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乳児編 3. 洗礼

 あれから、何冊かの本を読んでもらいながら1ヶ月とちょっと経ったぐらいであろうか。


 今日も読んでもらおうと定位置で待機している。母上は、所用で少し外に出ている。暇なので、魔力を整えてよう。


 そうそう、本を自分で読もうとしたんだが全然読めなかった。なぜかって?

 首がすわりきってないから、本に目を向けることが出来なかったんだよ。

 だから、ここ一ヶ月軽度の筋肉痛になるくらい一生懸命に本を見ようと顔を上げ続けた。そしたらようやく、本を見れるくらい顔を上げらるようになったよ。

 にぎにぎもやっていたから、ページもつまめるようになった。

 これでようやく、一人でページを視界に入れることができるようになったよ。

 ヤッタネ。


 そんなこと、よく続けらてたかって??

 それ以外やることがなくて、暇だったんだよ。

 実際の赤ちゃんも暇だから、単調な行動を繰り返せるのかもしれないね。


 あと、腕の筋肉と首と体の筋肉を鍛えつづけたおかけか、ハイハイをできるようになったのは思わぬ副産物である。

 やったね!!

 現代日本から考えたら異常ともいえる速度だが、異世界ではハイハイできる一般的な日数が市民に広がってないだろうから大丈夫、なはず。


 しばらくして所用が終わったのだろう母が部屋に戻ってくるのだが、その隣には見知らぬ男がいた。歳は二十歳ぐらいに見える、黒髪の青年。


「*******」


 彼は、俺を見つけると足早に駆け寄って来て抱き上げる。なんだこいつ。

 まだ若い母上を誑かしたのは、お前か。


「ばぶぅー」


 抗議の声を上げる。

 すると、伝わらなかったのだろう、彼は嬉しそうに頬ずりをしてくる。なんだこいつ。

 髭がジョリジョリ。俺のピュアスキンが傷つくではないか。こやつめ! 不届きものには思い知られてやる必要があるな。


「ばっッッブッ〜〜!」


 彼の顔にくしゃみをしてやった。

 彼は顔を拭うと、笑顔で高い高いをし出した。


 ・・・どうやら、この青年が俺の父のようだな。


 彼はしばらく俺と触れ合ったあと、母とともに何かを話し出した。


「*******」


「******」


 俺はただじっとみているしかない。

 やはり、この時間は暇だ。


 話を五分ほどした彼らは、俺を抱き上げて部屋を出始めた。俺を抱えた彼らは、小さなカバンを持ち玄関の扉をくぐる。これが異世界始めての外出である。

 期待に胸が膨らむ。


 異界の門よ! 開くがいい!!


 眩しい日差しが視界を白く染める。暖かい風はまるで、この世界が歓迎してくれているようだった。

 ふふふ、この世界は道理がわかっているようだな。褒美に、この世界に吹く新たなる芽吹きを見せてやろう!


 風は返事をするかのように、頬を軽く撫でた。


 この世界の空気を堪能しているうちに、両親は私を背負って何処かへ歩みを進め続けていた。

 10分ほど歩き、街の繁華街と宿場町の区画、屋敷の区画がそれぞれ連なる境目あたりに差し掛かろうとしている時に、それは見えて来た。

 

 壁が白く隅々まで塗られ、屋根は紺色一色。その二色の中にアクセントを加えるように、十字架がその屋根に立っている。

 果たして、この世界の十字架にはどんな意味があるんだろう。そんなことは分からないけれど、一目で教会だとわかる。

 周りと比べて、かなり立派な建物だ。


 近づいて行くと、教会から神父のようなのが出てきた。

 中途半端に白髪の生えた黒髪を、それまた中途半端に伸ばしウェーブをかけている。ヒゲは三本の線を描くように剃っている。目は微妙ににっこり笑っている。

 

 まさに胡散臭さを体現したような神父だ。


 彼は、両親が教会に近づくとゴマを擦りながら近寄って来た。

 商人かよ! とツッコミたくなってしまったが、生憎とまだ言葉を喋れないので、ツッコミを入れることはできない。


 神父は近づいた後、入り口へと招きながら両親に話しかけた。


「*******」


 それはもう殴りたくなるような笑顔で話しかけて来た。おそらく両親も、何か思うところがあったのか苦笑いで返している。


 彼はヒールを演じることに生きがいでも感じているのだろうか、と言うくらいに胡散臭い。これが素の反応で、善良な神父だったら驚きはさらに大きい。


 そんなこんなで、中へと入っていく。中は、外で見た時は角度で見えなかった入り口裏面のステンドグラスが、光を招き色とりどりに輝いている。

 胡散臭い神父とは違って、しっかりと教会としての神聖さを感じることができる。


「****」


 神父が何かを話すと、母は俺をステンドグラスの前の上段になってるところに下ろした。そうすると、神父は手を合わせる何やら怪しげな動きをし始めた。

 両親の言動を見るに、どうやらこの世界ではこれが正規のものらしい。


 怪しい踊りが終わっても、特に変化は感じなかった。

 胡散臭い男が怪しげな動きをし終えると、父から硬貨の入っているであろう小包を受け取る。喜色満面で。足早に大きな袋の中に中身を入れ替えると戻ってきた。


 ふと、疑問を感じた。

 なぜ硬貨の数を数えずに仕舞っているのだろうか、と。

 

 これでは、誰が盗んでもちっとも分からない。聖職者がみな、清く正しくいられるとは限らないし、泥棒に入られてもわからない。

 確かに、渡す硬貨が一定ということもあるだろう。それにしたって、支払う側がちょろまかしていないか確かめる必要がある。


 第一、教会などに対するお布施などはばらつきがあるものだ。それならそれで、教会側はしっかり把握し、関係を築く参考にするはずだ。でなければ、一定以上の身分のものから、より多くの資金が集まりにくくなり、経営が厳しくなるのだから。


 ここから導き出される結論は一つ。

 この神父、お布施をちょろまかしている。教会の管理体制が不十分なこともあるだろう。だがこんな胡散臭い男が、こんな盗み放題のお金を盗まないであろうか、いや盗む。


 まあ、別に硬貨をちょろまかしていることを罰しよう何て考えない。だが、すこし俺に口止め料を払ってもらいたいだけなのだよ、ミスター胡散臭い。


 丁度両親との会話で、こちらに意識が向いていない。ならばと、少し教会の怪しい場所を探してみるか。

 まず、机の下。ない。次は、金貨をしまった大袋の後ろ。ビンゴ! 小さな袋に金貨などが詰まっている。将来の偉人に、お布施でもしてもらおうかな。

 

 俺は、母特製の服の6つのポケットに金貨を6枚それぞれのポケットに仕舞おうとしたが、2つのポケットには手が届かずあきらめて金貨を4枚仕舞う。

 終わったら、大袋の近くで大声で泣いて親を呼び寄せる。大袋は今かなり動いている。ここまで来れば後ろの小袋に気付くだろう。

 ここで動揺すれば、あいつは間違いなく黒だ。


「ばぁぁぶぁぁ〜〜」


 するとどうだろう、やはりというべきか、とてつもなく動揺している。目を見開き、顔を真っ赤にさせ、大口を開けて驚いている。さすがに、この驚きようは笑えるくらいだ。


「**************」


 いや、後ろに金貨の入った小袋があるくらいでそんなに動揺しなくていいだろう? 大袋は絶対に触ってはいけないという掟でもあるのかもしれない。ありえるな。

 

 神父は、ものすごく慌てて私を抱き上げようとする。さては、両親の元に自分で連れていき事を収めようとしているな。そうはさせん。

 私は軽やかな動きで長椅子の下へもぐり神父の腕を躱す。再び、大声でなく。


「ばぁぶぁぁ〜〜!!」


 小さい体を活かして、長椅子のしたなどを縦横無尽に駆け巡る。私と神父の死闘は30秒近く続いたが、私のこの体では流石に無理があるのか疲れた。


 最後は、母の腕の中に収まり逃げ勝ちである。俺に勝とうとなど、1か月遅かったな。


「*******」


 神父は息を整えながらこちらをすこし睨みつけたが、すぐに胡散臭い笑顔に変わり、困惑する両親に何かを話しかけている。この騒動の言い訳だろう。


 これで、金貨が取られたと分かってもどうしようもなくなったな。自分で言い訳したのだから。

 そもそも、赤子が金貨を取ってしまっても裁く法があるとはとても思えないが。


 ふふふ、これを玄関付近の土に埋めて来たるべき時の軍資金としよう。その後、何事もなく帰って玄関で親の包囲を抜け出し、金貨を素早く土の中に埋めた。


 無事埋められたが、慌てて駆けてきた母にひどく心配された。すまぬ。

赤ちゃんが首がすわり、座ったりできるようになるのが一般的に早くて3ヶ月といわれています。ハイハイは早くて6ヶ月くらい。

そして、脳梗塞などでのリハビリは6ヶ月くらい。骨折などでのリハビリは5ヶ月くらい。


明らかに大人の方が体か出来ているのに、赤子のほうが新たに形成するのにかかる時間が早い。


再構成が大変なのもあると思いますが、赤ちゃんは体内でも運動をしていることが大きな原因だと思います。


つまり、私は胎内編も書けばよかったかななんて少し思っている今日この頃。


少し書いてみる。


番外 胎内編


ふっははははははは?

なんだここは??


周りが真っ暗ではないか。

遂に組織が、私を拉致し監禁し始めたのか。

己れ、組織の連中めッ!


体からは力を感じるが、そもそも体を感じにくい。

どうなっているんだ。

俺は麻酔薬でも打たれたのか??

何て外道だ。それが人間のやることかよ!



しかし、本当にやることがない。動けない。感覚がない。思考しか出来ない。


暇だ。。。


寝よう。。。


そして、俺は考えることをやめた。

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