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乳児編 2. 中二と母

会話?パートです。

 行動は決まったが、母か乳母、もしくはいるであろうメイドに協力を願う必要がある。


 その際に、どうやって伝えたいことを表現する?

 いや俺はまだ赤子なのだから、やりたいことをその通りに振舞えばいいだろう。


 だが、掛け声はどうする?

 赤子は得てして、自らの伝えたいことを喜怒哀楽とともに掛け声で表現する。

 その際の掛け声は、「ばぶぅー」「あうー」「だぁー」などが主流だろう。こんな気の抜けた声をだし続けなければいけないとは、屈辱だ。

 けれど仕方ない、妥協しよう。


 隣で昼寝をしている母に、まず俺のしたいことを伝えるとするか。


「ばぶぅー」


 柵の間から手を出し、安楽椅子に寝ている彼女の膝をさすろうとしたが、届かない。


 もう一度、声を上げる。


「ばぶぅ〜〜」


 眠たそうに目をか開けながら、こちらを見る。


 もう一度。


「ばぶぅ〜〜〜」


 今度ははっきりと目を開けながら、慈愛に満ちた顔でこちらを見てくる。


「*******」


 おそらく、どうしたのか聞いているんだろう。若干赤ちゃん言葉が混ざっている気がするが。


 さて、ここからどうやってボールや絵本を持ってこさせるか。

 望みのことをやってくれるまで、拒否の態度をとるようにするか。


 彼女が上着をはだけさせ、乳を吸わせようとしてくる。

 ちなみに、母上は外国人ルックであっても十分16歳前後に見える。それで、聖母の雰囲気を持っているとは恐るべし。


「だぁ〜」


 首を微かに揺らして、彼女の提案を断る。


「*****」


 悩んだように首を傾け、そそくさと部屋を出て行った。

 少し後、ガラガラという音とともに、部屋へ入って来た。

 ガラガラを持って来たのである。


「*******」


 楽しげに、ガラガラを目の前で振ってきた。


「あう〜」


 今度は、落胆の意を込めて首を振る。

 首を傾げた後、ガラガラを持って部屋を出て行った。

 しばらくして、再び部屋に入ってきた。

 手に持っていたのは、手作り人形である。

 なかなかの作り込みを見て取れる。

 だが。


「だぁ〜〜」


 さっきよりも強めに首を揺らし、否定を示す。

 すると、ふと何かに気づいたようにすぐさま引き返していった。

 次は期待できるかもしれない。

 あ、戻ってきた。


 手に持っていたのは、パンツとバケツである。


「*******」


 何かを言った後、彼女は素早く俺のパンツに手を添えて脱がせようとしてくる。


「だぁ」


 そうはさせまいと、俺も素早く否定する。


「*****」


 不快からのうめき声だと思ったのだろうか、彼女はパンツを脱がせようとし続ける。

 負けてなるものか!


「あう〜〜」


 体を揺らしながら拒否する。

 すると、観念したのだろうか、漏らしてないと気付いたのか、バケツを持って部屋を後にした。

 ふー、何とか防ぐことができた。

 本やボールを、持って来ることはあるのだろうか。そもそも生後2日の子供にそんなものを渡して、喜ぶと考える方が珍しい。

 

 正直、視界が転生前と比較して、かなりぼやけて見える。転生前は視力2.0はあった。今では、人の輪郭を捉えるのがやっとである。文字など見えないだろう。

 だが、よく視覚を刺激すればそれだけ目も見えるようになるだろう。

 この世界でも、科学的論証がなくても言い伝えぐらいはあると思いたい。

 ちなみに、生後間も無く「ばぶぅー」もグレーゾーンだ。

 まあ、そのくらい許してほしい。


 20分ぐらい経っただろうか、彼女は戻ってきた。

 手に持っていたのは、本である。

 ついにやったぞ!

 全身を使って喜びを表現しよう。


「ばぶぅ〜〜〜〜!!」


 手を上げながら、満面の笑みを浮かべる。

 それに対して、彼女は満足したように笑みをこぼした。


「*******」


 安楽椅子に着くと、表紙を見せながら説明してくれた。ドラゴンのような絵が書いてある。ファンタジーものの小説だろうか?

 いや、この世界は魔法があるだろう。現に、俺の体からそれらしき物を感じるのだ。

 なら自伝ということもある。

 ドラゴンが本当にいるのなら、是非一匹欲しいところだ。

 ともあれ、絵のある物語は覚えやすくていい。


 表紙を見せてくれた後、体を抱くように後ろにまわり本が自分でも見えるようにして読み聞かせてくれた。

 本の内は、絵も多く文字が分からなくても内容が把握できるようになっていた。

 いいセンスだ。


 その後、休憩を挟みながら一冊を読み終えてくれた。

 私が本を読んでくれると喜ぶと気づいてくれたのだろう、その後すぐに、部屋を出て何冊かの本を手に戻ってきた。


 だが、今日はもう暗い。

 私は何度か睡眠を繰り返したが、彼女はあんまり寝てなかったように思える。私か寝なきゃ、彼女は寝ることができないだろう。

 まあ、腹が減ったら起こすかもしれないが。


「ばぁ〜ぶぅー」


 いかにも眠そうに声を上げる。

 そうすると、毛布をかけて頭を撫でてくる。擽ったいな。そうしていると、俺も眠かったのだろうか、だんだんとまぶたが重くなり視界が閉じていった。


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