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07 顔

 前話の最初の方を少し直しました。

 燃え盛る馬車を囲む男達を森の中から、しばらく観察してみた結果おおよその状況がわかった。

 どうやら男たちは、積み荷を奪うために馬車を襲撃したらしい。

 1人で移動していた商人を襲い物資と馬を調達しようとしたようだ。

 しかし、今回は商人に逃げられた上に、商品を積んだ馬車を魔法で燃やされたのだそうだ。

 

 なかなかに手練れの商人だったみたいだ。

 その場面を見てみたかったな。

 商人に感心していると、男たちの会話が聞こえてきた。


 「おい、これからどうするよ」

 「逃げた商人が全速力で馬を走らせたとして、町に着くまで1時間ぐらいだ」

 「衛兵に俺たちの事を話されて、手配される前に国境を越えちまおう」

 「商人一人襲っただけの奴らをわざわざ隣国まで指名手配しないだろうし」

 「仮に何か言われても、関係ないとしらを切ればいいさ」

 「あ~あ、ほとぼりが冷めるまでは普通に傭兵稼業か」


 話終わった男たちは森に隠してあった馬車に乗り、ルクセム王国との国境方面に去っていった。

 どうやら傭兵の仕事の合間に、盗賊もして金を稼いでいるらしい。

 ルクセム王国で会わないといいな。


 男たちのことはもういいとして、燃えている馬車に目を向ける。

 小さい馬車なのであまり積み込まれてなさそうだが、もしかしたら商品に服があるかもしれない。

 持ち主の商人も諦めてるだろうし、なんとか火を消して商品を取れないだろうか?


 馬車に近づいてみるが、やはり熱くて直接は取れそうにない。

 早くしないと燃え尽きてしまうので、何かないかと急いで辺りを見渡してみる。

 運が良いことに森の中に丁度よさそうな倒木があった。

 

 急いで駆け寄り、倒木を持ち上げる。

 普通なら持ち上げるのに、3人は必要そうな倒木も私なら一人でできる。

 持ち上げた倒木を燃えている馬車に向かって、力の限りおもいっきり投げる。

 倒木は燃えて脆くなった馬車に命中して破壊した。

 そしてあたりに馬車の破片と積み荷が辺りに降り注いだ。


 ほんとうは抱えて振り回したかったんだけど、思ったより重くてそこまでの余裕はなかった。

 そもそも魔法が使えたらこんな荒っぽいことをせずにすんだのだが、あいにく元ただの村娘にそんな能力は無い。

 家が裕福だったり魔力が多かったら学園で学べたんだけどな。


 まあ、どうにもならないことは置いといて、まだ燃えてる積み荷の消火をしよう。

 地面をころがしたり土をかけたりして、なんとか無事そうな積み荷の消火が終わった。

 そろそろ昼が近いので誰かが通る前に、積み荷を抱えて森の中に撤収する。

 


 ある程度街道から離れた森の中で、回収できた積み荷を地面におろす。

 なんとか無事そうな積み荷は3つだけだった。

 まず、1本の装飾のないシンプルなナイフと鞘のセット。

 普通のナイフより少し厚みがあり頑丈そうだ。

 

 続いて2つ目は小さな革の鞄だ。

 肩から掛けるタイプでそんなに物は入らないが、これで持ち運びが少し楽になる。


 最後に黄色いワンピースだ。

 少し焦げているが念願の服を手に入れることが出来たのでかなり嬉しい。

 これで蛮族から卒業できる。


 早速とばかりに黄色いワンピースを着る。

 下着がないため若干スースーするが、今までのほぼ全裸よりかなりましだ。

 あとは靴がほしいが、今の状況的に難しいだろう。

 服が手に入ったことが奇跡なのだ。 


 どうやらあの馬車には、日用品が主に積まれていたらしい。

 手に入った商品は村の人がよく買う、職人が片手間で作った安めの品だ。

 それに積み荷の量があまり無かったので、どこかの村で商売してきた帰りだったようだ。

 運のない商人の今後を祈っておくことにする。 


 さて、これで見た目は人間に見えるはずなので、堂々と街道を歩けるようになった。

 女が一人で荷物が少ないというところに、目をつぶればいたって普通の光景である。

 盗賊の類が襲ってきそうだが、よほどの数か強さがないと私の糧になるだけなので問題なし。

 


 鞄を提げてナイフを手に取り準備完了。

 そうだ、ナイフの刃を確認してなかった。

 ナイフを鞘から抜く。


 「えっ……なんで」


 普通なら新品のナイフの刃には私の顔が映っているはずだ。

 でも、そこに映っていたのは人間だったときの私の顔ではなく、もう見れなくなったはずの”姉”の顔だった。


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