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自己紹介

ちょっと短めです。

相変わらず残念感がぬぐえない王子様ェ…

 ………。



 目の前には麗しのご尊顔。

 空色の瞳が今も真剣にこちらを見つめていて、なんだかもう圧倒されます、キラッキラで目が潰れそうです。

 この人常に目に涙の膜がウルウルしてるけど体質かなぁ?

 ブスを見つめる苦行から来るものじゃないと思いたい。


 昨日よりさらにゴージャスな貴族服ですね。白地に金と薄紫の刺繍がとっても上品です。

 純白の貴族服を違和感なく着こなせるなんて、さすが王子様ですたまりませんね。

 今のうちに目に焼き付けておこう、ふふふ!




 ……。



 デジャヴ?







 はっ!

 一瞬意識が飛びかけましたよ。

 美形は凄いな、頭を冷静な状態に戻さなければなりませんね。

 ふー。


 さて。

 (心の中で)叫んでいいですか。





 夢じゃなかったあああ!?

 麗しの王子様が目の前にいるううう!?




 ひいーー私さっきなんて言った?

 心の声と欲望がダダ漏れでしたよばかー!

 旦那様!旦那様とか言っちゃったよ不敬罪でしねる!


 だってこの人確実に高貴な血筋でしょうこんな一般市民がいてたまるもんですか。私見たいな底辺が目に写すことすらおこがましいわ…!



 え?

 私の?

 愛しい妻?


 …GJこの声録音して繰り返しききたいレベルの美声ですまあ素敵。




 手が触れ合っていますあっつい!頭がパニックになりますよ、もうあっつい!

 顔がらのぼせ上がってるのが自分でもよく分かりますよー…!


 待っていても向こうはだんまりで喋る様子がありませんね。

 私から話しかけて、みよう、か、な…許されるかな?


 ええい、言え、喋ってしまえ!







 「あ、あの!」



 「ぶはっ」

 「うはっ」

 「ぐはっ」



 瞬間、部屋に居る3人が鼻のあたりを抑えて悶絶した。

 なぜだ。


 私のようなブスは2文字分の発言すら悶絶するほど気持ち悪いんだろうか。

 ひたすら申し訳ないんですけど。



 あ、麗しの王子様が復活した。

 鼻のあたりがうっすら赤いんだけど、大丈夫かな?

 せっかくの美貌に何かあったら私は心配ですよ。




 「なんでしょうか、私の女神よ!

 なにか聞きたいことがあれば何でもお答え致します。

 それか、お望みの物はおありですか?

 食事でも、ドレスでも、全て用意させましょう。

 遠慮なくおっしゃって下さいね!」

キラキラキラキラキラキラ




 テンション高ーーーーーーい!

 唖然モノですよ!

 王子様メンタルつよーーーい!

 いや、大広間で会った時にも思ったけれども!びっくりです。

 また乙女のような愛らしい微笑みですね、見惚れます。



 でもね、私が言いたいのはそういうことじゃ無いんですよね。

 頑張って話すから聞いて下さいね。


 噛まないように気をつけなきゃ。

 




 「あの、違うんです。

 私、まだここがどこかも分からなくて。


 その…貴方の名前も聞いてないなって。


 私は 鏡 麗華といいます。

 もしよろしかったら、お名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」




 やっぱりこれですよ。

 お互いに自己紹介もして無かったんだもん。




 言った瞬間、王子様が床に頭を打ち付けた。なんで!?

 ガイィン!と硬質な音が広い部屋に響き渡る。

 うっわ、痛ッそうな音したなぁ…

 って、そうじゃない。何事だ。




 どうやら彼は後悔している?らしい。


 ブツブツと「私はなんて間抜けなんだ」とか「あの時ののぼせ上がった自分を殴ってやりたい、全力で」とか、物騒なセリフが聞こえてくる。

 ちょっと怖い。



 「大丈夫ですか…?」



 恐る恐る、手を差し伸べると素早い動きでガッと(でも優しく)掴まれました。

 な、なんかこの方、見た目と行動のギャップが激しいような気がします。


 美貌とうらはらに、行動にはそこはかとない残念臭がするなーなんて思っちゃったのは秘密なのです(ボソッ)




 王子様は求愛の時みたく片膝をついた体制になって、コホンと咳払いしました。

 見つめあいタイム再開です。




 「なんという奥ゆかしい方でしょう。

 カグァム・リィカ嬢。(あ、そう聞こえるんですね)

 貴方に会えて私は浮かれてしまっていたのですね、名乗ることすら忘れていただなんて。

 不出来な夫をお許し下さい。


 私の名前はネルシェリアス・ヴィー・レアンス。

 ヴィレア王国の王位継承者第四位の者です。

 よろしければネルとお呼び下さい。

 それとも、先ほどのように旦那様と呼んで下さっても構いませんけどね?

 ああ、本当に嬉しかった。

 愛しい私の女神、私の妻…」




 この方ガチ王子様でした不敬罪待ったなし!

 ごめんなさいごめんなさい!




 って、不敬にならない雰囲気ですよ、ね?


 やたら妻とか旦那様とかを強調されたのは気のせいでしょうか。

 今さっき言い切ったセリフの中に3回もそれらしき単語が入ってましたが。



 「ねるしぇりあす、様ですね。

 私が言い始めてしまったことですが、旦那様なんて、いきなり言ってしまってすみませんでした。


 ええと、またそう呼ぶことを許して頂けるという事なのでしょうか…?」




 「貴方にまたそう呼んでもらえるなんて!

 私の名前を呼ぶたどたどしい発音もお可愛らしい!

 旦那と呼んで頂けるなら光栄です、是非よろしくお願いします!」



 ああ、オーラが薔薇色に…。




 しまった、言い方を間違えました。

 旦那様と呼んだことを咎められないか聞きたかったのであって、日常使いで彼を旦那様と呼ぶ予定はなかったのですが…

 慣れなくて恥ずかしいし!


 でも彼は本当に嬉しそうに笑っています。

 ネル様呼びに変えたら傷つけちゃうかなぁ?


 うーん、事情を話してあとで要交渉ですね。





 と、おや?





 「おいおい、ちょっと待ってくれ!」



 ひッ…きゃあああああ!?

 どぎつい顔面んんんん!



 「その様子じゃ、本当にお前たちは結婚すると見受けられるが?

 先ほど初めて会ったばかりだろう。


 ネルシェリアス。たたみかけるように話すんじゃない。

 まだ女神はこちらに呼ばれたばかり、混乱しておられるはずだ。

 もう少し余裕を持って話を進めるべきだと思うがな…!」




 なんでこの人が仕切り始めるの!?


 ちょ、近い!近いです!



 なんかフレッシュなシトラス系の無駄にいい香りがするけど、この人の場合容姿とのアンバランスさが…ごほんっ!失礼!

 私は自分の容姿に尻込みしてオシャレなんかもできなかったから、そこはこの人が羨ましいかも。

 堂々とした人ですね。

 



 絶世の…凄まじいブサイクさん!

 こんな容姿の人、私以外で初めて見ました。

 



 そうか、人は自分の(悪い意味で)予想以上の容姿の人に会うとこんなにビックリするんですね。




 そのブサイク貴族さんはそんな私を目を細めて睨め付けると、ニタァ、と口の端を歪ませました。

 ニタァ、なんです。

 これ以外に表現方法が無いくらいニタァ、なんです。


 彼に教えてあげたい。

 ええと、笑い方もうちょっと爽やかにした方が周りへのダメージが無いですよ…?

 私はさんざんマシに見える笑い方を研究したのです、そういうニヒル路線はちょっと似合いませんよ?



 思わず助言しそうになって、いけないいけないと口を閉じたので、頬がひくひくしています。


 それを満足そうに見やるブサイクさん。

 すみませんブサイクさんなんて呼んで…


 


 「ほら、彼女のこの様子を見な、ネルシェリアス。

 大変戸惑っておられる。

 女性にそんなにガツガツとせっつくものでは無いぞ?

 ゆっくりと本心をお聞きするのが、恋愛のマナーというものなのだ。」




 いえ貴方の解釈間違ってますよー。


 恋愛マスターのごとく恋について語る彼。

 ツッコミたい。

 すごくツッコミたい。

 すごい速度で話が進んではいますが、私は心を偽った発言などしておりませんよ!

 ネル様に『はい』と答えたのは、本心なのです…。




 ネル様は唇を噛みしめて苦い表情をしていらっしゃいます。

 力関係はこのブサイクさんの方が上なんでしょうか?





 「お前は天才と言っていいほど優秀だが、こと恋愛事に関しては経験がなさすぎるのがいかんな。

 ああ、実にいけない。

 女性にこんな顔をさせるものじゃないさ」




 「くっ…!

 兄上こそ、少々無粋なのではありませんか?

 確かに、私の彼女への愛情表現は拙いかもしれませんが、これは2人の問題だ。


 他人の恋路に口出しなどはよろしくない。

 小指の赤い印は消えていないと申し上げたはずです。

 むしろより色濃くなっているようだ、私たちは運命で繋がれているのかもしれませんね?」




 小指の赤い印?

 あ、なんかうっすらリボンのような幻影が私の手にも見える!可愛いけど、これ、なんだろう?

 ファンタジー。



 「ああいえばこう言うな…!

 その口の達者なところはさすが、外交の鬼と言われるだけある!

 普段はお前ほど頼りになる奴もいないが、相対するとこうも厄介とはな!」



 「おそれいります!」





 聞く限り、これは兄弟喧嘩なのかな…?

 それもなんか私の事での喧嘩っぽい。

 なんの冗談ですか。





 ーーーって、えーっ!


 この2人が兄弟!?どんな血筋なの!



 どうやらブサイクさんがお兄さんなんだよね?

 さっきからやたらとこっちを横目で見てくる…なんでだろう。

 容姿同族認定?


 



 あ、2人がぐりんってこっちを向いた。

 うわあ正反対。



 こんなに弟が麗しいんじゃ、お兄さん苦労してるのかもしれませんね…




 ていうか、あの侍女さん驚く程に影が薄いです。

 気配が遮断されているような?

 これぞプロの技!なのかな。

 呆れたような表情でこちらを静かに観察しているようですね。





 「「カグァム嬢!」」


 「はいいぃ!?」



 違いますカガミです、なんてとても言い出せる空気ではない。




 「紹介が遅れて申し訳ない。

 私はこの国の王位継承権第1位、グリドルウェス・ヴィー・レアンス。


 いきなり色々なことがおこってさぞお疲れの事でしょう、ゆっくりと湯浴みをされて、その後私と一緒にお食事でもいかがですか。

 よろしければ2人きりで。

 弟に先を越されてしまいましたが私も貴方のような美しい方とお近づきになりたいのです。

 どうかこの手を取って下さい」




 「愛しの妻、私は貴方の事がもっともっと知りたい。

 貴方が住むことになるこの国と王城の、素晴らしい所をたくさんお伝えしたいのです。

 望んで下さるのなら何処へだってお連れしましょう、何だってお見せいたしましょう。

 容姿では貴方を満足させられないと思いますが、知識と貴方への愛なら誰にも負けない自信があります。

 貴方は素晴らしい黒髪をお持ちだ。

 きっと魔力も多く、今までにない偉大な魔術師になることができるでしょう。

 そのお手伝いを、夫たる私にさせてはいただけませんか?

 どうかお願いします。

 私を貴方の隣において下さい」




 かたや初対面のブサイクおじさん(失礼)。

 かたや婚約者?扱いの美貌の好青年。






 皆さんなら、どちらの手を取りますか?







 私は気がついたら音速でネル様の手を取っておりました。

 自重しなくてすみません。




 あんまりにも彼が輝いていたので…つい…!





 グリドルウェスさんが口をあんぐり開けて崩れ落ちた。

 侍女さんも同じくあんぐり口を開けて、まじまじとこちらをガン見している。



 ネル様は…っ!?


 感極まった様子で、美貌全開の笑顔で私を抱きしめて来ましたーーーー!?

 なんて破壊力の笑顔なのか、もう私の心臓が持ちませんよ!

 麗しすぎる!



 いつまでこの女神扱いが続いてくれるのか分かりませんが、もうせっかくなのでこの状況を堪能させていただきたいと思います。

 ああ、こんなに幸せで良いのかなぁ。


 調子に乗って彼の腰に手を回すと(身長差がありすぎて背中まで届きません)、少しぴくっと肩が揺れたあとにさっきより強く抱きしめられました。

 すりすりーと頬を寄せてくるのが、男性なのになんだか可愛らしくて、乙女心にキューーン!ときますね。


 甘くて幸せで、もう何も考えられなくなりそうです。

 もうしばらく、このまま…。










 待って。


 私、ちょっと待て。

 今考えられなくなるのは良くないです!




 魔法。



 今確かに、ネル様は魔法が使えるっておっしゃいました。

 私は黒髪だから魔力が多いんだ、とも。




 …強引な展開についつい流されてしまっていますが、おそらくここは異世界です。



 だって、瞬間移動ですよ?

 これ、召喚でしょ?

 私、日本の自室にいたのに気がついたら王宮ですよ?




 お話としてよくある、剣と魔法のファンタジーな世界だったとしても何の不思議も無いでしょう。

 私が巻き込まれたのは異世界召喚、そう考えるのが妥当ではないでしょうか。

 大広間での私の足元には魔法陣らしき模様もありましたし…。



 体をひねって少しだけネル様との隙間を開けます。

 そのままくいっと上を向いて彼と目を合わせました。


 聞かずにいたらきっと後悔する…!




 「…旦那様、今、魔法とおっしゃられましたか…?」


読んで下さってありがとうございました!

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