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15 大森林②

 今回も遅くなってしまった。

 しかも短いです。

 複数の触手が生えた巨大な目玉としか表現できない魔物がそこに居た。

 大きさは触手を除いて牛ぐらいある。

 しかも、現在小さめの<戦猪オーク>を捕獲中ときた。

 

 触手に絡まれている<戦猪オーク>というのは、傍から見るとかなりアレな存在だ。

 本人? 本猪? は必死でそれどころでは無いだろうけど。


 目玉の方は確か<蠢く瞳(ゲイザー)>という魔物だと思う。

 ジメジメした森や洞窟に生息していて、その触手で獲物を絞め殺して捕食すると聞いたことがある。


 単純な強さは<戦猪オーク>より下だが頭上や物陰からの奇襲に長けており、一度捕まると大量の触手から逃れるのは難しく、大抵あの<戦猪オーク>の様にじわじわと絞め殺される。


 

 さすがの私でもアレには食欲が若干削がれる。

 <蠢く瞳(ゲイザー)>単体でも気持ち悪いのに、<戦猪オーク>のアレな姿付きだ。

 アレで喜ぶのは相当な変態だけだろう。


 おっ! とうとう<戦猪オーク>が力尽きたようで、グッタリとして動かなくなる。

 そろそろ頃合いの様だ。


 荷物を地面に置いてから手ごろな木の枝を捥いで、<蠢く瞳(ゲイザー)>の正面に移動する。

 <蠢く瞳(ゲイザー)>は私に気付いたようで、威嚇するように触手を動かす。

 

 私は構うことなく、そのまま助走をつけて枝を投擲する。

 枝は<蠢く瞳(ゲイザー)>の目玉を貫いて、捕らわれた<戦猪オーク>が地面に落下する。


 

 <蠢く瞳(ゲイザー)>の触手は厄介なので遠距離から攻撃したが、思ったよりきれいに決まった。

 <戦猪オーク>を捕まえるために触手の大部分を使用していたので、防御が間に合わなかったのだろう。


 ついでに絞め殺された<戦猪オーク>の肉も手に入ったので実に運が良い。

 荷物を拾い死体に近づき、<蠢く瞳(ゲイザー)>の触手を適当な大きさに切断する。



 さて、実食といきますかね。

 大きく広げた口の中に触手を放り込み咀嚼すると、かなり弾力のある歯ごたえが伝わってくる。

 見た目は気持ち悪いが意外と美味しい。


 あっという間に全ての触手を食べ終えたので、<蠢く瞳(ゲイザー)>はもう目玉しか残っていない。

 牛ぐらいある体のほとんどをしめる目玉は、刃を入れると色々流れ出しそうなので解体せずに丸呑みにすることにした。



 辺りに生き物の気配が無いのを確認して服を脱ぎ、大きな獲物を吸収するために考案した捕食形態に躰を変化させる。

 見た目は以前の肉塊状態とあまり変わらないが、この姿には大きな口と先ほど手に入れた触手しかない。

 


 眼の代わりに口がある<蠢く瞳(ゲイザー)>と言った姿だ。

 ほんとは触手じゃなくて手があったのだけど、触手こちらの方が便利そうなので急遽変更したのだ。

 

 触手で<蠢くゲイザー>の目玉を引き寄せて、口に放り込み咀嚼する。

 プルプルした食感がして、不思議な味が口いっぱいに広がる。

 とりわけ美味しい訳でも不味い訳でもなく、表現に困る味わいだ。

 

 一言で表すなら珍味だろう。

 それ以外に言いようがない。


 続いて<戦猪オーク>も丸ごと頬張る。

 こいつはそれなりに食べたので、吸収する必要はないが腹の足しにはなる。

 


 吸収しきるまでしばらくその場で過ごし、余分な肉を落として捕食形態から徐々に人型に戻る。

 体積を増やすのは簡単でも、増やした状態から戻る過程で余分な肉がどうしても出てしまう。

 

 人型になったら、さらに躰を変化させる。


 全身に<毒蛇バイパー>の鱗を生やし、その上から<毒百足(ポイズンセンチピード)>の甲殻の鎧を纏う。

 甲殻の下には<戦猪オーク>の脂肪を付けて、背中からは<蠢くゲイザー>の触手を二本出す。

 手足の先には<新緑熊(グリーンベア)>の鋭い爪があり、口の中には毒牙まである。


 まだまだ未完成だが、全力で戦うために考えた魔物形態だ。

 体を変化させると服が破けるので、着ることが出来ないのが気になるところだが……。


 未だに服を着ていないというのは落ち着かない。

 この森でそのあたりの羞恥心も克服できたらいいな。


 

 そして腹を満たした私は、拠点になりそうな場所を探すために探索を再開した。


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