第十四話:昇進
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ここは後方作戦本部長室。
アンティークに施された内装と、ふかふかの赤い絨毯に重々しさを感じながら、あたしは室内へと入る。
本部長デスクの隣のソファーには、外周方面軍司令官クルスヤマ大将閣下と、もうひとりキャリアウーマンっぽい女性が座っていた。
「トウノ少尉、出頭しました」
ビシッと踵を鳴らして敬礼をする。後方作戦本部長である、ナガス大将閣下は大きく頷いた。
「うむ、楽にしてくれ給え。まずはこちらのご両人を紹介しよう。少尉はこちらの方は存じてるだろうが、外周方面軍司令官クルスヤマ提督だ」
そう紹介された、クルスヤマ閣下は、あたしを一瞥した後、重たい口を開いた。
「私がクルスヤマだ。少尉については情報部より聞いておる。かなり優秀らしいな……。
特に今回の見事な撤退作戦は軍上層部での評価も高く中尉に昇進を決定し、さらに主上のおぼえもめでたく、異例の勲四等瑞穂章を下賜なされた。今後も国のため、より貢献してもらいたい」
クルスヤマ閣下は、あたしに階級章の入った桐箱と、菊花の御紋入りの漆箱を手渡した。
「わたしも中尉には期待しておる。それからもう一人、こちらの方はイリア・エゼリン女史で現在、宇宙生態学の研究をなされてる」
本部長閣下の紹介に併せて、女史は赤茶けた、少し癖毛のある髪を揺らしながら微笑み、あたしに手を差し伸べる。
慌てて、かさばる二つの箱を脇に抱え込み、彼女の細く白い指に、あたしの指を重ねた。
「あら、可愛い手だこと。わたくしも『RS-7宙域の英雄』にお会いできて光栄ですわ、トウノ中尉。
ふふふ……。こうしてみると雰囲気がお父上によく似ていて懐かしくなりますわね」
「え、小官の父をご存じなんですか?」
「トウノ博士とはグリューン・エルデの研究所で進めてた、あるプロジェクトで同じチームだったの。もっとも博士の専門は宇宙考古学なので、あまりお話しする機会を得られなかったけどね」
イリアさんは神妙に語る。
「その後、博士はやはり……」
あたしは、ゆっくりとイリアさんに絡めた手を降ろす。
「……父はグリューン・エルデが陥落した時、死んだと聞いてます」
「ごめんなさいね……」
イリアさんのワインパープルの瞳が申し訳なさそうに悲しく光彩を放つ。それに対し、あたしは少し大袈裟に明るく振る舞った。
「いえ、いいんです。それに父は気難しい性格のせいか、あまり知人がいなかったので、そう懐かしがって頂くと嬉しく思います」
「中尉はお強いのね」
イリアさんの顔に安堵の笑みが漏れた。




