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殲滅のソティス~新米の宇宙艦隊参謀は戦局不利な最前線でいつも大変~  作者: 武田 信頼
SECTION:2 『へいわ』に捧げる戦争神話
22/26

第二十話:艦隊幕僚



    

              ※※ 20 ※※




   「ただいまー」


 男は軽やかな声で帰宅を告げると、あたしの方へ振り向き手招きをした。


   「司令部に用があるんでしょ。入りなよ」


 ショックなあまり、硬直(かたま)ってしまったまま、男の無邪気な笑顔に(さそ)われて、ふらふらっと中へ入る。


 すると、奥から仔猫のような、ちまっとした女の子が現れたんだ。


   「提督ぅ~、遅いよぅ……。ルイ、三十分も待ったんだよォ」


   「ごめん、ごめん」


 女の子は、男の腕に(から)みつき、男は、はにかんで頭を()いている。


 見た感じ、仲良し親子みたいで微笑(ほほえ)ましく思えるのだが、今のあたしは愕然(がくぜん)としていた。



   ……ええ、と。今、この子、『提督』って言わなかった?


   「はれぇ~、このお姉さん、お客さん?」


 その間延(まの)びな声で、ハッと我に返る。


 あたしは、今までの悪夢のような出来事を払拭(ふっしょく)するかのように、びしっと敬礼をして配属の報告をした。


  「外周方面軍、第九独立分遣艦隊情報参謀、および艦隊司令官副官を拝命しました、トウノ・サユリ中尉であります」



  「報告、ご苦労様。僕が司令官のクサカ・ショウゴだ。で……」


 提督は密着している女の子の頭をなでる。


  「あたしはぁ、クサカ・ルイっていいま~す。司令官付従卒です。階級は上等兵曹でぇ~す」


 彼女は、あたしの腕を取って、ぶんぶんっと振り回し、ニパっとくったくない笑顔を見せる。



  「こう見えても、一応二十歳(はたち)なんですよォ」


 見た目は十二歳前後の少女にしか見えない。


  ……と、ということは、まさか?


  言葉を探しながら、見つからず、直言する。



  「ええと……グリューンエルデの方ですか?」


 二人の顔が瞬間、強張(こわば)る。が、あたしも同類なのだ。



  「すいません。あたしもグリューンエルデ出身です。見た目はよく中学生と間違われますが、新東大文科Ⅲ類出身で動員将校の二十二歳です」 


 あたしは、ははは……と作り笑いをした。  

 

 

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