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魔法とは

 魔法というモノを説明するとなると分厚い本が何冊も書けてしまう。

 簡単に説明できないか?

 そう嘗て、天才、異端児と呼ばれた魔法使いが知人に問われて返した言葉がある。


 【なんかよくわからない力を制御する方法】


 今も昔も、理解できなさそうな一般人に魔法を説明するときのジョークも兼ねてこう言われることもしばしばだ。

 その【なんか()よくわからない力()】を制御するために確立されたものが魔法である。

 空気中を漂う、世界を覆う魔力。それを研究し体系化してきたのが魔法使い、現代で言うところの魔道士である。

 この魔法には様々な種類がある。

 たとえば呪文を詠唱する詠唱魔法、中空や地面に魔方陣を描く図式魔法、図式魔法よりも少々複雑な式を編んで発動させる術式構成魔法、応用した場合は契約を交わした魔獣や聖獣などを呼び出せる召喚魔法などもある。

 攻撃魔法、治癒魔法、等々名称も様々である。

 今しがた、ナルが無力化した魔法は術式構成魔法と呼ばれるものだ。


 「何を、したの?」


 シャルロッテは得体の知れない魔法を使われたと考えた。

 少しの恐怖を持って、そうナルヘ問う。

 魔法の無力化は、理論上は可能だが、成功したためしがなかった。

 編み物で説明すると分かりやすいだろうか。

 編み上げたマフラー、編み物は全てそうだが編み止めをしなければほどけてしまう。

 魔法というのは編み止めをしない毛糸のマフラーだ。

 しっかりと編み止めをすればその形のまま存在し続ける。

 しかし、攻撃魔法においてこれはその形を維持し続けるのは迷惑でしかない。

 爆発系の魔法ではずっと半永久的に爆発し続けることになるからだ。

 だから、ほどけるよう術式は組まれ、編まれている。

 その少し余ったあるいはほつれた箇所の毛糸を引っ張ってマフラーをほどく。

 ナルがしたのは、そういうことだった。

 術式構成魔法と詠唱魔法のミックス魔法だったのなら、ナルは他の手を使っていたが、シャルロッテが使ったのは術式構成魔法の、簡易版だった。

 簡易、魔法は手間暇を掛けただけ強力に複雑になり、解きにくくなる。

 解きにくくなるだけで、解けないわけではない。

 指に墨をつけて書いた文字と、筆記具を使って書いた文字。どちらが繊細で読みやすいか。

 前者なら力強い文字になるが繊細さに欠ける上、単純なものになる。

 一方、筆記具を用いて書いた文字は力強さこそ劣るが、ある程度は筆圧で調整が出来る上、細かな文字がかける。

 シャルロッテが行った術式は前者である。

 大雑把な動作で編まれた術式は単純で解きやすい。

 細かな文字を書く、つまりは繊細な動作をする道具であるナルが持つ練習用の杖でも簡単に魔法は解除できたのはそういうわけだった。

 しかし、これは理論上出来るもので、実際これをやってのける馬鹿はいない。

 下手をすれば腕が吹っ飛んで、魔道士生命が絶たれる可能性だってあるのだ。

 他人の魔法に、術式に干渉して解除、無効化するとはそういうことだ。


 「式を、解いただけです」


 何てことないように、簡単に言ってのけた。

 しかし、シャルロッテは誤魔化されたと取ったらしい。

 

 「田舎娘にしては、高性能な杖をもっているようだけど、これはどうかしら?」


 シャルロッテは自信に満ちた顔で、幾つもの魔方陣を中空に描き出す。

 ナルはその光景を見て、キラキラと目を輝かせた。


 「スッゴい! ボクこんなことできない!」


 それは純粋な感想だった。

 正確にはやろうとしたことがあるが、危ないからと母に止められたのだ。

 その光景が、ナルの好奇心に火をつけた。

 練習用の杖を振るって、許されている二つ目までの魔方陣を展開させる。


 「んな!?」


 驚き過ぎて、シャルロッテは変な声が出てしまった。

 通常、魔法の同時発動は術者の力量に左右される。

 力量とは、魔法の技術、術者の持つ魔力、そして知識と経験である。

 魔法は学んだ分だけ、使用した分だけ術者の糧になる。

 こんな森の中で充分な教育も受けていないはずの女の子が、同時発動の数こそシャルロッテに及ばないが、それでも二つも魔方陣を展開している。

 それも、兄や姉たちの使うそれよりも洗練された術式だ。


 「人間も生き物だし、いけるかな? いけるよね多分」


 無邪気な声でそう呟いて、ナルは展開した魔法を発動させる。

 それは、シャルロッテより後に展開したものなのに、早く発動した。


 「狩り用だったから、ここをこう変えて、と」

 

 発動させる直前に、ナルは魔方陣の術式を少し変えた。

 ほぼ、同時に魔法を発動させた。

 ほぼというのは、少しだけ発動にズレがあった。

 最初に水流がシャルロッテを襲い、すぐに電撃がおそった。

 それこそ初めて受ける二重の衝撃に、思考が追い付かなくて、そもそも何が起きたのか思考する暇もなく、シャルロッテは意識を失った。





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