第二十二話:歓迎会
ご無沙汰しております。
放置状態だった拙作に評価ポイント頂き、大変感激しております。
ありがとうございました。
最後まできっちり完結したいと思いますので、今後とも見守っていただければ嬉しいです。
※※ 21 ※※
「わたしは作戦参謀を務めます、ニジョウ・アヤノ。あなた、RS-7宙域の英雄とか言われてるらしいけど、ここでは関係ないわ。まあ、わたしの足を引っ張らないよう気を付けてちょうだい」
今のあたしは、よほど無愛想に違いない。憮然と立つあたしの返答を待つことなく、立ち上がり颯爽と出て行ってしまった。その後を追うように、すれ違いざま、「あたしは後方参謀のリゼット・シードル。……まあ、宜しく」と言って去っていく。
結局、あたしとルイちゃんが取り残された。
「あはは。相変わらずのお二人さんだねェ~」
バツの悪い表情で、乾いた笑みを零すルイちゃん。あの二人、ルイちゃんに対しても同じ態度なのだろうか? 少なくともルイちゃん本人は気にしてない様子だ。
「とりあえず、サユリちゃんの荷物置いてさ、出かけようか? その前にちょっと準備してくるから待ってて」
そして、ルイちゃんは部屋から出て行った。本当に、この場に取り残されたあたしは、一人無駄な疲労感でぐったり肩を落とした。
だいたい五分後、白地のジャケットに同じく白地のタイトスカート、紺のニーソックスは少々幼さが目立つが、右袖の山形善行章。その下の黒地に横金線三本、錨と柏葉の意匠である階級章が凛々しさを醸し出す、所謂下士官制服で現れた。
「ルイちゃん、わざわざ軍服に着替えたの? これから行くとこって司令本部?」
「まあまあ、ここはあたくしにお任せあれって、ね」
嬉々として歩くルイちゃんに追従しながら、到着した場所は、なんてことない普通のチェーン居酒屋だった。
「……ここに入るの? だったら、むしろ私服の方が良かったんじゃ?」
ちなみに、あたしは大学時代、合コンや飲み会には何故かお誘いが掛からず、今この瞬間が居酒屋デビューである。まあ、お酒はそれなりに嗜んでるが、全て宅呑みだ。
「それはね、あたしたちの相貌よ。だって見た目思いっきり未成年じゃん。軍服の理由も入ればわかるわ」
ルイちゃんは引き戸を開けて軽やかに入っていく。奥から元気いっぱいの「いらっしゃいませー」が響いた。そして店員さんが現れると、あたしたちを見て、ぎょっとする。ルイちゃんは慣れているのだろう、軍籍証明証を提示する。店員が年齢を確認すると頷き、今度はあたしを見た。
「ほら、サユリちゃんも」
「あ、そうか」
あたしも軍籍証明証を提示した。年齢を確認すると店員は、
「二名様ァ、ご案内ィー!」
と、奥に向かって叫ぶ。
テーブルに誘導されたあたしたちが座ると、ルイちゃんは「とりあえず、生ふたつ」と注文していた。
座って、あたしは、おしぼりで手を拭きながら
「なるほど、年齢確認ね……。だったら軍籍証明証だけで良くない?」
「サユリちゃん、合法ロリって知ってる?」
ルイちゃんが、急に変なことを言う。あたしは頬と瞼を赤らめ狼狽する。その態度を見たルイちゃんがくすりと笑ったとき、
「よー、お嬢ちゃんたち。二人で呑んでるの? お兄ちゃんたちと一緒に楽しもうよォ」
「そうそう、こんなちっちゃくて可愛い子たち、ほっとけないよなァ? 俺たちも二人で丁度いいじゃん」
二人の男が声を掛けてきた。そして卑猥な目線であたしたちを凝視した途端、二人の男は直立不動になって敬礼する。
「失礼しましたァッ!」
綺麗に踵を返し、去っていく。去り際の「おい、将校ナンパしてどうするんだよ? しかも参謀飾緒吊ってたぜ? あれ、絶対やべーよォ」「お前こそ、もう一人の子だって上等兵曹だぜ? ちゃんと確認してから声掛けろよォ」と囁きが漏れまくっていた。
あたしは椿事に呆気に取られ、ルイちゃんは片目を瞑る。
「ね? これが軍服の理由。一般人は怖がって声掛けてこないし、下士官や士官はナンパなんて、風聞に関わるから、基地外ではあまりやらないわね。やるとしたら、さっきの奴らみたく兵卒よ」
「はあ……」
あたしは、素直に驚嘆したところで、店員は生ビールをジョッキで二杯持ってきた。後は適当に食べ物を注文して、ルイちゃんがジョッキを上げる。あたしも同様、ルイちゃんのそれと突き合わせる。カチンと軽やかな、小気味良い音を聞く。
「じゃあ、サユリちゃん。第九独立分遣艦隊へようこそォ! 歓迎するわ」
「ありがとう、ルイちゃん」
あたしは、よく冷えた琥珀色の液体を飲み、久々に爽快な気分を味わった。
実際、海自の方々が軍服のまま、居酒屋で飲む姿は見ませんね。
すいません、ここはフィクションだと思ってください。
更にいうと、下士官以下は基本、基地内の官舎なので、基本基地外に出る時は厳しい規則があるようです。
今後も、色々と軍隊生活らしからぬ部分もありますが、ご容赦願います。




