じぇらしー
ラブすぎるしコメディすぎる回になりました。
会話が多い!
「…さて。
ネル様、少し腕を離してもらってもいいでしょうか?」
「えっ!?」
「怪我人がいるんですもの!」
ちょっ…そんなに泣きそうな顔をしないで下さい私だって名残惜しい!
気持ち自重してなくてすみません。
麗華です。
私だってネル様とずーっとこうしてくっついてたいですよ?
この場所は、あったかくて青薔薇の香りが優しくて、本当に心地がいいの。
抱きしめてくれる腕の力は私が痛くない程度に強くて、安心する…。
もうホント素敵空間!
後でまた抱きしめて欲しいよおおお!
大好き!
だけど、今は優先しなくちゃいけないことがあるのです。
ええい、耐えろ麗華。
自分の欲を抑え込むんだーー!
後戻りできないよう、もう彼の名を呼んでしまいましょう。
「ストラス君……!」
「…んん?
あれ、どうしたのー?」
騎士さん達に囲まれていた彼がくるりとこちらを向き、首を傾げた。
…ネル様の腕の力がわずかに強くなった気がする。
あれ、なんかピシリと固まってる?
いやいや気のせいかな?
気のせいでしょう。
うん。
それより!
今は目の前に怪我人がいるのです、早く治さなくちゃいけません!
ピンピンして騎士さん達に囲まれて(埋もれて)るように見えるけど、平気なはず無いと思います。
怪我したところ、きっと凄く痛いですよね…。
あんなに激しく打ち合ってたんだもん。
打たれたのは確か腕と手だったはず。
早く、痛みを取って治してあげたい。
私にできること。
今なら、この世界に来てから使えるようになった魔法という力で治療ができます。
偶然手に入ったような力だけど、私の魔法が誰かの役に立てるのだったら、積極的に使っていきたい。
こんな私に優しくしてくれる、この世界の人達にわずかでも恩返しがしたいのです。
地球では誰の役にも立てない、何もできないしやろうとしない、自分すら愛せない私だった。
けど…だからこそ。
この世界では自分のためにも誰かのためにも、頑張って生きていきたいのです。
ネル様の頬が腫れているのも治せたし、治療魔法は使えるものと見て大丈夫でしょう。
よし、治させてもらおう!
ネル様の腕から抜け出して、ストラス君の元に…ーーー
「ス、ストラス君。
怪我を、怪我した手と腕をですね。
魔法で治療したいのですけど…!
ーーーこちらに来て頂けますか!」
無理だ。
腕から抜け出せなーーい!?
ストラス君の元に行けやしない。
前にもこういう事、ありましたね!
ふんわり痛くないように抱きしめられてるのに、私は決してここから抜け出すことが出来ない。
身をよじってみても、下から頭を抜こうとしても、異常なまでに自然な動きでネル様の腕が絡みついてくる。
これは無理だわ。
紳士すごいこわい!
ストラス君は何時もの快活な笑顔を消し、青ざめた表情でこちらを見ている。
えっ、なんで?
怪我したトコを治すだけなんだけど…
私ちゃんと治療魔法使えるよ?
何かを言いあぐねるかのように視線をキョロキョロさせた後、ようやく彼は口を開く。
「えーーーっと…。
気持ちだけもらっとくね?
俺ホラ頑丈だし!全然こんなん痛くないし!
後で治療室寄ってこうと思ってたから、気にしなくていいよ?」
「いや痛いでしょう!
腫れてるじゃない!
私、治療魔法ちゃんと使えますから、こちらに来てすぐ治して…」
「やめてくださいしんでしまいます」
「そんなに!?」
がーーーん!!
そ、そんなにブスの治療は嫌でしたか…
やめてください、と来ましたか。
ストラス君は私に何のリアクションも無かったから、醜さを気にしないでくれる人かと思ったけど…す、すみませんでしたー!
あ、ストラス君が悪いんじゃないですよ。
ビビるレベルの顔面を持つ私は相当特殊なケースなので、驚いて治療拒否されても仕方ない…かも、しれません。
だって治療のときに、実際に腕に触れなきゃいけない訳だし。
嫌がられても仕方な……凹みますね、やっぱり。
ブスでも図々しく頑張るとは決めたけど、強引すぎだったかな…。
ごめんね。
ただ怪我が心配だっただけなんだよ。
しゅんと頭垂れる。
この、面と向かって嫌がられる感覚はなんだか久々だなぁ。
懐かしい。
あ、それか顔面とかより話しかけ方が気持ち悪かったですか?
泣けますね。
ふふっ
………。
ストラス君が落ち込みきった私を見てギョッとしている。
しまった。
なんか、さらに顔色が悪くなってもはや青黒いです。
人の顔色ってこんな色になるの!?って色をしています。
こ、これも私のせいなんでしょうか!
なんかごめん、ホントごめんね…!?
謝ろうと口を開きかけた時。
ストラス君が恐る恐る、といった感じで近付いて来てくれました。
…無理、させてますよね…?
眉をハの字に下げて、少し情けない顔で上目遣いにこちらを見やる彼に、罪悪感ゲージが振り切れます。
叱られた仔犬みたい。
「あの…えっと。
言い方キツく感じちゃったかな?
傷ついちゃったならごめんね」
「いえ…!
私の方こそ、強引に話を進めようとしてごめんなさい。
腕の怪我がどうしても心配だったの。
治療魔法が使えるから、できるだけ早く治せたらなって思って…。
いきなりこんな事言われてビックリしたよね」
「いや!
違くて、ビックリしてない!
あーいや、ある意味ビックリはしたんだけど、貴方にじゃないよ…?
治療魔法してくれるんなら、ありがたいと思うもん」
ん?
ビックリしたけど、私にじゃない?
それって、どういうことだろ…
ストラス君は『やっべ』って呟きながら、視線をすすすっと上に上げていった。
私も彼と同じように、すすすっと顔を視線の先に向ける。
その先には…
ネル様の麗しのお顔がこんにちはしていました。
目が合うと、柔らかくふにゃんと微笑まれる。
あああかわいいいい!
ふにゃんて、何もう。
信じられない可愛さです!
カッコ良くて可愛い、さらに優しい、こんな人が存在するなんて異世界さんは凄すぎます。
いけない、昇天しそう。
口をポケーっと半開きにしてまじまじと眺めちゃいました。
とろけるような眼差しで大きな瞳がこちらを見返してくる。
なんて破壊力なんだか…!
心の中で悶えていると、ストラス君が耐えきれないといった様子で話しだします。
「…もーーー!
ズルいですよ王子殿下ぁ!
この子にばっかりそんな笑顔向けてー!
しかも変わり身早すぎです。
さっきとんでもない殺気の目ぇしてたじゃないですか、臨戦態勢のオーガみたいな。
ロイヤルオーガがあらわれた、みたいなー!
俺、『あっ死んだわ』って一瞬覚悟決めたんですからね!?
治療受けるのもダメ、断るのもダメ。
って、もーどうしたらいいんですかぁー!」
………。
えっ?
ネル様=オーガですか…?
上をまじまじ見てみると、やっぱり綺麗なネル様の微笑みがまぶしい。
ないない。
それは無いですよストラス君?
こんな可愛いオーガがいてたまるかですよ!
オーガって鬼でしょ?
ストラス君は何を錯乱しているんでしょうね。
お稽古で目まで疲れちゃってるのかな。
ネル様は『おや』と呟き、きゅーっと私を抱きしめた後、ストラス君に向き直ります。
ちょ、腕で目の前がホワイトアウトしています!
何も見えない…
目が見えて無い分、ネル様の美声の破壊力が上がります。
耳が幸せだコレはやばい!
「何のことでしょうねストラス?
上司でもある私に対してオーガとは、少々口が悪いですよ」
「不敬ですわね」
「不敬ですな」
「信じられませんわ!」
「ないわぁー」
「お前、マジないわぁー」
「味方がいない!?
てか、王子殿下の目が!目がああぁ!」
またからかわれています。
これもある意味、彼に対する愛情なのでしょうね。
ストラス君の顔には大きく『ガーン!』って書いてあるんだろうなーって分かります。
からかいがいあるんだろうな、彼はリアクション大きいし。
皆さん程々にね?
この空気につられて、ちょっとおかしくなっちゃってクスリと笑う。
…単純ながら、ちょっと元気が出てきたかも。
ストラス君には悪いけど、皆さんの会話に感謝です。
私がずっと落ち込んでると、多分、ネル様たちに心配かけちゃいますから。
騎士さん達のテンポの良い会話は止まらない。
「そりゃあ、ストラスお前。
ここまで愛し合ってる2人を引き裂こうとする方が野暮なんだよ。
その怪我、気合いで治せねーの?」
「先輩!
俺、人間だから無理です!
あとあと、引き裂こうとしてません」
「まあ、言い方が悪かったよなぁ。
しんでしまいますは思っても言っちゃあ駄目だな」
「まあ、あれだ。空気読め」
「読めたためしがありません!」
からかわれすぎです。
もう、笑っちゃうじゃないですか!
ダメですダメです、爆笑なんてしたら失礼ですよ私ー!
でもどうしても耐えきれなくて、クスクスと小さく肩を震わしちゃいます。あちゃー。
そしたら、周りからホッと息をつく気配がした。
…おや?
顔にかかってたネル様の腕が、優しく肩にまわされます。
彼もちょっと笑っているのが気配で分かりました。
笑ってるのが私だけじゃなくて、ほんのり安心しました。
視界が開けたので、目をあけてみる。
……騎士さん達が揃いも揃って私を見てて、ギョッとしました。すみません。
彼らは照れたように頬を指でかいて、私に言います。
「…荒っぽい会話聞かせちまって、すみませんね。
お嬢さん。
元気出ましたか?
ウチのストラスが無神経な発言して、落ち込ませちゃったみたいで。
心配しましたよ。
もう、大丈夫ですかね?」
「あいつ言葉選ぶの下手なんですよ。
本当に、貴方を傷付ける気持ちなんて無かったと思います。
ちょっと王子殿下の迫力にビビっちゃっただけで。
厚かましいお願いですが、ストラスのこと許してやってくれませんか?」
比較的コワモテなお顔を優しく緩ませて、私を気遣う言葉をかけて下さいます。
はわわ、ありがたいことです…!
「いえ、許すだなんてそんな!
こっちが申し訳ないくらいです、いきなり落ち込んでしまって。
皆さんにも気遣わせちゃったみたいで、ごめんなさい。
…さっきの会話、元気出ました。
ありがとうございます」
「ぐはっ」
「うはっ」
「ぶはっ」
「!?」
何故だろう周りの騎士さん達が鼻を抑えてうずくまってしまった。
え、やっぱりブスの笑顔は凶悪でしたか?
ごめんなさい。
硬直してると、アマリエさんが呆れたように声をかけてきました。
「皆さん情けないですわよ?
まぁ、気持ちは分からなくも無いですけどね。
ミッチェラ。
ストラス騎士の怪我を治してあげなさいな。
貴方は治療魔法が使えるでしょう。
…王子殿下も、それでよろしいですわね?
まったく!
もう18で成人したのですから、もう少し嫉妬心を抑えることをオススメしますわ?」
「分かりましたわぁ。
このミッチェラにお任せ下さい!
リィカ様のお手を煩わせるほどの治療でもありませんもの!」
ふん!と高い鼻をさらに高くして、私にウインクしたのち、ストラス君の腕を取るミッチェラさん。
どうか、優しく触ってあげて下さいね。
ぎゃああ掴み方あらいイタイ!なんて悲鳴が聞こえています。
「……これは間違いなく嫉妬案件ですよ?アマリエ。
だって彼女の治療魔法、すっごく気持ちいいんですよ。
あんなの使われたら確実に惚れられます。
お断りです。
これ以上ライバルを増やしたく無いんですよ!」
唇を尖らせてスネたように、ポツリと抗議するネル様。
半眼でアマリエさんを見ています。
そんな顔も素敵です大好き!
いや、そうじゃない!
聞き逃せないセリフが混じっていましたよね?
ありましたよね。
一瞬、自分の耳がおかしくなっちゃったのかと思いましたよ。
……ありえないですよね…?
「ーーー待ってくださいお願いします18歳ってネル様の事ですよねそうですよね本当に!?」
こんな色っぽい、大人びた美貌の18歳って存在するんですか!
ネル様まさかの年下彼氏ですかーーー!?
確かに、行動はどことなく幼く見える時もありましたけども。
20代半ばくらいかと思ってました…
私、20歳!
年増でごめんなさーーい!
「そういえば、年齢は言って無かったですね?
貴方の事で頭がいっぱいで、色々と言い忘れていますね…
私は18歳です。
先日成人したばかりです」
「……聞き間違いじゃ、無かったんですね…!?
貴方みたいな大人っぽくてカッコ良い18歳の人なんて、見たことないですよ!
…ネル様、ごめんなさい。
私の方が年上なんです。
今年で20歳になったんです」
「えええええ!?
20歳なんですか!?」
そうなんです。
2つ年上みたいです。
い、嫌がられないかなぁー…!
日本では『女子高生ってだけでモテる!』なんて言ってるクラスメイトがいたし、若い方が喜ばれたんじゃないだろうか。
まあ私は女子高生だろうと非モテまっしぐらだったからアレですが。
ヴィレア王国の皆さんは、年上派?年下派?
ネル様も周りの皆さんも、ギョッとした表情で私を見ています。
ひいいいい、視線怖いー!
「ストラスと同じくらいかと思ってた…」
「いやいや、魔法陣で召喚されたんだし成人はしてる筈だから。
女性成人年齢ギリギリの16歳だとばかり…」
「見た目若すぎる…」
「年を重ねても美しいとは、王子殿下羨ましすぎるぜ…」
騎士さん達が口々に、なんか私の見た目が幼いと言っています。
フォローして下さるのですか、ありがとうございます…!
外国人から見たら日本人は幼く見えるって聞くし、そういうのもあるのかな。
見た目年齢だけでもそう見てもらえるなら、助かります。
アマリエさんとミッチェラさん、固まってますね…。
予想外、だったのかな?
うう。
ネル様の反応が心配です…
そろり、と顔を上に向ける。
大きな目がまん丸です王子様。
「それでは是非、敬語は無しで話して下さいカグァム嬢!
あと敬称も無しでネルとだけ呼んで下さい楽しみです!」
「そこなんですか!?」
「王子殿下…」
「王子殿下…」
「まあ、気持ちは分からんでもないけど王子殿下ぁ…」
私たちに向けられる視線が一気に生暖かいものになった。
「相変わらずぶっ飛んでますわねー!」
ミッチェラさんの正論が聞こえる珍し…げふん。
いや、私はそういうの構わないけれども。
ネル様王族なんだし、人前で呼びすてとかはマズいのではないでしょうか!?
思わず確認のためにアマリエさんを見ると、両手で大きくバツを作っていました。
ですよねー!
私が彼に、それマズイですよーって教えなきゃいけないんですね分かります。
アマリエさん動かないし。
夫の間違った認識を正してあげれることも、王族の妻になるためには必要…なのかな?
が、頑張るぞー。
キラキラの視線にもう心折れそう。
「さあ、どうぞ!
どうぞ私の名前を呼んで下さい!」
キラキラキラキラ
「まぶしい!
って、違う!
ネル様…それは駄目なんです。
呼びすてとか、タメ口で話したりはできません。
貴方は王族で、国民から敬われなければいけませんから。
…私も今はヴィレア国民なのです。
敬語で話さなければなりません。
周りに貴方が軽く見られてしまっては、いけませんもの」
よし言った!
ネル様、崩れおちた!マジか!
慌ててアマリエさんを見る。
顔を引きつらせながら、今度は手をマルの形にしています。
私の聞きたかったこと、分かっていらっしゃるんですね!
流石です!
人前じゃなきゃいいよね?って確認したかったの。
彼は見事なまでにOTLのポーズになっている。
お、王子様がそのポーズはよろしくないかと…!
早く立ち直らせなければ!
ドレスの裾が地面に着かないようにかがんで、ネル様の耳元に口を寄せます。
ちょっと緊張しちゃうなぁ…
「ねるしぇりあす?」
声震えた。
ドンマイ私。
「ーーーッ!?
カグァム嬢…!?」
しかしミッション完了です。
ハッとした表情で立ち上がるネル様。
良かった立ち直ってくれた!
…チョロイnごほん。
うるうるした瞳で見つめてくる彼の手を取る。
お互いの小指の赤い印が、静かに揺らめいています。
彼の目にもそれが見える位置まで、すくい上げる。
フワッ、とネル様のまとう気の色がひどく甘いものになる。
きっと私の気も、同じような色に染まってるんだろうなって少し笑っちゃった。
もう一度彼の耳元に顔を近づけようとつまさき立ちすると、察したのか、体を折ってかがんでくれる。
ほんと、背が高くてスタイルが良いのです。
私は小さいからすっごく身長差があるの。
…やっぱり、18歳には見えないなぁ。
紳士ですし。
たまに紳士すごいこわいってなるけど。
私たちにしか聞こえない小さな声で、彼に語りかけます。
「ねぇ、ネルシェリアス。
人前ではダメって私は言ったよ。
2人きりの時とか、こっそり話したらいいんじゃないかな…。
こう話すのは、みんなには秘密。
知ってるのは2人だけってことで。
…だめ?」
「~~~~ッ!!!」
ぎゅーーっと抱きしめられた。
あ、ありがとうございます……
至福です。
あったかい。
「ダメなはずない。
大変ありがとうございます!
カグァム嬢…」
「そ、そう!
良かった。
じゃあこれからは、2人きりの時だけこうして話すね?
…あとね、私からもお願いがあるの」
「なんでも叶えます」
「ふふ、心強いなぁ。
あのね…?
私の名前、レイカなの。
カガミは苗字の方。
なかなか言い出す機会がなくってそのままにして来ちゃったけど、名前で呼んで欲しいかな?
2人きりの時だけ」
ついでとばかりにお願いしてみた。
あっ
「」
しまったーーーー!
タイミングミスったーーー!
また崩れ落ちた、王子様がそんなんじゃいけませんよー!
アマリエさんが呆れすぎてもはや変顔をしている…
「ちょ、起きて下さいぃー!
いいですから、そんな反省しなくていいですから!」
「どうか、どうか不出来な夫をお許し下さい…!
くっ、
何を今まで得意気に苗字呼びしていたんだ私は…どうして確認をしなかったんだ!
こんな阿呆はストラスに一撃もらっとくべきだった。
いや今からでも遅くないか…!」
「そんな反省の仕方やめてーーー!」
だいぶ本気の目でストラス君に向かって行こうとするネル様にしがみつく。
ストラス君ビビってますから!
もし王子様に怪我させたなんてなったら、門番くんも心労でしんじゃいますから!
やめてあげて!
「これからいっぱい、レイカって呼んで下さい。
反省されるよりも、その方がずっとずーーっと嬉しいんですから!
ね!
お願いです」
「大好きです!」
「私もですーーー!」
ひしっと抱き合う私達!
なんだこれ!
周りの視線が生ぬるいなんてもんじゃない。
これは、痛いものを見る目です。
しかし『羞恥心<ネル様』なんですすみません!
この空気を破ったのは、やっぱりあの人でした。
いや…あの人たち、かな?
「んっぎゃーーーー!!!
痛い痛いしみるしみる何これ拷問!?
拷問魔法だ!」
「失礼ですわよ!
男性のくせして情けない。
私、治療魔法はちょっと苦手なんですの。
我慢してくださいまし!」
「なんのフォローにもなってない!
苦手なのにあんな堂々としてたの!?」
「やかましいですわぁーー!
治療速度加速!」
「ぎゃーーー!」
私たちの甘ったるい雰囲気は、全部そっちに持っていかれましたとさ。
無表情で彼らを眺めるネル様の目が、とってもロイヤルオーガです。
殺気殺気!
漏れてる!
ストラス君、ごめんね疑って。
人は誰しも、心に鬼を飼ってるんだって言うもんね。
どうやらそのオーガさんは貴方をロックオンしたみたいだよ。
頑張ってね?
私は悟りのスキルを取得した音を、この時確かに聞いた気がしました。
ちゃらららっちゃっちゃっちゃ~ん♪
王子様、好感度だいじにしてたけど殺気もれちゃいましたね。
しまって、しまって!
(追記:この世界におけるオーガさん。
モンスターであり、知性のない殺人鬼みたいなもの。身体は筋肉隆々、顔は平均顔(ブサイク扱い)。とっても強いモンスターです)
この世界にはスキルとかはありません。
麗華さんが、そんな音が聞こえたなーって気がしてただけです。
読んでくださってありがとうございました!