02 人型
のしのし、森の中をゆっくり歩いていく。
あれから、しばらく考えた結果。
いろいろ悩んだところで、現状が変わるわけないので前向きになることにした。
適当に移動していたら、遠くに滝が見えたのでとりあえず向かってみる。
<愚かなる暴食>だって水は飲むはずだし。
なにより、滝があるということは当然川がある。
目が覚めたら昼ぐらいだったので、私を再現するのに時間がかかった様だが<愚かなる暴食>がそれほど遠くに移動したとは思えない。
だから、ここは村の近くの森であるはずだ。
川を下れば村があるので、様子を見ることができる。
村の事が気になってしかたないのだ。
問題はこの体が大きすぎて、隠れられないことだ。
人に見つかれば、間違いなく討伐対象だろう。
小さくできないだろうか?
少し開けたところに出たので、休憩がてら実験してみる。
まず試に躰から、余分な肉を切り離そうとしてみる。
ボトッ
簡単に切り離せた。
切り離した肉はピクピク動いていたが、しばらくすると動かなくなった。
躰に異常はなしなので、この調子でどんどん肉を切り離していく。
同時に躰を人型に近づける。
辺りは、大小様々な肉の塊だらけでになっていく。
自分でしたこととはいえ、かなり気持ち悪い光景である。
そして日が暮れ始めるころには、なんとか納得のいくものになった。
見た目は生前? の私そっくりである。
この躰は人の形をしているが、臓器はほとんどなく代わりに核が体内にある。
一応普通の村娘に見えるように、見えるところに魔物のパーツは付いてない。
ただ、全裸である。
誰もいないので見られる心配は無いが、年頃の乙女てしてはやっぱり恥ずかしい。
胸と腰の周りに<森の狼>の緑色の毛を再現して隠してみる。
蛮族みたいになったがまあいいだろう。
それと躰を造り変えているときに分かったが、一度吸収した生き物の情報は全て核に記憶されているようだ。
その情報をもとに学習し、躰を再現しているらしい。
この<愚かな悪魔>が今まで吸収した生き物は、<私>と<森の狼>に<毒蛇>それと<緑の子鬼>だった。
そして、新しい体の性能こんな感じだ。
<毒蛇>から毒の牙と軽い毒耐性。
<森の狼>から保護色の体毛と嗅覚。
<緑の子鬼>から筋肉。
もともと私が言葉をしゃべれなかったため、喉は一番近い<緑の子鬼>のもので代用した。
声以外はそこそこ満足できる結果だ。
それに私が人間だったからなのか、人型になると落ち着く気がする。
思ったより長い休憩になってしまったので、夕暮れ時を軽く走って行くとしばらくして滝にたどり着いた。
鼻が利くようになったので、水の匂いをすごい感じる。
今日は、ここで朝まで過すことにしようかな……ん?
森の中から何かの匂いがする。
臭いので、おそらく<緑の子鬼>だろう。
<緑の子鬼>がいると思われる茂みを見てみる。
ばれたと思ったのか、茂みから緑色をした人間の子供のような魔物が現れた。
やはり、<緑の子鬼>のようだ。
「ギャギィー」
体格の割に太くて筋肉質の腕を使い、棍棒を振り上げ奇声を上げながら突撃してくるので<森の狼>にしたように右腕を振るう。
ボキッ
痛っ!
腕が押し負けて折れ、そのまま棍棒が右肩にあたる。
腕と肩の骨が折れたみたいで、まともに右腕が動かない。
チャンスと思ったのか<緑の子鬼>がもう一度棍棒を振り上げるのが見える。
させるか!
左手で<緑の子鬼>を引き寄せ、首に毒の牙で噛み付く。
「ギャギッ!!」
<緑の子鬼>は悲鳴を上げたが、やはり力負けしているようで振りほどかれてしまった。
そのまま距離を取ると、少しして<緑の子鬼>が倒れた。
どうやら毒が効いたらしい。
<緑の子鬼>にとどめをさし、もう周囲になにもいないことを確かめる。
ふう、危なかった。
どうやら、小さくなったことで大幅に筋力が落ちたらしい。
考えてみれば当たり前である。
この躰は15歳の村娘だった、私の年相応の体格なのだ。
いくら筋肉は同じ<緑の子鬼>のものでも、腕の筋肉量が違う。
幸い怪我は徐々に治っているので問題なさそうだ。
しかし、これは考えて躰を造る必要があるようだ。
大きいと力が強いが、動きが遅いしかなり目立つので人がいる場所に行けない。
小さいと力は弱いが、動きが早くあまり目立たないので隠れて人がいる場所に行ける。
私の希望としては、やはり元の人間だった姿に近いの方が良い。
でも、それじゃあ<緑の子鬼>1匹に苦戦する。
どうしようか?
私は一晩中考え続けた。