第一話
初投稿?ですね。感想お待ちしております。それではどうぞ。
2053年 5月23日 PM9:41
太平洋 洋上プラント 『ニューワールド・ウィッチクラフト』
「リーダー!今までお世話になりました!!」
そう言って、標準装備であるアサルトライフル『closed2-DC』を乱射し敵陣に突っ込んで行く俺の部下。その勇姿を俺は遠くでカバー越しからしか見る事しかできない。
「俺達はアンタだからこそ躊躇いもなく命を賭けられるんだ!それを忘れないでください!」
彼は今年で十四歳になるのだったか...そんな彼でさえも救いようの無い俺のためにと、リーダーのためにと言って死んでいく。
「この先にいる裏切り者を絶対に断罪してください!それが私達『スレイブ・オブ・ベンジェンス』の願いだ!」
もう、やめてくれ。その言葉が言いたくても俺の口からは絶対に出してはいけないという事は分かっている。
そして、俺は部下達の屍を超えてとうとう裏切り者であり俺の親友でもあった男の前に立った。
黒い髪に濁りきった青い瞳。前にあった時とほとんど変わらぬ容姿で安心した。
「やあ、僕の親友。いや、今は復讐者と名乗っているのだったかな?フフ、僕が君にあげた初めてのプレゼントの名前を偽名にするなんて、どんな皮肉だい?」
と、座っていた椅子から立ち上がりながら、昔の様な親友同士であった時の喋り方で話し掛けてくる、憎き親友
「まあ、そんな事はいいんだ。それで?僕に何の用かな?」
と、心底面白そうに問うてくる。
「ふん、分かっている事を聞いてくるところは相変わらずだな。」
そう言って目の前に立つ裏切り者に向けて、愛用のハンドガン『Sylvester-3PG C』を構える。
これは、俺とコーディの始まりと言ってもいいモノだ。
「おお!それは僕が上げたプレゼントじゃないか!そんなに大切にしてくれていたんだね!?嬉しいよ!」
と、手を大きく上げて仰々しくそう語り掛けてくる。そんな事は微塵も思っていないくせにな。
そんな時、俺の脳裏に懐かしい光景が浮かび上がってくる。
「ガルシア!見てよこれ!?」
と、心底嬉しそうな顔をしたまだ幼いコーディ
「何だ?また面倒事か?俺のバースデイにまで面倒事を持ち込むなよコーディ。」
と、面倒くさそうにしながらも嬉しそうな雰囲気を漂わせる、これまた幼い頃の俺。
「違うよ!ほらこれ!君への誕生日プレゼントだ!」
そう言って俺に箱を押し付けてくる。
「何?お前が俺に誕生日プレゼントだと?また、面倒事の予感が...」
と言いつつも、その顔はいつもの無表情が少し緩んでいた。
あの裏切りの日から毎日見る様になった夢だ。思えばあの頃は三人で過ごす毎日が楽しかった。
そんなどうでもいいことを頭を振ることで忘れ、構えを低くしてコーディへ向けて走り出す。
「『加速せよ』、『加速せよ』「『破壊せよ』」っ!?『反射せよ』!」
魔術によって加速している最中に、コーディからの破壊の魔術による邪魔が入る。
それを回避するために、自身の身体の目の前に反射の魔術によって膜を形成。その膜にぶつかることで進路を右に変更し回避する。
「お前は破壊の魔術なんて使えたのか?初めて知ったぞ、そんな事」
と、かなり驚いているを装って話し掛ける。
...これで、他に使える魔術を知れたら御の字。知れなくても別に構わないが
「ふふ〜ん!凄いでしょ?君の元を離れた後も僕は力を磨き続けたんだ!今までの僕とは一味も二味も違うよ!」
駄目...か。まあ、元々あまり期待していなかったから別に構わないがな。
「さあ!もっとだ!失った君の新たな輝きを見せてくれ!」
と、言ってくる。それに対して俺は
「言われなくとも、そのつもりだ!」
と、銃を構えてそう叫んだ。
これは俺、ガルシア・アルドリッジの喪失の物語。そして、運命へ抗う俺を嘲笑う物語である。
2026年 8月10日 AM11:32
アメリカ フロリダ州 とある公園
暑い。もうそれだけしか頭に浮かばない
自己紹介を忘れていたが、俺はガルシア。『ガルシア・アルドリッジ』、十一歳
「そんな所で何をしている?ガルシア?」
「そんな所で座り込んでいないでこっちに来なよ〜!」
と、向こうから俺の事を呼びかけてくる、いつも無表情のアラーナとフレンドリーだと評判なコーディ。
アラーナは白髪に金色の眼。顔はかなり整っている方である。コーディは黒髪に青い瞳で、これまた整った容姿をしている。
俺か?二人と並ぶと二人の容姿がより際立つが?
「あーはいはい、わかったよ今行く!」
そして、面倒臭がりの俺。この一見合わなさそうな凸凹トリオはその実、かなり相性が良かった。
「それで?俺を探してたって事は、依頼があったんだろ?」
と、殆ど確認であるが問いかける。
依頼というのは...いや、まずはこの世界の常識について説明しようか。
この世には、大きく分けて三つの国がある。
まず、俺達が住んでいる『アメリカ共和国』。次に『皇国』。これは、前は日本と呼ばれる国であったらしいが、第三次世界大戦の英雄『和平恭三』の力により、アジア全域とアフリカ全域を武力によって支配。その後、皇国と名乗り今に至る。そして、最後に『ナイトメア・ウィッチクラフト』。これは、全ての国と敵対していると言っても過言ではない国である。だが、この国の情報はほとんど無い。
まあ、以上三つの国からなるこの世界には、昔からは考えられなかったとまで言われる魔術によって成り立っている。
そして、その魔術を使う傭兵の事を一括りに『BUMP』と呼ぶ。要するにそれが俺達である。
と、世界常識の説明は置いておいて、話に戻ろう。
依頼というのは、俺達『BUMP』に対して国や個人から要請されるモノであり、その内容は多岐に渡る。人を殺す事もあれば、一つの都市を攻め滅ぼすなど殆どは暴力に関係する依頼ばかりではあるが、もちろん安全な任務もある。まあ、俺達はそんな依頼は全く受けないから説明する気は無いがな。
「依頼主は皇国の執政。」
皇国...か俺としてはあまり関わりたくない国なんだがな。そうも言ってられないか。
「今回の依頼は、過激派宗教組織『エイブラムスの子供たち』が管理している教会のシスター。」
と、その対象であろう人物の写った写真を指さしながら今回の依頼の説明をしてくるアラーナ。
俺はそれを聞いて気になった事があったので聞いてみることにした。
「シスター?何故?」
それを聞いたコーディは
「ああ、なんでシスターを狙うかって事?だってこのシスターは戦教女だし。」
と、補足してくる。
「戦教女?宗教団体による遺伝子改造によって造られたとかいう何世代も前の女兵士か?」
と、自分の認識と相違わないか確認のために聞いておく。
「ああ、その解釈であっているよ。彼女達相手に魔術無しに戦えば苦戦は免れないだろうね。でも、僕達には『千術』のアラーナや『消えぬ炎』と呼ばれた君がいるじゃないか。」
と、俺とアラーナの肩に手を置いて自分の事のように誇らしげに二つ名を言ってくる。だが、訂正だ。
「それはお前もだろう『死神』コーディ。」
と、彼は嫌っているが実力の裏付けとも言える二つ名を言ってやる
「やめてくれよガルシア。僕はその二つ名が嫌いなんだ。」
それを聞いたコーディはさっきまでの陽気な雰囲気とは一転。苦虫を噛み潰したような顔でかなり嫌そうにそう言ってくる。
「わかったわかった。悪かったよ。」
そう、謝るとコーディは
「うんうん!分かってくれれば良いんだよ。それじゃあ今日の夜五時にここに集合!任務開始は六時からね。作戦はいつも通りで良いでしょ?それじゃあまたね。」
そう早口に言って締めくくると、魔術によって黒い霧となってコーディはどこかへ行ってしまった。
「アラーナもまた後でな。」
と、後ろを振り返って言うが、もう既にそこにはアラーナはいなかった。
2010年 8月10日 PM5:01
アメリカ フロリダ州 とある公園
俺は、時間通りにコーディ達が待つであろう公園に来ていた。
「お!来たみたいだね。」
と、コーディが俺が公園の敷地に入るのを確認するとそう話し掛けてくる。
「ああ、それじゃあ任務の確認を頼むよアラーナ。」
と、コーディの後ろでつまらなそうにしているアラーナに頼む。
「そう、分かった。今回の任務は今朝も言った通り、この戦教女の始末。方法は問わないそう。ターゲットのいる教会には五歳未満の子供達が沢山いるそう。特筆すべき事はそれぐらい。」
と、いつも通りの無表情で依頼の確認を行うアラーナ。...少しは表情を出せばいいのにな。そう、思っているとアラーナがこちらを無表情で見詰めてきた。
「私の表情の事は放っておいて。」
何故考えている事が分かったんだ?
「さて、それじゃあ行くとするかな。と、その前に『確認せよ』」
そう言って、装備している武器と自分の身体の状態を確認する為に体中を魔術によって調べる。
「『確認せよ』まで使えるようになったんだね?前までの炎系統以外の魔術が一切使えなかった君とは思えない進歩だよ。」
と、昔の俺の様子を思い出すかのように空を見上げながらそう言ってくる。
そんなコーディを直視するのが恥ずかしくなった俺はコーディから顔を逸らしつつ
「ああ、本当にな。それもこれもお前のお陰だよコーディ。」
と、素直にコーディへの感謝を述べる。
「BL?気持ち悪い...」
それを見ていたアラーナが爆弾発言
「ぇええええ!?いやいや!僕とガルシアはそんな関係じゃないよ!?」
おい、慌てるなよコーディ。アラーナが調子に乗ってもっとからかってくるぞ?
「はあ、そういうのはやめてくれアラーナ。俺とコーディは別にそういう関係じゃない。」
と、弁明する。それを聞いたアラーナはいつにもましてつまらなそうな顔をしながら
「ふーん、そうなんだー」
と、棒読み。...少しイラッとした俺は悪くないと思いたい。
「まあ、そんな事は置いといて。」
そして、いつの間にか復活を果たしたコーディが俺とアラーナの間に入ってくる。
だが、そんなコーディにアラーナから
「ホモ」
と、また疑り深い視線でそういう。ああ、やっぱり復活していなかったな。コーディが崩れ落ちたぞ。もう、やめてやれアラーナ
「それじゃあ私はもう行く。索敵は任せて」
そう言って、一瞬で目の前から消えていったアラーナ。無詠唱の待機時間無しで転移魔術とは、これが皇国のラノベ?とやらで言うチートとか言うものなのだな。
2010年 8月10日 PM6:00
アメリカ フロリダ州 教会
俺達は任務地に時間通りに来ていた。俺達の服装は、身軽さ重視の軽装にそれぞれ少しのアレンジを加えた戦闘服。アラーナはその上から黒い外套を纏っていた。
「それじゃあ、索敵は私に任せて頑張って。成功以外は受け付けないから。」
そう、言ってくるアラーナ。
「ああ、分かってる。索敵、任せたぞ?」
と、アラーナに再度頼む。別にアラーナの実力を疑っている訳では無い。彼女は世界中を探しても数人と居ない程の実力者だ。しかもまだ十一歳。これが俗に言う化け物という奴なんだろうな。
「よし、それじゃあ行くぞ。任務開始!」
そう、トランシーバーの電源を入れて作戦開始の合図をする。
『了解!』
と、トランシーバーの向こうからコーディの声が聞こえてきた。
『喰らえ!『爆発せよ』』
と、コーディお得意の爆発魔術が発動されると同時に、目の前の教会の大きな扉が大きな音を立てて爆発する。
それと同時に、ホルスターから最新鋭ハンドガンの『Carnege-type3』を引き抜き煙で悪い視界の中、教会の中へ走り込む。
中に入り込むと同時に、長椅子の裏に素早く隠れる。それと並行して無詠唱で俺の得意魔術である『透視せよ』
を発動する。
「こちら、ラビリンス1。ターゲットは一階にはいない模様。ラビリンス3、索敵情報を求む。アウト」
と、コードネームを使いアラーナへ呼びかける。一応説明しておくが、俺がラビリンス1でコーディがラビリンス2。そして最後にアラーナがラビリンス3である。
『こちら、アラーナ。索敵情報を端末へ送信した。アウト』
おい!本名を出すなよ!...アラーナはこういう奴だったな
「了解。今確認した。感謝する。アウト」
そして、端末のデータを基にこの教会の地下室へと向かう。
そんな時、胸ポケットに入れたトランシーバーに着信が。
『こちらラビリンス2。ターゲットを除く全ての敵性生命体を無力化。直ちに、ラビリンス1の元へと向かう。』
コーディからであった。コーディと合流するまでは動かない方がいいかも知れないな。
「また会ったね、ガルシア。」
と、向こうから小走りにコーディが向かってくる
「全く、お前らは名前を隠す気は無いのか?」
と、俺は若干呆れながら返答する
「よし、3、2、1で行くよ?」
と、こちらの苦情を無視して確認を取ってくる。まあ、良いか
「OKだ。行くぞ?」
「「3」」
銃を構えて地下室への扉へ向ける。
「「2」」
二人共、足を扉にかける
「「1!」」
その最後のカウントと共に扉を思いっきり蹴破る。幸い木製であったためか、あまり力を込めずに突破できた。これが、一発で開けられなかった場合、かなり不味い事態に陥ることも割とあるからな。
そして、そのまま小走りに階段を駆け下りる。
『ダメ!そこから退いて!』
だが、次の瞬間トランシーバーからアラーナの悲鳴じみた注意が
しかし、遅かった。その声が聞こえると同時に、隣を走っていたコーディが横から飛び出てきた黒いナニカに吹き飛ばされる。
「チッ!コーディ!」
かなりの大声でコーディに呼び掛け、安否を確認する。
「あ、ああ!大丈夫だ!でも、立ち止まらない方が良い!任務の詳細よりも戦教女の数が多いぞ!」
と、コーディから大声の返答が。
「何体だ!?」
その、あまりにも悪い返答に気が動転した俺は、柄になく大声を出してしまった。
だが、それ程までに悪い状況であった。
「一、二、三体!」
三体...か。少しばかりきついな。いや、この程度の困難なら何度だって潜り抜けて来たんだ。今回だって大丈夫だ。
「了解!俺が三体全てを相手取る!」
と、情報によれば一体でも苦戦を免れないであろう戦教女を三体も相手取る事にする。
だが、俺ならば問題無い!
「もしかして、あれを使うのかい!?危険だ!もし失敗したら...」
と!向こうからコーディの俺の身を安じた叫び声が。だが、心配はいらない
「大丈夫だ!暴走しかけたら自害する!そうなったら逃げろ!」
返答を待たずに目を瞑り精神を落ち着かせる。そして、ある魔術を唱える。
「『回帰せよ』」
熱い暑いあついアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ!
あまりの熱さに意識を手放しそうになる。だが、
「ぬるいわ!この程度!」
ポケットのナイフを肩に刺して、大声で自分自身に活を入れる。
体中に力が漲るのを感じる。いや、これが俺の元の力だったのか。
そして、懐かしい本来の力を手にして感傷に浸るのも程々にしよう。それよりもコーディだ。そう思った俺は急いで周りを確認。
コーディとターゲットがいるであろう隣の部屋の壁を手を当てるだけで粉砕する。
そして、驚いているシスター服を纏い怪物の様な顔をしたターゲットへ向けて少しばかりの殺気を混ぜつつ
「さあ!かかって来い!殲滅してやる!」
そう、挑発する。
「ヒッ!?ぐるわァァァ!!!」
確か、理性と引換に力を手に入れたのが戦教女なのであったな。
長くなった爪でこちらを引き裂こうと一体がこちらへ飛び掛ってくる。
だが、その一体の手を握り
「『燃焼せよ』」
と、静かに呟く。それによって手を握っていた一体は跡形もなく焼滅。
その光景に本能的に恐怖をして止まっていたのであろうもう一体の首を掴み、先程と同じ『燃焼せよ』を無詠唱で行使する。
「お前で最後だ、な。」
「ギュエアアァァア!!!」
そして、最後の一体が闇雲にも突っ込んでくるが、一回転して後ろ蹴りを顔面に繰り出す。勿論、『燃焼せよ』を無詠唱で行使するのも忘れない。
結局のところ別に最初の詠唱は格好つけたいだけなのである。まあ、言い訳みたいになるのが嫌なのでもう言及しないがな。
そして、最後の一体が消滅するのを見届けると、倒れているコーディの元へと向かい右手を差し出す。
「ほら、早く立て」
そう言うとコーディは申し訳なさそうに
「うん、ありがとう。ごめんね?役に立てなくって。」
と言ってくるが、とんでもない
「お前が、外の奴らを排除してくれなければ俺はもっと戦い難くなっていただろうさ。」
と、素直に賞賛する。
「うん、お世辞でも嬉しいよ。それじゃあ帰ろっか」
と、照れ隠しなのか急いで上に走っていってしまった。
「ああ、心地良いな。信頼できる仲間というものは。」
一人取り残された俺はそう、独りごちるのだった。
to be continued
不定期更新ですが、その内一週間に一回を目指します。