表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

抄・・・古来の伝承等を書き記した書物。


本作は若干堅めの文体で書かせて頂きました。

予めご了承下さい。

卯月、降り積もった雪は溶け、緩んだ気持ちを締め直すと新調したスニーカーにどことなく、違和感を感じた事だった。

バスの停留する二分前という、とても間に合いそうに無い時間に玄関を出る。ふわっとした寒さが、眉の濃い顔を刺した。


いつもであればそれは、高校へ行く時のルーティーンなのだが、今日に関しては、その限りでない。

鞄の中にあるのは教科書でなく小説だし、どうしたってそれは、勉強をする時の中身でない事は明白なものであった。


頭の中には既に、物語が広がっていた。

それは冒頭、必ず自身の身の上から始まる、ファンタジー。




読書が好きで、特に幼い頃なんかは文字を並べるのが大好きな少年だったのだが、どうも、私という人間は周りに馴染めない類いの、所謂『変人』だったと記憶している。

空想癖が酷くて、自己規制が利かなくて、大変手の掛ける子供だった事だろう。

身体的に、特に腕力が弱かった。有り得ないと思うだろうが、実際握力が一桁だった時期が長かった。


さてそんな、お世辞にも強い人とは言えぬ私が力を得たのは小学五年生、若干遅めの自我が芽生えた頃だった。


どうやらそれは調べてみると『夢遊病』とか言うらしいものの一種で、空想上の世界へと意識だけが旅をする・・・なんていう代物だというから驚きである。

私がしていた空想は大体、絵本や小説である様な世界。

魔法やら幻獣やらが未だ息づく、ファンタジーである。


それらを私は自由帳に書きなぐった。表やら絵やら、はたまた拙い文章だったりもしたが、兎に角書きなぐった。

そうしてそれを机の天板いっぱいに広げて、思いを馳せるのだ。




バスが揺れ、停留所に停まる。降りた先は市内随一、というより唯一のショッピングセンターだった。

ここには、結構大きめの書店がある。

それこそ遠出が出来ればもっと大きな書店へと行くのだが、あまりにもそこは遠い。インドア派学生にはそのモールが限界だった。

本屋だというのに煩いのがネックなのだが、数は流石に、中々多い。

フードコートが近くにあるせいで集中出来ない。

ああ、悲しい哉、意欲が失せた。

こうなるともう、私は何も買う事なく家へと引き返す。

駄目だ、静かでなければそこは、真に書店とは呼べない。


私はまたバスに乗り、市の端の方へと帰っていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ