13 揉め事の種
街道を進むこと2日半、ようやく<ウォーレル大森林>最寄りの街である<アズール>に着いた。
途中で馬を無くしたため、徒歩での移動となり予定より時間が掛かってしまった。
道中に出会った魔物はほとんどが<戦猪>だったので、美味しかった以外に特筆するところは無い。
やけに多かったのでそれなりの群れがあるかもしれないが、それは私にあまり関係のないことだ。
美味しいのでたまに狩るのは良いが、躰の強化が優先のため同じ魔物ばかり相手にしていられないしね。
既に日が暮れ始めたため門が閉まる前に、急いで手続きを済ませて街に入る。
ギルドカードがあるため町に入るのに、手続きが簡単でお金が要らないのは楽でいい。
身分は傭兵組合がある程度保障するし、お金は依頼料から少しずつ引かれて払われている。
傭兵はよく街を出入りするので、こうする方がお互いに楽なのだ。
街に入ると丁度夕飯時のため、いい匂いがそこかしこから漂っている。
さっき<戦猪>を1匹食べたばかりなので、まだお腹は空いていないがのんびりしていると、ついつい買い食いしてしまいそうだ。
誘惑を振り切るため、早足に傭兵組合に向かう。
門で場所を聴いたので、特に迷うこともなくたどり着いた。
傭兵組合は基本的に同じような造りをしているため分かり易い。
中に入るとほとんどの傭兵は、本日の打ち上げをしているようで、併設された酒場で騒いでいる。
とりあえずとっておいた<戦猪>の素材を売り、資金を得るため買取専用の窓口に向かう。
「すみません、素材の買取をしてほしいのですが」
「はい、こちらに売却したい素材をお出しください」
大きめのトレイが出てきたので、<戦猪>の牙と肉を置く。
今日の宿代ぐらいはほしいので、食べずに少し残していたものだ。
「<戦猪>の牙と肉ですね」
「全部で銅貨9枚になります」
「少し安くないですか?」
「実は……」
窓口の職員によると<戦猪>はそこそこ強いがDランク傭兵が3人もいれば倒せるし、ここ最近討伐数が増えており値下がりしているらしいのだ。
買取を済ませた後、依頼がある掲示板を確認する。
今受けられるので魔物の討伐系は……<緑の子鬼>と<森の狼>のみか……ほとんどは人間同士の争いの依頼で、護衛などの依頼はDランクからだ。
しかたない、<ウォーレル大森林>に籠って適当に討伐依頼をこなすかな。
幸い常時ある間引きの依頼の様なので、多少安くなるが今回の<戦猪>と違い達成扱いにしてくれるらしいしね。
今日はもう門が閉まっているため、宿で休んで朝一で出発とするか。
傭兵組合を出ようとすると、後ろから男に声をかけられた。
「おう姉ちゃん、ちょいと俺に付き合えよ」
何処にでもいるガラの悪い奴にからまれたようだ。
周りの傭兵から同情的な視線が向けられる。
はぁ~、最初の傭兵組合じゃあ面倒事が起きなかったのに……周りも見てないで助けなさいよ男でしょ。
「お断りします。 他を当たってください」
背を向け歩き出そうとすると、男の手が私の肩を掴む。
「俺はCランクの傭兵だぞ、あんたDかEランクだろう、さっき低級の掲示板の前にいたからな」
「格上には逆らわない方が身のためだぜ」
本当にめんどくさい、生物としちゃあ私の方が格上だよクソエロオヤジ。
「触らないでください」
男の手を掴み、捻りあげる。
「痛たたた、放せ小娘!」
男が拳を振り上げると同時に手を放し、足払いを掛ける。
そして倒れた男の腹を軽く蹴る。
「ガッ、この……小娘が……」
腹を抱えて倒れ伏す男を放置して、私は今夜の宿を確保するため傭兵組合を後にした。
まだまだ序盤なのに、つい新作を書いてしまったので、次の投稿が遅れるかもしれません。
新作書きたくなる病恐るべし。