プロローグ
プロローグ
俺の名前は神代 優人。
親から「優しい人になってもらいたい」という願いを込めて付けられた名前だ。
だが俺は……自殺した。
アニメやラノベ、ゲームにアイドルetc. 俺が好きなものは周りからオタクとキモがられ、それが引き金となっていじめられた。
別に誰かに迷惑をかけた訳じゃない。趣味が少し違っただけだ。ただそれだけなのに………。
友達と呼べる人は一人もいなかった、だから学校では常に一人。それも合わせていじめやすかったのかも知れない。
俺は、いじめられた事を誰かに話したことは無い。
両親に心配をさせたくなかったし、かっこ悪い姿を見られるのが嫌だった。
学校の先生は……たぶん気付いていた。
いじめられていた場面に出くわしたことが何度かあったが、「悪ふざけもほどほどにな」という言葉を残して立ち去っていった。面倒事に巻き込まれたくなかったのだろう。
この時「あー。俺には学校で居場所はないんだなぁ。助けてくれる人なんていないんだなぁ」と気付かされた。
そんな俺は益々オタクと呼ばれるジャンルに没頭していった。
学校から帰ると、パソコンを前にネットサーフィンをしたり、動画やアニメを夢中になって観ていた。
そんな生活が、小学生の高学年から中学の卒業式まで続いた。
中学3年の夏に両親が事故死。居眠りトラックが突っ込んでくるという、ラノベではよくある展開だった。しかし、それで両親が異世界転生したかなんてわからない。俺が分かるのは、トラックの運転手が捕まった事と、両親の葬式がつつがなく行われた事だけだ。
そして、それをきっかけにいじめが無くなるなんて事もなかった。
学校ではいじめられ、家に帰っても誰もいない家で一人で過ごすというのを、夏から卒業式まで続けた。
そして、卒業式終了直後。ついに俺は……自殺した。
両親の事故死がきっかけだった。
学校でも家でも常に一人。両親がいたから死のうとは思わなかったが、孤独の中で生きていることに意味を見い出せなくなった。そして冬休みに自殺を決意し、決行の日を卒業式終了直後と決めた。
それからは、ある意味で毎日慌ただしく過ごした。
いじめから誰も救ってくれない。やり返す度胸も力も俺にはない。それこそアニメやラノベ、ゲームの中みたいに魔法や必殺技なんかが使えたら、あーしてこーしてこうだ! と妄想ばかりだった俺は、自殺の決意を固め、一世一代の仕返し計画を立て、実行することに決めた。
話し合えば解決する! 先生に直接相談する! 両親に話して転校する!
ははっ。テレビでいじめを題材にした番組が綺麗ごとを並べている。
確かに一部分は正しい。転校したり学校をやめたりなど、別に今の学校に縛られる必要は無いと俺も思う。
しかし、いじめをする連中と話し合う? 馬鹿めっ! 余計にいじめられるだけだ!
先生に相談? 俺は見て見ぬフリをされたんだがな。それに両親ももういない。転校するお金も無ければ、頼れる親戚もいない。
じゃあどうやって解決する? ほぼ詰みの状態のこの俺は……。
まぁそんな事はどうでもいい。どうせ死ぬんだ、奴らにきっちり仕返ししてからな。
俺はいじめてきた奴らの所業を全て文章にした。実名・いじめの内容・住所・進学先にいたるまで事細かに記載し、誰が見ても一目瞭然になる様な資料を作り上げた。
自殺決行の卒業式前夜。ネットに自殺をすることを書き込んで、ライブ中継もすることを伝えた。
流石はネット。あっという間に拡散され、面白がる人。止めようとする人。どうせ嘘だと馬鹿する人。様々なコメントで掲示板が埋め尽くされていった。
そして卒業式が終わり、決行間近。俺は屋上に上がった。
普段は厳重に扉を閉められているが、卒業式用の垂れ幕を飾る為に、今日だけは開いている。まぁ開いていなくても開ける方法はいくらでもあったし、用意もしていた。
とりあえず邪魔をされない様に、扉の前にはバリケードを作っておいた。これなら30分ぐらいは耐えられるだろう。
準備を終えた俺は、ノートパソコンにカメラを接続しライブ中継を始めた。
開始早々に閲覧数がとてつもない事になって笑えた。どうやら人は、他人の不幸を見るのが好きらしい。
俺は学校からパクッておいた拡声器を片手に柵の外に出て、いまだにグラウンドで友達と別れを悲しんでいる女子や、友情を確かめ合っている男子たちに向けて話し出した。
自分が今までされてきたいじめの事を。誰からどんな事をされたのか、どの先生に見て見ぬフリをされたか。.そしてそれがいかに自分を苦しめてきたのかを詳細に。
他人からすれば些細なことや、遊びの延長だったのかも知れない。しかし、受け取る側がどれほど苦痛に思っていたのかを、事細かに、心情も合わせて伝えていった。
そしてそれが原因で自殺を決めた事。今からここで自殺をする事を。
すぐさま先生たちが止めに入ろうと屋上へ来たが、扉の前のバリケードのおかげで、中までは入っては来られない。
俺をいじめていた奴らは、進学先にも伝えてある事を話すと、激怒して「死ね」だの「殺す」だのと言っていたが、ライブ配信もしている事を伝えると青ざめていた。この時の表情は今思い出しても滑稽で笑えてくる。
そして、我が子がいかに卑劣ないじめをしていたのかを知って、その両親や家族も青ざめたり、泣き出したりしていた。中には「うちの子の人生をどうしてくれるんだっ!」と怒鳴ってくる親もいた。あの親にしてこの子ありとはよく言ったものだ。
その段階では誰も俺が本当に自殺をするとは思っていなかったのだろう。
全てを話し終え、ライブ中継を見ていた視聴者に、今後俺みたいにいじめが原因で自殺しようとする人が出ない様に、いじめが無くなりはしないだろうが、少しでも減ることを祈っているという事を伝え、拡散をしてもらえるように頼んでから、
ついに俺は、屋上から…………身を投げた。
飛んだ直後はしんと静まりかえったが、すぐに悲鳴が聞こえてきた。
屋上へ入ってきた先生たちの悲痛な叫びや出された手も虚しく、俺はどんどん落ちていく。落下の最中は時間が引き延ばされたかの様にゆっくりと進んでいき、その中で眠るように意識が消えていった。
これは不幸中の幸いだった。地面に叩き付けられ、本当の意味での死ぬ痛みを感じなくて済んだのだから。
指先に針を刺しただけでも痛いのに、4階もの高さからコンクリートの地面に叩きつけられる痛みなど、想像するだけで恐怖が全身が震えだす。よく俺は飛べたものだ。もう一度やれと言われても、死んでも拒否するだろう。まぁ今から死ぬんだけど……。
そして俺は15歳という長いようで短い人生に終止符を打った。
……
…………
………………打ったつもりだったのだが、
「……どうして俺は生きてるんだ?」




