始まろう
魔法教室、さっさと始めよう皆さん。
ああ、朝からお腹がパンパンで朝食ももう食べれない……事もない。
なんなんだ私の身体は。
いやただのデブか。
おはようございます、麗華です。
ダイエットしようとはいつも思うものの、食べないと気絶するほどお腹が空くんですよね。
運動している訳でも無いのに。
本当に、私の身体ってなんなんでしょうねー。
前話を読んで下さった方は、事情もご存知かと思います。
昨日の夜、自業自得な理由で、私は散々な目に合ってしまいました…
まさかの総攻めあーーんの刑です。
いや、Sな黒笑みって素敵だよねとか日本のネットでは盛り上がってたけど、あれは二次元に限った事なんですね。
あれはあかんです。
皆さんのほの黒い笑顔に、心臓と胃袋が常にビクビクなってました。
怖かったーー!
美しい人がすると更に破壊力が上がる上がる!
呼吸止まる!
ああいう黒いお仕置きはもうコリゴリだと心から思います。
ごめんなさい。
これからは隠し事なんてしませんから…
ご飯はゆっくりおちついて食べたいです。
朝、アマリエさんミッチェラさんが部屋に着付けに来てくれた時はまたビクン!ってなったけど、いつも通り優しく接してくれてホッとしました。
良かった。
内心ヒヤヒヤしてたのは秘密です。
「今日は桃色のドレスにしましょうね」なんて言って、背中のガッッツリ開いたドレスを用意されたのは考えすぎだと思いたい。
そのまま出歩くには不向きなほど露出されているので、淡い白レースのケープも用意してくれました。
か、可愛い…!
え?
ネル様カラーのドレスじゃないのかって?
毎日同じ色ばかり着るわけにもいかないので、今日は青薔薇とオパールのアクセサリーを付けています。
空色のドレスは、また明日の王都散策の時に着ていく予定です。
王都、楽しみですー!
アクセサリーはミッチェラさんが用意してくれました。
相変わらずセンス溢れる、素晴らしい逸品ばかりです。
どこから手に入れて来たのかはもう聞かない事にしますね。
ミッチェラさん、ありがとう!
今日は再びの魔法教室。
前回はとんでもない魔力玉を作って、処理して終わってしまったので今度こそ。
ネル様のお役に立てるような魔法を勉強してみたいと思います。
彼は私に「一緒にいて」って言って下さるんですもの。
ふさわしい女性にならねば、ですね。
よーし、気合い入れろ麗華ーー!
まだ異世界に来て4日目だから、なんて油断してるとすぐネル様ファンの人に手紙送りつけられちゃうんだからねーー!
相手が誰かは分かりませんが、負けないんですから…!
あ、愛してますもの!
容姿端麗、頭脳明晰、さらには武術までいけちゃうとんでもないハイスペックな王子様。
そんな彼の隣にいられるよう、頑張ります。
魔法教室に行ってきまーす!
****************
少し暖かくなってきた朝の日差しが、柔らかくそそぐ応接間。
今日はここで、私のためにとネル様が魔法教室を開いて下さいます。
アマリエさんが扉を開けてくれたら、彼がまっさきに顔を出して迎えてくれました。
相変わらずすごい速さでこっちに来てくれて、ちょっと驚く。
近くに来たらなんとも嬉しそうな顔で、キュンとしちゃいます。
空色の瞳が私を捉える。
そしたらニッコリ笑ってくれて、お姉さんは今日もドキドキです。
ふー…
いけないいけない。
また彼の魅力に、二人きりの世界に入りこみそうになりました。
ほんと、いつ見てもネル様は素敵なのです。
今回はグリドルウェス王子殿下もいらっしゃいますね。
こっちに小走りで早歩きしてくる姿が見える。
今日は派手な真紅の貴族服を着て、何やらファンタジーな宝箱(?)を持っていらっしゃる。
見た目海賊船にありそうなやつです。
相変わらずなぜかねっとりと横目で睨まれてしまいますが(※渾身のクールな流し目です)、挨拶はきちんとしなくてはですね。
「おはようございます、グリドルウェス王子殿下。
今日は一緒に生徒として、この魔法教室に参加されるとお聞きしています。
よろしくお願いします。
王子殿下は国一番の魔法師なんですよね?
私も魔法師になれるように、頑張りたいと思っています。
こういう言い方をしていいのかちょっと悩みますが…
同じ生徒として、授業楽しみましょう!」
ニコっと!
ブスだろうが笑顔で挨拶するのは大事な事なのです。
あれ。
なんだか王子殿下の顔色が、急激に赤黒くなってきております。
ブスの笑顔がキツかった…?
大きなお口もあんぐり開いてる。
小さな目は精一杯見開かれていて、凝視してくるのでなんだか怖い。
表情が変顔になってるので、絶世のブサ……げふん!の更にその先に足を突っ込もうとしています。
大丈夫でしょうか?
いや、体調の心配ですよ?
元が地黒だから分かりづらいけど、絶対に顔色赤黒くなってるよ…!
焦ってネル様の方を見ようとすると、姿を捉える前に視界がホワイトアウトしました。
うそだろ。
今?
ちょ、ネル様の貴族服だコレ。
私は今後ろから抱きしめられていて、視界を確保できません。
抱きしめてくれてるのはありがとうございます、でもタイミングが問題です。
貴方のお兄さんの形相がえらいことになってたんですよ。
万が一具合が悪かったりしたら大変ですよ?
時期王様に何かあったら国としても大変だし、実兄だから心配でしょ?
というわけで、今はだめだと思うの。
はーなーしーてー!
…ああダメだ、すごいこわい紳士モードになってる腕が絡みついてくる…
訓練所編、再来。
せめて安否の確認をしてあげて下さいー!
「むむぅ!むむ~……むぅっ」
「ん?
なんですか、カグァム嬢。
…貴方と結ばれてから私は、毎日朝が待ち遠しくて仕方ないですよ(エエ声)
今日も会えて嬉しい。
その桃色のドレスを着ていると、まるで妖精のように可憐ですね?
ふふ、思わず抱きしめてしまいました!」
「~~~~!(ありがとうございます好き!でも今はそこじゃない、お兄さんの事気にかけてあげて下さい)」
「え?
そうですか、私も愛していますよ!
リィカのおかげで(耳元)朝から幸せです!(ハァト)」
「(違うー!)」
いつにないネル様のスルー具合が怖い!
まさかね。
わざとじゃ無いよね?
私の天使様だもんね。
彼にそんな属性なんてないよね。
見かねたアマリエさんが声をかけてくれます。
ため息と共に。
今日も苦労かけてすみません…!
すっごく、助かってます。
さすがです。
「ネルシェリアス王子殿下。
お気持ちは分かりますが、今は自重なさいませ。
リィカ様が何も見ないように視界を塞ぐだけでは、いつか限界が来ますわ。
それより、兄に負けないよう、自身を精進させるべきかと思いますよ」
わざとか。
もしやわざとなのか。うそだろ。
「…兄上の照れた顔なんて見せたら、カグァム嬢と言えど魅了されかねませんから。
こればっかりは、天然の見る惚れ薬みたいな物ですからね…
全くなんて破壊力なのか。
兄上。
自重して下さい」
「……自重するのは俺なのか!?
いや、お前だろうネル!
現実を見ろ!」
「現実としてカグァム嬢が私の腕の中にいます」
「羨ましいわ!!
この減らず口!!」
グリドルウェス王子殿下の荒ぶる声が聞こえる。
会話の速度が速いです。
怒涛の勢い!
こんなに元気ならまあ、顔色アレだったけど大丈夫なのかな。
良かったです。
それより…
えっ。
彼も、ネル様に抱きしめられたいの。私が羨ましいの?
今の発言そうですよね。
………ま、まあ、こんな美しい弟と兄弟愛を育みたいって気持ちは分からんでもないですよ?
ネル様、貴方に何故かちょっとそっけないし。
もっと構って欲しいの、かなぁ?
………。
あ、やば、顔引きつってると思います私。
抱きしめ合う兄弟など想像するでない、私。
色んな理由で見たくない。
ま、負けませんからねー!
今朝、嫉妬になんて屈しないって、気合い入れてきたばかりなんですからー!
まさかお兄さんまでライバルとは思いませんでしたが、分かりました。
このネル様抱きしめポジションは、譲れませんもの。
覚悟して下さい!
私だって引かないんだから!
「…グリドルウェス王子殿下。
羨ましがられても、ネル様に抱きしめてもらう優先権は譲りませんー!
愛してますもの。
私、頑張って彼の隣に立てる女性になってみせますから。
魔法だって、頑張っちゃうんですから。
私たちライバルですね…!」
「」
「あー……私の妻は本当に可愛いですねぇ。
うんうん、貴方を抱きしめるのは私だけですよー。
役得ですねー」
決まった…!
言った!
ネル様の腕の中から言い放つ私。
実は内心ガクブルしてるのは秘密!
こういうの、慣れて無いですからね。
後ろから密着してるネル様の身体の温かさを堪能しております。
うーん、羨ましいでしょうね。
これはいいものです!
王族だからお兄さんだからって、遠慮してたらモテモテネル様は取られちゃうんだから仕方ない。
ネル様はまわしていた腕を片方あげて、頭をよしよしと撫でてくれる。
ナイスなでごこち…
とろけます。
ほんとこの位置、死守しなきゃ。
背後から抱きしめられていたので、腕が片方無くなったことにより視界が開けました。
パチパチと瞬きする。
目の前でグリドルウェス王子殿下がハンカチを噛み締めていた。
………。
見なかった事にしました。
ごめんね。
弟、取っちゃってて…
罪悪感はあるよ。
ミッチェラさんの「首突っ込もうとするからですわぁ、言わんこっちゃない…」って呟きが聞こえました。
ふと、応接間の扉が廊下側から開けられた。
廊下からの光が室内にさしこみます。
皆がそっちを見る。
今日はここは魔法教室に使うって言ってあったはずなのに…誰でしょう?
現れたのは濃い灰色の髪の、ふっくらした男性。
鋭い目をまん丸にして、扉を開けたポーズで固まっていた。
確か、2番目のお兄さんクラジェリウス王子殿下。
どうしたんだろう。
何か急用でもあったのでしょうか?
彼のほっぺはピクピクしています。
口を頑張って引き結んでいるけど、ついにうぷっ、と声が漏れる。
慌てたように部屋の中に入ってきて、ぴっちりと扉を閉めた。
ーーーすると堰を切ったように、部屋中に響く声で笑い始めた!
「ッはははははははあぁーーーッ!
ふはッ、ははははぁ、ひーーー!」
何事…!?
お腹をたぷたぷ揺らせて爆笑する。
目には涙が滲んでますね。
息継ぎがうまく出来ずにたまにムセてるけど、まだまだ笑う。
この人の笑いにかける情熱はすごいな…
どこか面白い所があったのでしょうか?
昨日も確か爆笑なさってましたね。
混乱してぽかんとするしか出来ない私の耳に、またもやアマリエさんのありがたーいひと声が聞こえた。
彼女は侍女の鏡のような方ですね。
「……いいかげん、授業、始めましょうか」
身体強化をして顔に青筋を浮かべた彼女はニッッコリと笑っている。
さすがです。
その瞬間、クラジェリウス王子殿下がピタッと笑い止み、アマリエさんの笑顔を見て顔を青ざめさせる。
ホントさすがです。
ネル様とお兄さんも、視線がフラフラと泳いでいますね。
私?
もちろん硬直しておりますとも。
ようやく静かになりました。
私も含めて、はしゃいでいて申し訳ありませんでしたアマリエさん。
苦労おかけします。
ではでは、ネル先生。
授業よろしくお願いしまーす!
「先生とか…!」
鼻血ーーーーーー!
第二王子も参加するようです。
うーん、ちょっとグダグダしちゃったかなぁ。
本編完結したら、また全体を見直して改稿版で投稿したいです。
反省、いろいろあるんですよね…
読んで下さってありがとうございました!