出会い
あれから数年がたって俺は一度目転換期に出会う。
あれから数年がたってしまった。
俺は国が管理する高校に通うにようになりもう1年ほどになる。
両親は流行り病にかかり、病院で寝たきりであとはもう死を待つだけの状態になってい。
両親のことは子供心に心配だったがこのご時世に流行り病にかかることは珍しくなく心配したところでどうしようもなかった。
学校が終わればこれまた国が管理する寮に帰るだけの毎日だったが〝あの絵〟を見るだけで心は満たされていた。
〝あの絵〟を見た日から俺も絵を描き始めた。
最初は見れたもんじゃなかった。父に見せると最初はそんなもんだと苦笑いしながらそう言ってくれた。
俺の絵はみるみるうちに上達とはならなかった、今になってようやくマシになったかな程度だった。
最近になって週に2、3回ほど学校終わりに近場の土手に絵を描きに出かけるようになった。その土手は人通りが少なく集中して絵を描くのにぴったりだった。
春になったばかりで風は心地よく、草木は新芽や新葉できらきらとしているようだった。
俺は集中して絵を描く。
描いては消し、また描いては消してゆく。
世界に誰もいないような感覚になりつつ無我夢中で描いてゆく。
3時間ほどかけてようやく線画を完成させることができた。時間をかけ過ぎかと思うやつがいるかもしれないがそれでようやく俺が妥協できる程度の絵を描くことができるのだから仕方がない。
「あ、ようやく描き終わった?」
描き終わるとほぼ同時にそんな声が聞こえて俺は驚愕しバッと後ろに振り向いた。
「ものすごく集中してるから声かけるタイミングなくてさぁ」
そこには入院してる人がきる病衣をきた少女がクスクス笑いながらこちらを見下ろしていた。
俺はすぐさま絵を隠す。
「あれれ?なんでいまさら隠しちゃうの?」
この絵は誰かに見せるためのものじゃないし見せる気もないと勝手に盗み見られて少し癪に触り投げやりに返す。
「ふ~ん。上手だし私好みの絵だったのになぁ」
彼女は半分残念そうに半分は関心がなくなったようにそういった。
俺は心の中でこの程度描ける奴は腐るほどいるだろ、とイラつき交じりに悪態をつく。事実俺程度の低級な絵を描ける奴はどこにでもいた。ちょっと下書きをして色を付けてやればすぐさま完成できる程度のものだ。
俺はそんなイラつきを隠すように彼女に礼儀的に一言言って帰ろうとする。
「あ、ちょっと待って」
さっさと帰ろうとする俺を彼女は呼び止める。舌打ちをしつつ何かと訊く。
「ごめん、ちょっと病院まで運んでくれない?また足動かなくなっちゃてさー」
彼女はアハハと照れ笑いしながらそうお願いした。
どうにも短編にまとめるのが苦手みたいだ・・・。