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新キャラのクセ者度がひどいです。

なんか毎回そう言ってる気がしますてへぺろ!


(2/9//イラスト追加//ストラス)

挿絵(By みてみん)

この画面がちょっとうるさい感じは間違いなく彼ですね(・ω・)!


 目を丸くする王宮名物侍女コンビ。

 頭を抱える近衛騎士。

 なぜかワクワクした顔をしている美貌の女性。


 醜さに定評のあるヴィレア第四王子殿下は困った顔をしている。

 彼に指を突きつける甲冑A。



 甲冑Aの口にする言葉は「王子よ、どうか稽古をつけてくれ」。





 ここは王宮の廊下である。


 もう一度言う。



 王宮の廊下である。






 ヴィレア王国の優雅な広ーーい廊下の一角。

 そこは異様な雰囲気に包まれていた。


 たかが下級騎士が王子に指を突き付けているのだ、当然の空気である。

 これは厳罰モノだ。

 王子が望めば、下手をしたら打ち首もありえる。

 たまたま近くにいた使用人たちは厄介事のにおいに、我先にとその場を立ち去っていた。

 誰も好き好んで、厄介事に首を突っ込みたくなどないのである。


 しばらく沈黙が流れた。




 この空気を(悪い意味で)打ち破ったのは、またも甲冑Aである。




 「あれ?

 ネルシェリアス王子殿下、聞こえて無かったですか?

 えーとね、俺に稽古を…」


 「ふんっ」


 「うおーーーーっ!!?」




 またも近衛騎士により投げ飛ばされる甲冑A、すなわちストラス。

 見事な一本背負いである。



 しかし、ストラスも負けてはいない。

 2度も無様に転んでなるものかと、瞬時に受け身をとり、今一度起きあがる。

 身体の関節にバネが入っているかのような、人間離れした動きであった。

 こんな人間に運動の才能など持たせてはいけない。



 起き上がったストラスはキッと近衛騎士を睨みつける。

 幼い顔立ちのためか、いまいち迫力がないのが残念だ。



 「何するんですかリーガ先輩!

 もう、さっき首イカれるから甲冑に一本背負いはだめだって注意したばっかでしょうに!」



 「やかましいわ!

 どうして俺がお前に注意されたことになっとるんだ、違うわ!

 常識的に考えろ、なんだお前の発言は、行動は?

 王宮に仕える騎士として不適切だと分からんのか!?」



 「はいー?

 えっと普通じゃないですか。

 味方の首はいたわりましょう、あと王子殿下は俺に稽古つけて下さい。

 でしょ?

 行動についてはちゃんとお願いしてるから問題なしです」



 「ふざけるな問題だらけだ。

 誰が味方か、俺にはお前が敵にしか見えん」



 「うそっ!?」



 ガァァァン!!と効果音が聞こえそうな勢いでショックを受けるストラス。

 いちいちリアクションの大きい男である。

 場が違えばムードメーカーにもなり得るのだろうが、今はただひたすらうっとおしい。



 侍女長のリーガへの同情ゲージが上がっていく。

 それこそウナギ登りだ。

 そう、いつも見ている光景にとても良く似ているのである。




 「まぁ、とんでもない馬鹿者ですのねぇー。

 信じられませんわ!」




 隣の馬鹿者が何かほざいている。

 …貴方もねミッチェラ。

 さすがにあの甲冑Aほどでは無いけど、くらべられる時点で駄目駄目だと気づきなさい。



 かろうじて口に出さずにこらえられたのは、侍女長の理性の賜物だろう。

 こめかみがピクピクしている。

 今はそれよりヒドイのが暴走しているのだ、こっちは後で給湯室に呼べば良い。

 侍女長が生ぬるくミッチェラを見た。

 こちらは気持ちにひと段落ついたようである。

 合掌。




 と、ここでようやく渦中の王子が口を開いた。

 声には強い困惑の色が見てとれる。



 「ええと。

 ストレス?」


 「ストラスです王子殿下!」



気持ちは分かるけど失礼ですよ王子。

 キラキラと輝く琥珀の瞳がうっとおしく王子に向けられた。



 「そう、ストラス。

 君は私に稽古を付けてほしいと言いましたね?

 …今は女性に王宮を案内している最中ですので、不可能です。見て分かりませんか?

 そして彼女を驚かせたことをまず詫びなさい。


 そうしたら話だけは聞きましょう。

 貴方は近衛騎士に最も近いと言われている、実力ある平民騎士…。

 そうですね?

 ソノド村出身のストラス・ミズィー。

 歳は15歳」



 「王子殿下に名前を覚えてもらえてるなんて、光栄です!

 すぐ謝ります」




 最初にストレス呼ばわりされていたが…ごほん。


 王子は相変わらず博識で、時事ネタもお手の物のようだ。

 数多い騎士、それも下級騎士の名前やデータなど、護衛される立場の者は知り得ないのが普通だ。



 ストラスは王子を再度キラキラした目で見やると、たどたどしくだが最敬礼をとる。


 仕様を覚えているだけマシというものだ。

 ストラスはまだ騎士の試験に受かって、4ヶ月しかたっていない。平民である彼は王宮に仕えるまで、最敬礼などしたことがなかった。


 王宮の騎士は実力さえあれば平民でもなることが可能である。

 近衛騎士も、実力からなる護衛部隊と、式典などのための見栄え重視の貴族部隊が存在するのだ。

 平民騎士は、あこがれの成り上がりの職業1位なのである。

 それにわずか15歳で合格したあたり、ストラスの異常なまでの身体能力の高さがよくわかる。

 ちなみにリーガは実力部隊の準トップである。




 王子の背から、おずおずと美貌の女性が顔を出す。

 そのしぐさはひどく愛らしいもので、王子は思わず抱きしめたくなったが、場面が場面だけにぐっとこらえた。

 他の面々も、彼女をうっとりと眺めている。



 対してストラスは、特に美貌に反応するでもなくただ元気良く声をかけた。

 脳筋マジ脳筋。




 「俺が驚かせちゃった女性って、貴方だよね。

 ごめんね!

 俺、声大きいってよく言われるんだ。

 ビックリするかもしれないけど悪意はないから、慣れて?」



 両手を前で合わせて、『ごめんねー』のポーズをしている。

 爽やかに言いきってウィンクを一つ。

ぱちーーん☆




 軽い。


 そしてタメ口である。

 どうやら、彼女を年下か同い年くらいに勘違いしているのだろう。



 あまりの軽い物言いに、美貌の女性はつぶらな瞳を見開いている。

 この王宮に来てからこんな風に話しかけられたのは初めてなのだ、無理も無い。

 まして相手は幼いとも言える少年なのだ。




 ストラスの頭に、王子直々のチョップがおりた。





 ガッッッッッ!!!!!





 強烈な一撃である。

 拳で無いのは、美貌の女性に遠慮してのことだろうか。



 またも「うおおーーーー!?」という悲鳴が上がった。

 自業自得この上ない。

 不思議と先ほどの一本背負いより痛いようである。

 王子のチョップは、まるで鈍器を叩きつけたような音がしていた。


 ストラスは床をのたうちまわっている。




 周りは驚いているものの、「だよねー」とでも言いたげな表情である。

 見習い侍女など親指を立ててサムズアップしている。

 満足気な表情だ。

 ただ、今まで王子がキツく当たる姿を見たことのなかった美貌の女性のみが硬直していた。

 その様子にのみ、少し「しまった」という顔をする王子。

 この際ストラスはスルーである。



 「だ、大丈夫なのですか彼…?」


 「大丈夫ですよ。

 強化もしていないこの程度の攻撃で音を上げるようじゃ、護衛騎士は務まりませんから」


 「で、でもすごい痛そうでしたが…」


 「大丈夫ですよ」


 「音がすごくて…」


 「大丈夫ですよ」


 「そうですね」



 王子はごまかしに成功した。

 手加減までしたのである、これで愛しの彼女に怖がられでもしたらたまらない。



 女性はストラスを助けるのをあきらめたようだ。

 遠い目をしている。


 なに、彼は元気に床を跳ね回っているから大丈夫だろう。

 もともと叱られて当然の場面であったのだし、しつこくして王子に嫌われる方が彼女も嫌なのだ。

 世の中、突っ込まないほうが良いことなどたくさんある。


 彼女の感性はミッチェラで鍛えられていた。




 皆がしばらく、じっとストラスを見ていた。

 バタバタとのたうちまわり、うずくまって悶えた後、またバネ人形のごとく跳ね起きるストラス。

 視線は王子に一直線だ。

 キラキラ度合いが増しているのは気のせいだと思いたい。

 空気が読めないって怖いですね。




 「やっぱり…やっぱり!

 ネルシェリアス王子殿下ぁ、すごいです!

 なんで強化もせずにあんな強烈なチョップができるんすか。

 俺、感動しました…!

 王宮の誰より殿下が一番強いって聞いてます、それ本当だったんですね!


 今日じゃなくていいんで、できるだけ早く、俺に稽古つけて下さいお願いしますーーーー!!!」





 ははーーーーっ!と土下座するストレス。

 いや、ストラス。




 王子の顔が引きつるのを誰が責められようか。

 自分本位な理由の、(悪い意味で)圧倒的なまでのパフォーマンスである。


 人前で土下座されるなど、知らぬ者が見れば、されているネルの好感度が下がることは間違いない。

 容姿の醜さで嫌われないよう、好感度をとても気にする王子にとって、最高に迷惑な話である。



 どうしてこうなった。

 ストラスだからです。



 こんな非常識の塊みたことない!




 ………。

 




 誰も喋らない。

 皆が、この場をどう収めるか考えあぐねているのだ。



 原因たるストラスは、輝く瞳で王子を見ている。

 メンタルの強いやつだ。


 はたして、沈黙をやぶったのは鈴が鳴るような美しい一声だった。




 「私もネル様のお稽古見たいなぁ」


 「やりましょう」




 あれは条件反射だった、と後に王子は語った。



短めでした。

次回は剣のお稽古!


読んで下さってありがとうございました!

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