結婚後夜
「今日もお勤めご苦労さまでした。
では、また明日」
「おやすみなさい!ミッチェラさん、アマリエさん」
「「…………………………………………………………………おやすみなさいませッ…!」」
おや?
アマリエさんとミッチェラさんがギリギリと歯を食いしばりながら挨拶して、立ち去っていきました。
随分と言いづらそうにおやすみなさいって言われたけど、どうしたんだろう。
いつもお疲れ様です。
「リィカ。
このまま廊下に留まっていては目立ちますから、中に入りましょうか?
どうぞ」
促されました。
あ、はいレイカです。
只今、ネル様…もうネルって呼ぼうか。
ネルの自室の前におります。
…今日から夫婦だから、寝室が共同なの!
夜もネルといられるの、嬉しいですね。
「お邪魔しまーすっ…!」
「ふふ、今日から貴方の寝室でもあるんですから。
普通に入ってきてくれていいんですよ?」
そ、そうは言ってもですね…!?
緊張、しちゃうじゃないですか。
入るのは二度目ですけれど。
恐る恐る、扉をゆーっくり開ける。
よく手入れがされているのか、音は全くならずに静かに扉は閉まった。
室内は相変わらずお上品でセンスの良い家具が並んでいます。
しかし私の好みに合わせてか、昨日見た時よりもレースやフリルの装飾が多くなっていました。
細かな所まで気が利いています!
さすが、裁縫と気配りのプロの旦那様!
「…この飾りレース作ったの、ネルでしょう!
レースのフチがドレスと同じ金糸だもの。
相変わらず、素敵なものを作ってくれるのね」
「おや、分かりましたか。
リィカはこういう可愛らしいのが好きなようですから、リラックス出来るようにと思って。
気に入ってくれたみたいで嬉しいです」
「もちろんだよー。
うふふ、ネルのお裁縫の作品大好き。
きっと貴方が作った物は、なんだって素敵だよ?
まずセンスが良くて、相手の事が考えてられているから」
…うわっと!
満面の笑顔で答えたら、ネルが被さるように抱きついてきました。
ぎゅーーーっ。
ああ、可愛「(ジロリ)」くないです、カッコいいです旦那様!
身長差があるため、いつも私の顔がちょうどネルの胸あたりに来るんですよね。
すん、と鼻を鳴らすと、相変わらず甘い青薔薇の香りがします。
今では、何より私を安心させてくれる大好きな匂い。
顔をすり寄せてうっとり香りを満喫して、彼をきゅーーっと抱きしめ返したら、…ネルの体が小さくピクッと震えた。
不思議に思って上を見上げると。
…ほのかに頬を色付かせて、熱っぽい視線でまっすぐに見つめて来られる。
ドキっ!と、心臓が跳ね上がった。
「……リィカ…」
うわわわわ!
耳元で囁かれた、やばいよ何なのこの色気は!?
「ッはい、レイカです!」
返事すら噛むかと思った!そしてこのマヌケな返事はなんだ!
もう動揺しすぎて、旦那さまが美麗すぎでやばい
「ふッ…! ……」
「もう…。なぁに?ネル…」
聞き返すと、ネルはさっきの返事が面白かったのかクスリと笑って、そして少しだけ沈黙した。
目を一瞬そらしたあと、また見つめられる。
空の瞳に吸い込まれそう
「その、ですね?
昨日言った事の、続きなんですけれど」
「はい」
ーーー…ネルは顔を真っ赤にしている!
ええと、ここまでくれば、ニブい私もさすがに次のセリフの想像がつきます。
…うう、私の顔も真っ赤だよぉーー!
ドクン、ドクン、と心臓が大きく脈を打つ。
頬に手が添えられて、更に顔を上向かされ、ネルの美しいお顔も…近づいてきた。
もうお互いのそれが触れるまで、あと少し。
「ーーー今日こそ、貴方にちゃんとキスしてもいいですか…?」
「!」
ネルは、一応は質問していたけど、私たちの距離はもう無いも同然だった。すぐそこに、彼のピンク色の薄い唇。
身体も、心の距離すらおそらくゼロなんだ。
お互いの体温が酷く心地いい…
言葉と共にもれた彼の熱い吐息が、それこそ、至近距離にある私の唇にかかっている。
私の返事はいつだって決まっているのよ、旦那様。
いっぱいいっぱい、愛して欲しいの…!
「はいっ」
愛してくれたら、私はそれ以上にいっぱい貴方を愛しますからね?
ーーーネルの小さめな唇が、ついに、優しく私の唇に触れた。
甘さに、頭の中が真っ白になる。
彼の事しか考えられない。
幸せ、です。
書いててこっちが恥ずかしいよ!!
お幸せにーー!!
あと次にかるくエピローグ書いたらおしまいです。
読んでくださってありがとうございました!




