乳児編 1. 0歳の行動計画
赤ちゃん転生って地味に難易度高いという事実。
目醒めたからには、やることが多い。
まず、この体を完成させること。
どうやら、この体は人間であるようだが、魔力に満ちているようだ。
それについて、成長促進と技術精錬をしなくてはならない。人間の体というのは、使わなければ廃れてしまうもの。
全く、ままならないものだ。
そしてそのためには、言語習得は必須。
俺ならば、感覚的にもできるやもしれんが、この世の理を知るのが先決。
でなければ、広大で深淵なる漆黒の奈落で蜘蛛の糸を掴むのに等しい。
そして語源習得とどうし並行で、この体の運動機能の確立を目指す。
体感からの考察では、現在行っている思考は、体に対し魔法によって記憶などを固定しながら、思考そのものを魔法的補助によって行っている、と考えられる。
そこから導き出させる結論は、本来は本能的な、赤子にとって必要不可欠な行動を見過ごしてしまうということだ。
これに該当するものは、主に3つ。
母乳の摂取。
睡眠周期。
運動系の形成。
この三つだ。
まず、母上又は乳母からの栄養素の献上を、自らのプライドによって拒むこと。又は疎かにすること。
特に、母上の外見や仕草、雰囲気は聖母のようなものがある。
そんな相手から、慈愛を込めて二つの大きな山で抱き締められ、それを平らげろと促されては、さすがの俺でも分が悪いところもあるしな。ムフンッ!
二つ目、これは睡眠だな。
赤子というのは、成人と睡眠周期を大きく異にする。
俺は今まで「知識を行使せし人と成りぬ、選ばれしものの集会」に通っていて、体はその時に完成し睡眠も、それに伴う形となっていた。
だが転生し、赤子となったのだ。ならば、睡眠周期を赤子と同等にすべきである。
魔法的補助により、体が睡眠を欲していても意識が眠らない、という可能性があるのだ。
意識的に体をリラックスさせ、高頻度の睡眠周期を実現するのが賢明だろう。
最後に、体の運動についてだ。
筋力的な話ならまだしも、運動能力はこの意識に身についているだろう、と思ったら甘い!
前述のとおり、思考は魔法的補助が大きく関わっている。
転生する時、なんらかの魔法的現象が起こったのが原因だろう。
その効果は、現在も続いている。
だが、効果は切れないものなのだろうか?
又、運動とは、小脳による無意識レベルでの処理である。
その魔法的現象は、そこまでのことを構築する余裕があったのだろうか?
例え神であっても、現代においては何らかの干渉をすることは不可能に近い、と「星のアーカイブ」を省みると分かる。
まして、異世界への移動だ。
仮に異世界のルールを適応できても、それは並大抵の事ではないだろう。
いや、むしろ神なら俺を恐れて、可能な限り弱体化させるべく、転移中に自我が跡形も残らないくらいにするだろうな!
フッ、自我がここにあるということで、俺の力が証明されてしまったかッ!
とにかく、小脳関係の技術や空間把握など、視覚関係は未発達であると考えた方がいい。
現に、口で日本語を話そうと思ってもうまくできない。
筋力も関係するだろうが、それが主因ではないだろう。
また、0歳〜の数年間は運動機能を発達させる重要な期間だ。その間の行動如何では、運動がぺっぽこになることすら考えられる。
これは、非常に許し難い。
父が「血に染まりし諸刃の黒金」を腰に下げていたことからも分かるように、この世界では運動がぺっぽこではダメだろう。
以上が、注意すべき乳児期の行動だ。
まぁ、この体から感じる魔法的な力で、なんとかなるかもしれないが。
語源習得と運動能力の確立。
幸いにして、赤子はこれらの学習に関しては優秀。
だが、必要なことが幾つかある。
まず、語源習得に関して。
語源習得は、一人ではできない。
そのために、この魔王(魔法と剣の世界の理を統べようとする王)の生まれし屋敷の誰かに教えてもらう。それも、身振り手振りで表現を加えながら、いろいろなものの説明や話しかけたり、読み聞かせをさせたりするのが一番いいだろう。
一からの語源習得であり、辞書など無い。
現状、思考が確立していることを最大限に活かさなければな。
または、挿絵のついた本を持ってこさせる、という手もある。
特に身振り手振りだけではなく、挿絵の付いた本を読み聞かせをさせることは、会話言語だけではなく、記述言語の習得にも大きな成果をもたらすだろう。
さらに読んでもらって、音を覚えれるとする。
そしたら一人で本を片手に、挿絵や行った身振り手振りから、内容を想像しながら文字を思い出しながら音読すれば、さらに習得が早まるだろう。
記述言語を覚えることができれば、第二目標であるこの世の理の理解、又は類推に大きく近づく。
次に、運動に関して。
これは、積極的にハイハイなどの運動をしながら、ボールなどを手で転がしたりするのを手始めとしよう。
歩けるようになったら行動範囲が広がるから、早く立てるようになりたい。
次に、入手すべきものについて。
言語は、教師となる相手と本、特に挿絵のついた本を。
運動については、この揺り籠から安全に抜け出し戻るための助手とボールを。
体から溢れる魔法と思われる力を使えば、ここから降りられるかもしれないが、登るのは困難だろうし、そんな迂闊な真似はしない。
二つのことに言えることだが、急激に成長することで不審に思われ、最悪魔女狩りのようなことに合わないために、じっくり様子を見ながら行動すべきだろう。
さて、考えはまとまった。
ふふふ、これより俺の伝説の第一歩を踏み出すとするか。
ちなみに、
「知識を行使せし人と成りぬ選ばれしものの集会」は大学。ディベートや発表、レポートより知識の行使。大学で成人になるかその前に成人になってるため。選ばれしものは、受験。
「星のアーカイブ」は歴史。
「血に染まりし諸刃の黒金」は剣でした。
中二用語は、以後省略します
文のテンポがクソになってしましたのでorz
なので、主人公が痛いやつという紹介を兼ねてここだけにしときます
ちなみに、彼が懸念しているプライドを損ねられる行為は、栄養の摂取ではなく摂取した後の残骸の排出行為にこそあります。
どうやら彼は、そのことに触れたくないらしく本文中では述べませんでした。
ちなみに、栄養の摂取のほうはひそかな楽しみでもあると本人は小声で述べてました。