名前は違ったが、確かに【魔弾】だった。だが【魔弾】自体が小さく、威力もそんなになかった。ハザック先生手加減したのかな?

 「はぁーはぁーはぁー、こ、これが、お…まえが、試験で、使っ…た。【魔弾】って、やつだ……はぁーはぁー」

 どうゆう事だ? ハザック先生が肩で息をしている。あれぐらいの【魔弾】なら、50連射ぐらいは出来るだろう。それがなぜ?

 「いいですかユウト少年。【魔力球】。君の言う【魔弾】は、純粋な魔力を圧縮して打ち出す物ですよね」

 「はい。体の中の魔力を、指先一点に集めて打ち出すだけですが……」

 「それが出来るのは極めて異常なことなのです」

 「ほ! ホントですか!」

 それは意外だった。何かに変化させるより、そのまま出した方が楽なのでは? との考えから、ただ溜めて出すってお気軽方法をとっただけなのに、実はそれが出来ることが異常だったとは……。でも異常だからって、何が問題あるのだろう?

 「はぁー。まったく、その様子では、何もわかってはいませんね。では簡単に説明いたします。先ほど、『魔法とは人が創り出すもの。世界はそれを実現させる環境にしか過ぎない』と伝えましたね。それは逆に言えば、世界の環境によって魔法は実現するのです」

 「何がどう違うのですか?」

 「あなたは魔法学の基礎をちゃんと学んでいますか? 魔法とは世界の中に絶えず存在し、我々人は、それを自然に吸収し己のものとしています。ですので、魔力を出すのは吸収したものを世界に返すだけなので、誰にでも出来ます。そして人が強固にイメージした物を世界が補い、魔法として発動することも可能なのです。しかし、魔力のみを高密度に高めて打ち出す事は世界も想定していませんので、出来る事こそ異常なのです。ハザックでも一度【魔力球】を撃つのに体内魔力の四分の三は消費してしまいます。それをあなたはいとも容易く、いえそれだけに留まらず、あの様な魔力の砲撃さえもしています。本来では成しえないことをやっているのですよ?」

 「そう言われましても…………」

 俺はただ『レイ〇ン】や『かめは〇波】を真似しただけなんだけど……もしかして……。

 「先生! 仮に【魔弾】の様なものを強くイメージ出来ていたとしたら、それは他の魔法と同じで、世界がそれを実現する。魔法として使えるってことになるんじゃないんですか?」

 「ま、まぁーそうですね。確かにそういったイメージを強固なものにさえ出来ていれば、通常の魔法と同じ様に使用することは可能でしょうが……。いえ、でもそもそも、魔力のみを高密度に集めるなどという発想や、イメージなど、人に出来るのでしょうか。確かに師匠やハザックは可能としてきましたが、わたしにはまだ【魔力球】は使えません。いや、それこそがイメージ力の不足といいますか────」

 「あぁー。こうなったらしばらくは戻ってこねーな」

 魔力不足から回復したハザック先生が、いつの間にか隣で座っていた。

 「おいユウト。おめぇー面白い考え方するのな。確かに強いイメージを持ってさえいれば、世界の力によってその魔法は成功するかも知れねー。でもな、それをするにも魔力のコントロールや制御が必要になってくる。むやみやたらとしていいもんじゃねーぞ。そこんとこわかっとけよ」

 ハザック先生はいつも優しい。迷った時は後押しをしてくれたり、悩んでいればアドバイスをくれる。そして間違えそうになったら、注意してくれたり、事前に忠告してくれる。

 そして、子どもだからって侮ったり、出来ないと下に見たりしない。

 生徒に対してはいつも親身になって接してくれ、そして支え、励ましてくれる。

 俺もいつかハザック先生の様な大人で、立派な魔法使いになれたらいいなー。


 「よしユウト。ゼクの奴はしばらく自分の世界から戻らねー。今のうちにお前に俺の取って置きを伝授してやる!」

 「いいんですか? 一生徒にそんなこと教えて……」

 「いいんだよ。オレがおめえーぐれーだった時、無茶をして酷い事になった時がある。そん時に師匠と出会ってオレを実の子の様に叱ってくれて、魔法まで教えてくれた。今のオレがあんのも師匠のおかげだ。だから、今度は俺がおめぇーが無茶して怪我をしない様に、そして……その強大な力で誰かを傷つけたりしない様に、オレが教えてやる」

 ハザック先生の最後の一言はきっと、自分自身にも言った事なんだって、さすがの俺も感じることができた。だから俺は、

 「先生。誰かを傷つける事を俺は絶対にしない。そして誰かだけじゃなく、自分自身も守っていける様になるから、安心して」

 「んぐ! ば、ばっきゃろー。そんなん10年早ぇーぞ。今はオレたち大人に守られてな。だが、いつかおめぇーの前に、無茶しそうな奴がいた時には、今度はおめぇーが守ってやれ」

 「はい。きっとそうしてみせます」

 ハザック先生は後ろを向き、しばらくこちらを向いてはくれなかった。時折ズズッと鼻をすする音が聞こえてきたが、俺は先生がこちらを向くまで、俺はじっとその場で待っていた。



 ─── 3 ───


 「それじゃあおめぇーにはこの魔法を教えてやる!」

 ハザック先生は感動モードからすぐに元に戻った。だがゼークル先生は今だにぶつぶつ言って、自分の世界からは返ってきそうにない。まぁ戻ってきたら、きっとハザック先生の魔法の特訓を受けられないので、終わるまではそのままでいてくれることを期待しておくけど。

 「オレが『無敵の剛腕』と呼ばれる所以となった心製魔法。それが【豪傑魂】だ!」

 「ごうけつのたましい?」

 「おうよ。論より証拠。百聞は一見に如かずってな。まぁ見てろ。はぁぁぁぁぁ!」

 ハザック先生の魔力が、視認できるほど高まっていく。

 そして全身を包んだかと思うと、燃える様な魔力の奔流が、先生の体の周りを渦巻き始めた。

 「よし。んじゃユウト、お前の【魔弾】を俺にぶち込め」

 「え! いやそんなことしたら、先生が大怪我しちゃいますよ!」 

 「いいからやれってんだ」

 俺はしぶしぶ先生に向けて【魔弾】を撃った。全力では先生に怪我をさせてしまうので、威力はさっき先生が撃ったのと同じにしてある。しかし、

 「!!!!!」

 「おめぇーの【魔弾】ってのはその程度か? なぁーっはっは」

 魔弾はハザック先生の腹部に直撃した。しかし、傷どころか、当たった瞬間に、【魔弾】の方が霧散してしまった。

 俺はもう一度、さっきりよも3割増しの力で【魔弾】を撃ち出した。だが、それすらもハザック先生は微動だにせず消し飛ばしてしまう。

 「うっそ~~~~…………」

 「どうだ! これがオレの心製魔法【豪傑の魂】。普段は流れ出てしまう魔力を留め、さらに元の魔力を高めて体全体にまとう。そうすることで防御力を上げ、さらに強化された手足は一流の武器となる。これが攻防一体の特別魔法よ。まぁこれは身体強化を極限まで高めた魔法なんだが、ここまでの域に達したから心製魔法として認められたって訳よ」


 身体強化は基礎中の基礎らしく、入学して早々に、授業でも習い始めたのだが、俺はまだ一度も成功していない。

 【心身より溢れる魔力の力よ、我が肉体に留まりて、力を発せよ!】と、他の詠唱よりもさらに長く、唱えている間に、魔力が散ってしまうからだ。


 「あぁー。おめぇはまだ身体強化できなかったんだったな。まぁ様はこれもイメージだ。体全体を、魔力で包んで強化する。言葉にすればこんなけだ。どうだ? 理解できたか?」

 「それで理解できるのはあなただけですよ。ハザック」

 「お~ゼク。やっと返ってきたか」

 「? わたしはずっとここに居ましたが?」

 やっとゼークル先生が自分の世界から戻ってきた。だがどうやら、その間の記憶は無いようだった。

 二人が言葉を交わしている間、俺はハザック先生の言葉を反芻した。

 (魔力を外に出さずに、自分の中に留めて、さらにそれを増幅させるって……これって『念〇力』と同じなんじゃ?)

 俺はさっそく、ゴ〇やキ〇アが初めて念の修行をした時のシーンを思い出しつつ、目を閉じて、体内の魔力を探った。

 すると、微かに体から抜けていっている魔力の流れを感じ、それを留めて、体の周りにまとう、魔力が滞留するイメージをしていく。

 しだいに暖かい膜に包まれた感じが強くなり、それを維持しながら、少しだけ体内の魔力を出しつつ、混ぜ合わせるイメージをしていく。

 (おっ。思ったよりスムーズにいってる。この調子なら身体強化もマスターできるかも)


 「ちょっと待てユウト!」

 「?」

 ハザック先生の声に驚いて目を開けると、ハザック先生には劣るものの、燃える様な奔流が全身を包んでいた。

 「な、なんじゃこりゃーーーーーーー」


  ◆ ◆ ◆

 

 おいおい嘘だろ? なんでこいつが【豪傑の魂】を発動出来んだ?

 いや、まだ不安定だし威力もちいせぇーから、完全に発動した訳じゃねー様だ。

 しかし、オレが長年かけて編み出した魔法を、口頭で説明しただけで出来るか普通?

 オレはとんでもない奴に魔法を教えてるんじゃねーだろうな?

 

◆ ◆ ◆


 まさかハザックのあんないい加減な説明で、身体強化ができる様になるなんて……。

 むしろこれは【豪傑の魂】? いや、まさか、そんなことは…………。


◆ ◆ ◆


 俺が驚いた途端、集中力も切れたのか、身体強化は霧散して消えてしまった。

 もう少しでコツが掴めそうだったのに!

 でも待てよ? イメージの強さが魔法を発動するトリガーなら、俺が今まで見てきたあのキャラの魔法とか、必殺技とか出来るんじゃね?

 魔力は莫大にあるわけだし、技や魔法のイメージは長年のヲタク人生で培ってきた。

 そしてトリガーさえ引ければ、世界補正? されて、魔法が発動するんじゃないか?

 これってもしかすると、もしかするかも……。


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