瞬き
人々は人類存亡の危機に直面していた。
そのため、全世界は一致団結しその問題を解決すべく連日連夜会議していた。
しかし、解決策はなにひとつ出ないのであった。
このままでは生命が生きてきた証がすべて無くなる、そんなことはあってはならない。
なんとかして後世に繋いで行かねば・・・。
人々はその思いの中、とてつもない焦燥感に駆られていた。
「仮想空間で知的生命体を作り出し、そいつらにこの問題を解決させるというのはどうだろう」
ある日、とある科学者がそんな提案をした。
「その世界の時間の流れを限界まで早くすれば、なんとか間に合う」
「しかし、そいつらの科学技術が進みすぎてこちらの世界に攻めてくるということになったらどうする」
「この問題が解決されたらすぐにその世界の時間を止めてしまえば問題ない」
「そのような行為はその世界の生命に対して無責任なのではないか。世界を創り出すなどといいう行為は人間の分を越えた神に近い行為だ。やめたほうがいい」
「ならば他にどうしようというのだ。もうこの方法しかないんだ」
多少の問題などはあったものの、他に具体的な提案もなかったため、この案が会議にて可決された。
人類の技術の粋を集めた電子演算機がつくられ、仮想空間にてビッグバンが起き、宇宙ができた。
時間を進めていくと、とある星にて生命体の反応があった。
「やったぞ。成功だ。あとはこの生命が進化し、必然的にぶつかる問題をどう解決するかだ」
「この星はかなり地球に似ているな」
「やはり生命は地球のような奇跡的な星でしか誕生しないのか」
やがてその生命は進化していき、海から陸に上がるもの、恒温動物、そして脳がとても発達した種もでてきた。その種は人間そのものだった。道具を使い、火を使い、火薬を使い、電気を使い、やがてある問題に直面した。
ここまで来ると、その場にいた全員がこの状況がどういう状況か理解した。
しかし、とてつもない焦燥感はすでに霧散していた。これまで永遠に繰り返してきた事を、しっかりと次に繋げることができたのだから。これからも人類は永遠に同じことを繰り返すのだろう。
その場にいたある科学者は思った。この世界は神の瞬きのうちに始まって終わるといった話があったが、そういうことだったのか。
すでに仮想世界では会議を終わらせて、電子演算機を完成させていた。