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魔法教室/魔力結晶宝石

 「夜空のこぼれ星」


 「魔力5000。

 作成者は『藍色の聖女・ミレーアベル』。

 効果『探し物を光らせ、そこに導く。使う時は月のない夜が望ましい』

 継続時間は5時間」





 「深海の人魚姫」


 「魔力7000。

 作成者は『歌の神子・マルティカ』。

 効果『水の中で息ができる。塩分のある海で使うこと』

 継続時間は、玉を耳に当て取り込んで、歌声が聞こえなくなるまで」





 「紅蓮の太陽」


 「魔力7000。

 作成者は『魅炎の舞児・バーガルダリン』

 効果『巨大な炎球を発生させる。攻撃によし、鑑賞によし』

 継続時間は、30分」





 「愛と美の女神の涙」


 「…魔力EX。

 作成者は『愛と美の女神・アラネシェラ』。

 効果『愛にもとづいた願いを何でも叶える。自分と相手が、相思相愛である事が条件。使用でき効果が発揮されるのは、国内限定』

 継続時間は、願いが叶い愛が証明されるまで。


 なんて物まで持ち出してたんですか兄上…」




 「しょうがないだろう?

 どうしても見せたかったのだ!」



 「堂々としてどうするんですか」



 「まあ、国王なら持ち出しの許される品だしねぇ。

 貴重な物が見れて良かったんじゃない?」



 「うっ。

 理屈では分かるんですけどねぇ…神級の国宝と思うと、どうにも畏れ多くて」



 「気持ちは分かるけどねー」





 応接間のテーブルには、見事な輝きを放つ宝石が丁寧に並べられていた。

 5cm四方の正方形のミニクッションに、ピンポン玉大の大粒の宝石が置かれている。


 ヴィレア王国の宝物庫が誇る、魔力結晶宝石だ。

 『夜空のこぼれ星』であるなら、薄水色のキラキラの宝石の中に藍色の魔力玉が融合していて、その中に更に星のような輝きが見られる。


 魔力の輝きとでも言うのだろうか。

 星は常に形を変え光り、夜空を映しているかのようだ。

 女性なら誰もがうっとりしてしまうであろう、美しい宝石である。




 宝箱からグリド王子が魔力結晶宝石を取り出し、ミニクッションにおいて行く。

 宝石の名前を言うと、ネル王子がそれについての説明をする。




 今回持ち出されたのは、宝石ばかりが10個ちょうど。

 書類の数ピッタリ分である。

 クラド王子が書類と宝石を照らし合わせ、持ち出された数が合っていたことに満足そうに頷く。





 女性陣は皆、テーブルに視線が釘付けだった。

 年齢にかかわらず、可愛いもの、綺麗なものはやはり大好きらしい。

 宝石に触れはしないものの、顔を近付けて楽しそうに閲覧していた。




 その様子に王子たちは揃って顔を見合わせ、それぞれふふっと小さく笑う。



 これらを持ってきたグリド王子が代表して、カグァム嬢に声をかけた。





 「お気に召しましたかな?

 カグァム嬢。

 これらは国の宝物庫に収められている、貴重な付与魔法付きの宝石でしてな。

 一般的には公開もしておりませんが、貴方にどうしても見せたくて持って参ったのです。

 美しいでしょう?

 特に、そのアラネシェラ様の宝石が素晴らしいのです」




 カグァム嬢がグリド王子の方をパッと見る。

 いつになく楽しそうな、柔らかな笑顔だ。

 こんな笑顔がグリド王子に向けられるのははじめての事である。

 彼女の笑顔を見て、弟たちに怒られたけど持ってきて良かった!と心から思った。

 顔がデッレデレになる。

 色が赤黒い。



 兄に魅了されないようにと、カグァム嬢を抱きしめたままのネル王子が、若干腕の力を強めたのは秘密である。

 小指の赤々と色付いた印を確認して、ホッと小さく息をついていた。





 「…はい!

 こんなに綺麗な宝石、初めて見ました。

 透明な中にキラキラの虹の七色が輝いてて、女神様の涙って名前にピッタリの宝石だと思います!」




 ネル王子の心配もどこへやら。

 カグァム嬢は興奮したように頬を染め、うふふと笑う。

 可愛い。



 にこやかな顔のまま、ネル王子に尋ねる。



 グリド王子は幸せに浸っている最中なので、ちょっと放っておこう。





 「ねぇ、ネル様。

 宝石に付与魔法って、どうやってるんですか?」



 「おや。

 知りたいですか?

 そうですね…まず、魔力玉と宝石を用意します。

 それを魔法で融合させて、その時にどんな効果を付与したいか念じます。

 簡単に言えば、これだけですね。


 ただ、宝石と魔力玉の相性があります。

 相性が悪いと融合は失敗となります。

 成功した場合は、元の魔力玉の半分の魔力がやどった『魔力結晶宝石』が出来上がりますよ。


 今回ここにある魔力量の多い宝石は貴重なのです。

 効果も素晴らしいため、いざという時のみ使う国宝とされています。

 使い切りですからね」




 「ふあー、そうなんですね。

 国宝か、すごいなぁ。

 ネル様。

 国宝以外にも、魔力結晶宝石ってあるんですか?」




 「ありますよ?

 もっと魔力が低くて、宝石もランクの低い天然石を使った物は、市民のお守りとして普及しています。

 その場合、強い効果付与はできませんけどね。

 その代わりに長持ちします」



 「お守り…」



 「ふふ。作ってみたいですか?」



 「!

 いいんですか!?」



 「もちろん」





 ぱあっとカグァム嬢の笑顔の威力が増す。

 おおう、眩しい眩しい!




 美しい彼女が満面の笑みを浮かべると、まるで優しい太陽が腕の中にいるかのようだ。

 思わず目を細める。

 知らず自分も笑顔になっていたようで、カグァム嬢がまたエヘヘと笑いかけてくれた。




 自分みたいな醜い男を一途に照らし続けてくれるだなんて、この太陽はなんて素敵な人なんだろう。


 …彼女が言ってくれるほど、自分は立派な人間なんかじゃない。

 愛される喜びを知ってから、欲深くもなった。

 この腕の中から彼女を逃がさないと決めてしまったのだから。

 …兄以上に幸せにしてあげられるかも分からないのに。



 ………。




 貴方が望んでくれるなら、なんだってしてあげる。

 だからどうか、側にいさせて下さいね。

 リィカ。




 「宝石は私の持っている物を差し上げますよ。

 魔力玉に関しては、本人のものの方が付与をかけやすいので、作ってみましょうか。


 実は、今日また使うかもしれないと思って魔力玉作成機のキーを増やしておいたんです

 ふふ、徹夜しちゃいましたけどね。

 新しく『1/1000』のキーを増やしたので、これを使おうと思います。

 よろしいですか?

 前のように長時間、魔力を吸われる事は無いかと思いますが…」




 「大丈夫、です!

 ネル様、わざわざ私のためにキーを増やしてくれたんですか…?

 徹夜までして?


 嬉しいです…

 ありがとうございます!」




 「いえいえ。

 魔力を多く絞るよう設定するのは大変なのですが、少なくする設定は比較的簡単なのです」





 ネル王子がやわらかく微笑んで告げる。



 ただ、カグァム嬢は徹夜と聞いて心配になったようで…

 くるりとネル王子の方を向いて、抱きしめ返す。

 そのまま効果の弱めな治療魔法を、彼の身体全体にかけてやった。


 ぽわぽわと優しいオーラが2人を包んで、2人だけの空間が出来上がる。

 王子は目をまんまるくした後、「ありがとう」と言って頬を染めた。

 



 カグァム嬢は、キラキラと尊敬の眼差しを彼に送っている。

 やっぱりネル様は立派だなぁ。

 こんな凄そうな魔道具の改造も出来ちゃうだなんて。

 優しいし。

 頭いいし。

 デキる男性ってやつですね!






 …はたして、カグァム嬢のその尊敬の眼差しは正しかったというものだ。

 デキる男性?

 その通り。



 魔道具の改造、それも大掛かりで複雑な作製機のキー改造など、変態の領分である。

 忘れてはいけない。

  彼は魔法漬けの道具開発者ではなく、王子である。



 それを一晩で改造?

 魔法師組合のジジィババァ達が聞いたら発狂ものである。





 現に、2人を見守るギャラリーは遠い目をしていた。




 「おかしいって。

 おかしいってばネル。

 改造を簡単なんて言っちゃう君のスペック本当どうなってるの…」



 「俺、兄としてネルに負けないよう勉強とかも頑張ってるんだけどさ。

 これ、もう無理じゃね?

 どう頑張ったって、努力でなんとかなる範囲超えてね?

 俺、容姿と魔力以外はあいつに全敗なんだが…」



 「相変わらず…」

 「ぶっ飛んでますわねぇ…」




 ネル王子のスペック無双が止まらない。

 どこまで行くのか筆者にも分からない。




 魔力結晶宝石、作るようですね。





****************






 うわあああああ!


 キターー!

 私の待ち望んでた『ネル様の役に立てる事』キターーー!



 テンション高くてすみません!

 麗華です。





 お守り、作りましょう。

 彼を守るための『お守り』作りを頑張るのです。

 やっと私が彼の役に立てそうな時が来ました!



 材料費が向こう持ちなのがイタイ所ですが、一文無しな私にはどうしようもない。

 好意に甘えさせて頂きましょう。

 できたお守りは彼に渡すつもりですし。



 せめて魔力玉作りを頑張ります。

 手を突っ込むだけだけど。

 ………。

 が、がんばろう!





~作製中~





 朗報です。

 魔力玉、今回は問題なく作れました。

 一瞬、目を開けてられないほどの光が作製機から出てビビりましたが、その一瞬だけでコロンと魔力玉が出て来ました。

 よ、良かったぁ~。

 今度の魔力玉は100,000で、それでも十分規格外なのですが、前に比べたらね!

 まだ平和な数値だよね。

 …だよね?




 ここから魔力結晶宝石に加工すると更に半分の魔力になるので、50,000になりますね。


 国宝の宝石の魔力値なんて気にしてはいけない。

 国宝無限作製機・私だなんて、きっと気のせいなんだ!

 視界の端に見える皆さんの引きつった顔なんて気のせいなんだからねっ





 「話には聞いていたけど、末恐ろしい魔力値だな!?」


 「この子の魔力とネルのスペックが将来合わさるのか。

 お、おっそろしいなー」





 き、聞こえなーい!






 さて、私たちのテーブルの上には色とりどりの宝石たちが散らばっています。


 あ、普通の宝石ですよ。




 国宝のは無くすと一大事なので、もう護衛騎士と執事長さんが持って行ってくれました。

 アラネシェラ様の涙なんて、貴重中の貴重品だそうで…

 昔は同じのが複数あったけど、愛に生きる歴代国王さまが使っちゃったらしいです。

 最後の一つがさっきのアレだったみたい。


 本当に凄いもの見せてもらってたんだなぁ…

 お兄さんに感謝ですね!



 ちなみに。

 涙の宝石には、『建国当時にアラネシェラ様本人が現れて、国王夫妻を祝福したときに流れた愛の結晶』って言い伝えがあるそうです。

 ロマンティックなお話ですね…!






 今回は皆で作りましょう、ってことで、生徒それぞれが魔力玉を手に宝石を選んでいます。


 さてさて。

 どの宝石を使って、魔力結晶宝石を作ろうかな?

 ネル様に似合う色がいいなぁ。




そんな綺麗な宝石、私も見てみたいです!



読んで下さってありがとうございました

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