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09 奴隷商

お待たせしました。

 ゴトゴトと音を立てて、両手を縄で縛られた私と3人の女性を乗せた馬車が街道を進んで行く。

 私を捕まえるように命じた男はルクセム王国の奴隷商らしく、カルノート公国に滞在中にアルス聖国の襲撃が起きたため、帰国するついでに奴隷を調達しているらしい。

 もちろん合法の借金奴隷や犯罪奴隷ではなく、突然の襲撃で衛兵などが混乱している隙に、村人などを捕まえて奴隷にするのである。


 水の補給ために湖に来たら、私を見つけたらしい。

 大して強くなさそうな護衛の男達と奴隷商なので、あの場で殺すことも逃げることも簡単だったが、あえて捕まることにした。

 初めは身分証もお金もないので、<ウォーレル大森林>からルクセム王国に入ろうと思っていたが、こいつらを利用すれば簡単に国境を越えられる。

 いくら<ウォーレル大森林>から抜けられるといっても、警備がゼロというわけではないので、国境でごたごたする可能性を無くせるならその方が良い。


 捕まった私は鞄とナイフを取り上げられ、縛られて鍵付きの頑丈そうな馬車に乗せられた。

 奴隷商が言うには私は顔が良いから、発育が若干足りなくても高く売れるらしい……。

 胸が小さくて悪かったな、私だって以前は巨乳になりたかったよ。

 今はどんな体型も自由自在だけど、慣れた体型にしてるだけだからね。


 ちなみに奴隷商のことを知っている理由は、こいつらが「お前たちはもう商品だ、人間ではない」などと言いながら、ベラベラ喋ったからである。

 立派な後ろ盾があるらしいが、すごく三流の臭いがする。


 こんな拘束なんて簡単に解けるので、私にはかなり滑稽に見えたが、女性達は違ったらしい。

 今もこの世の終わりのような顔をして、馬車の中で座り込んでいる。

 後で逃がしてあげるから、今は我慢してね。

 

 奴隷商は御者席に乗り、護衛は二人が馬で馬車に並走して、一人が後ろにいる。

 そう、護衛は三人いたのだ。

 考えてみれば見張りもなく、馬車を離れるはずもない。


 まあ、それでもこいつらを殺すことが楽なことに変わりはない。

 ルクセム王国までのんびりと、馬車の旅を満喫しましょうかね。






 私達を乗せた馬車は二日ほどかけて、ルクセム王国との国境にたどり着いた。

 道中これと言って、何かが起こるでもなく至って平和だった。

 奴隷商は商品に傷がつくからと、護衛達に手を出させなかったし、盗賊や魔物の襲撃もなかった。

 

 私達の販売先は決まっているらしく、わりかし丁寧に運ばれている。

 確かいたいけな村娘をいたぶるのが、とても好きなお得意様だとか言っていた。

 まあ、私がいるからこいつらの予定どうりにはならないけどね。

 ご愁傷様と言っておこう。


 国境の関所は、奴隷商の言うとおり簡単に抜ける事が出来た。

 軽く話したのちお金の音がしたので、賄賂と後ろ盾を使ったのだろう。

 警備の兵は馬車の中を確認すらしなかったよ。

 いくら友好国との国境で、武勲がたてられずやる気がないとはいえ、聖国に襲撃されているのだからもう少し真面目にしてほしい。

 

 こうして私たちはルクセム王国に入った。

 もう少ししたら日が暮れるので、適当な場所で野営の準備をするだろう。

 頃合いを見計らって、こいつらとおさらばと行きますか。


 

 ほどなく野営が出来そうな場所に着き、護衛が2人でテントを張りだす。

 奴隷商は馬の世話と、夕食の準備をしている。

 残った護衛は、私達を見張ながら周囲の警戒をしている。

 私たちは鍵を掛けられた馬車の中で、大人しく座っている状態だ。

 もういいだろう、行動開始だ。

 

 「お兄さん、トイレに行きたいです」

 「もう少しで野営の準備が終わる」

 「それまで我慢しろ」

 「もう我慢できないです」

 「チッ、しかたない」

 「この桶にし……ろ?」


 鍵を開けて馬車に桶を放り込もうとした男の首を掴み、勢いよく首の骨をへし折る。

 縄は手首から出した牙で切断ずみなのだ。

 倒れて来る男の死体を受け止め、音がしないようにそっと降ろし、女たちに注意をする。


 「逃げたいなら大人しくしてて」

 「ハ、ハイ」


 馬車から出る前に、殺した男の剣を抜き取る。

 外の奴らはまだ気づいていないようなので、馬車から出ると同時に護衛の二人目掛け走り出す。


 「ん? おい、おま……」

 「どうし……」


 こちらに気付いた二人が、言葉を言い切る前に剣で首を斬り裂く。

 暇だったので、2日間の間に躰を調整した甲斐があり、以前より力強く滑らかに動いた。

 筋肉の配置や量など、色々弄ってみたのだ。

 

 「何事だ!」

 「お前なにして……ゴフッ」


 やっと事態に気付いた奴隷商に、剣を投げると軽い放物線を描いて飛んでいき、よく肥えたお腹に刺さった。

 倒れた奴隷商は醜いカエル顔を歪めて、ピクピク痙攣している。


 「お、お前……こんなことして……ただで済むと」

 「知るか、死ね」


 トドメをさし、金目の物をあさる。

 なんと金貨が2枚と、銀貨が6枚、銅貨が10枚もあった。

 これだけで4人家族が、2~3か月生活できる金額である。

 

 次に護衛達の懐もあさる。

 こちらは少なめで、3人の合計で銀貨4枚、銅貨14枚、鉄貨26枚だった。

 ついでに武器と防具もいただいて行こう。

 肉は女たちの目があるので、食べることが出来ないのが”残念”だ。


 他にも野営の道具など使えそうな物を回収して、女たちの元に戻ると信じられないものを見たような顔をしていた。

 とりあえず、女達の縄を解いて一番の年長者に声を掛ける。


 「もう大丈夫だよ」

 「ハ、ハイ……あの……あなたは傭兵か兵士だったのですか?」

 「似たよなものかな」

 「とりあえず、ここから離れましょう」

 「わかりました」

 


 女達と戦利品を馬車に乗せて、ゆっくりと街道を進んで行く。

 さて、上手くルクセム王国に入れたし、奴隷商達も始末した。

 お金もたっぷり頂いたし、武器と防具も手に入ったのは良いんだけど、女達こいつらどうしようかな?

 

 魔物でも敵でもないので食べたくはないし、同郷の奴を見捨てるのは心苦しい。

 かと言って、ずっと連れて行くのは論外だ、私は一人の方が都合がいい。

 とりあえず街に送って、適当な理由で自然に別れるのがいいかな。


 ハァ~、早く街に着かないかな。

この世界のお金は、白金貨、金貨、銀貨、銅貨、鉄貨としています。

価格は順番に左から、100万円、10万円、1万円、1000円、100円ぐらいです。

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