第三話:艦隊司令部
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後方部隊の旗艦である、戦艦『たかね』の艦橋は三層に分かれている。
第一層は司令部付士官および下士官が各部門ごとに詰めている。あたしがいるところね。
第二層は艦レベルの首脳陣が占めている。艦長に航海長、船務長に砲術長など。
そして、司令官が艦橋全体を見渡せるようにとの配慮からバルコニー状に突き出ているのが第三層、マナ少佐のいる艦隊司令部なのだ。
その、第三層までのやたら長い階段を登り切り、やっとの思いで最上階に辿り着いた。
まあ、ちゃんとエレベーターもあるし、使いたい気持ちはやまやまなんだけれど、戦闘配備中は使っちゃあいけない規則なのね。被弾した時の場合とか、色々不都合な事例が考察されるからなんだろうけど……。
火事や災害の時の使用禁止と考えれば、まあ納得いくかも。
とにかく、あたしは報告するために息を整え、びしっと四十五度の角度で宇宙軍式の敬礼をやってのけた。
「トウノ少尉、オレミン情報主席参謀にRS-7宙域に関する亜高速航行可能な地点の情報をお持ちしました」
どうやら作戦会議中だったらしく、マナ少佐につられるように司令部の首脳陣も一斉にあたしのほうを向いた。
……偉いひとたちが集まっている場所って空気の糸がピンッと張ったような緊張感あってどうも苦手なのね。
う、何だか緊張してきたぞ……。
「あら、意外と早かったわね。今、丁度作戦部から提出された撤退案を検討してたところなんだけど……情報部としてはどう?」
「はい、交戦宙域の範囲内ですが地点7-0-3と3-3-2。RS-9宙域までの敵軍後方地点8-4-6の三か所です」
「地点8-4-6も!? やるじゃない」
賞賛をあげたマナ少佐の言葉と同時に、
「稚拙な!」
と、卑下の言葉が重なった。