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案内道中

新キャラです。

ミッチェラさんといい王宮こんなんばっかですね、大丈夫かな(笑)

 ヴィレア王宮のとある一室。

 侍女長たるアマリエが仰々しくお辞儀をし、扉を開けた。




 「どうぞお入り下さいませ。

 リィカ様は殿下が来るのを、今か今かと心待ちにされていましたわ?

 朝から何度も、ドレスをチェックしてらしたのですよ」



 「ちょっアマリエさん!?

 なんで言っちゃうんですか恥ずかしいじゃないですか…!」




 部屋の中から女性がすっ飛んで来る。

 下ろしたままの黒髪が顔にかかり、整った容姿がさらに華やかに彩られる。

 相変わらずの美しい姿を見て、王子が頬を染めてほほえんだ。




 「本当ですか!

 そんなに気にしてもらえて嬉しいです、カグァム嬢。

 今日の黄色のドレスもよく似合ってる」



 「ううううう!

 ありがとうございます、照れます…!

 やっと会えて私も嬉しいです、ネル様…」



 「カグァム嬢…」



 「朝から甘酸っぱいのですわぁぁーーー!」




 侍女長が2人をちゃかす。

 それにやすやすとノセられる王子と美貌の女性。

 なぜか照れている見習い侍女。




 最近、王宮でたえず話題になる4人組だ。

 今日はどうやら王宮を散策するようである。

 王子が直接、美貌の女性を迎えに来たようだ。

 傍らには一人、護衛であろう騎士を連れている。この王宮では珍しく中肉中背な体に、機能と見た目が共存した甲冑を身につけていた。顔は半分がプレートで覆われている。



 騎士の姿を見たのは初めてなのか、美貌の女性は首を傾げた。



 「ネル様。

 そちらのかたは?」



 「ああ、近衞騎士のリーガです。

 リーガ、挨拶を」



 「はい。

 お初にお目にかかります、異国のお嬢さま。

 近衞騎士をしております、リーガ・トリネウズと申します。

 本日は王宮内に他国の方々がいらしているので、護衛を強化しているのです。

 窮屈に感じるかもしれませんが、本日はお嬢さまも含めて私に護衛をさせていただきたい。

 同行をお許し下さい」



 「まぁ、そうだったんですね!

 騎士の方とお会いするのは初めてです。

 どうかよろしくお願いしますね」



 「ありがたきお言葉!」



 美貌の女性がにっこりと笑いかける。

 騎士は顔を引き締めてはいるが、耳の先が赤くなっていた。

 どうやら、騎士もまた彼女の魅力に当てられたようだ。

 王子が大人げなくちょっとムッとした顔をして、さりげなく美貌の女性を自分の方に引き寄せる。自重して下さい。



 騎士はそんな王子の様子に目を丸くした。




 「いやはや、仲がよろしいとはお聞きしておりましたが…。

 王子殿下のこのような表情、見るのは初めてです。

 めでたいものですね。

 いつも冷静沈着、無表情でいらしたあの殿下が……恋とは良いものですなぁ」



 「「まったくですね(ですわ)」」



 侍女コンビがしみじみと同意する。

 2人とも声に本気の色が混じっているのは、現在も恋のお相手がいないためかもしれない。

 はぁ、とため息が聞こえた。




 指摘されて照れてしまったのか、王子たちの顔はほんのりと赤い。

 少しまごついたが、王子が口を開いた。

 語りかける相手はもちろん、愛する彼女である。




 「えーと…。

 とりあえず、案内をはじめましょうか?

 まずはこの部屋の近くから案内していって、夕方には、私の家族を紹介します。

 大丈夫ですか?」




 美貌の女性は少し緊張したように王子を見た。



 「はい、分かりました。

 …ご家族に会うのは、とっても緊張しますけどっ、頑張ります!」



 「ふふ、よろしくお願いしますね」



 王子は笑って、彼女の手を取った。

 今日も幸せそうで何よりだ。



 前から近衞騎士、王子と女性、侍女ペアと続く。

 王子は彼女の負担にならないよう、歩幅を狭めて歩いている。

 そんな彼に、美貌の女性は「ありがとう」と笑いかける。


 皆でその場をあとにした。






 美貌の女性はつぶらな瞳をしっかり開いて、前を向く。


 漆黒の瞳がじっと揺らがずに騎士を見ていた。






 ………。




****************





 ………。





 私は今、とっても疲れています…。

 麗華です。

 麗華です…。



 どこぞの芸人さんみたいですね、はい。




 なぜ疲れているか?

 それはですね。

 理由が二つあるのです。




 まず、昨日の黒い手紙のこと。


 ネル様に私はふさわしくないって、脅しのような内容の手紙でした。

 だから、懲りない私にイジメや嫌がらせなんかがあるんじゃないかなーって思っているんです。

 それで警戒している訳なんですね。

 ただ…


 私のバカ高い魔力量が悪いのか。

 『相手の感情をオーラであらわせ』なんて魔法を使ってみたんですが、まあ精度が細かすぎる!

 ささいな一喜一憂でころころオーラの色が変わるし、『ちょっと悲しい→薄紫』『もうちょい悲しい→青紫』なんて、分かるか!

 細かいし、目が疲れます…

 視界が色だらけになったので、酔っちゃいました…



 使いはじめてギョッとして、一人のメイドさんをガン見して卒倒させたのは申し訳なかった。

 なんか鼻のあたりが重傷だったそうです。

 こんなブスにじーっとみられたら怖いよね、本当にすみませんでした!

 お、お大事に!




 私の魔力制御はまだ甘いらしく、この魔法は、精度MAXかゼロのどちらかでないと使えないようでした。

 だから、今は知らない人と目があったら瞬間的にオーラ魔法を使うようにしています。



 リーガさんは優しいオレンジ色のオーラでしたね。

 ネル様のそばにいる人が、黒いオーラをまとってなくて良かったです。

 ホッとしました!






 で、もう一つの疲れてる原因ですね。

 それは、これです…!




 (IN事務室)

 「これはこれは!

 噂のネルシェリアス王子殿下の奥方様ではありませんか!いやはや、お美しい方ですなぁ」


 ▽ブサイクさんが現れた!




 (IN図書室)

 「異世界からいらしたとは。

 なんと興味深いことでしょう!

 ぜひぜひ、またお話を聞かせて下され」


 ▽ブサイクさんが現れた!




 (IN医療室)

 「こーんなかわいこちゃん捕まえるだなんて、やるじゃないか王子様!

 しっかり捕まえておくんだよ!

 ああ、それにしても可愛いねぇ」


 ▽ブスさんが現れた!





 ▽…ブサイクさんブサイクさんブサイクさんブスさんブスさんブサイクさん!!





 どうなってるんでしょうこの王宮の顔面偏差値は?

 なぜか自信満々のブサイクさんブスさんの嵐です。


 私には美しいだの何だの、お世辞がたくさん。今朝も鏡見てきたよ、この顔が美しいなんてありえないわ…。

 フォローのお気持ちだけ頂いておきますね、どうもありがとうございます。



 会った方の中には、ネル様に少し高圧的な態度を取る人もいて、思わずムッとしていまいました。

 自分がブサイクだからって美形さんに当たるのは良くないのです!

 …これが、私の疲れの原因かもしれません。

 怒りの感情を抱くのって、とても疲れるんですね。普段誰かに怒りの感情を持ったりしなかったから、知らなかったです。





 重要職の方々だけでなく、メイドさん執事さんもこぞってブサイクブスさんが多い。

 そして、人によってはネル様に良くない気を持っている人がいました。

 ムムッ…


 ぶっちぎりで美人なのはやっぱりミッチェラさんですね。

 振り返ると、今日も笑顔がまぶしいです。

 ああ綺麗だなぁ。





 ネル様の手をきゅっと握る。

 あんな嫉妬の感情を向けられてて、疲れてないかな。

 大丈夫かな…?

 彼は今まであんな視線に、どれだけ耐えてきたのでしょうか。

 私みたいに醜い人に向けられる『嫌悪』『不快』なんかとはまた違うツラさがきっとありますよね。

 私はずっと綺麗な人を羨ましく思ってたけど、美しすぎるのも大変なんだな…




 彼の、指は細いけど大きな男性の手。

 透きとおるようなキメ細かい白肌、桜色の形のいい爪。

 この人は手だけでも芸術ですね。

 ああ、癒される。

 …私が癒されてどうするんだ!もう!

 でも素敵感触でやめられない!




 手をにぎにぎしてたら、ネル様がこちらを向いた。

 ネコみたいな大きな目を、さらにまん丸くしている。




 「カグァム嬢?

 …すみません、疲れた顔をしていますね。

 休憩にしましょう。

 少し歩くペースが早かったですか?」



 「あ、いえ。

 ペースは大丈夫でした。

 ただ、こんなに多くの初対面の人と話したのは久しぶりで、ちょっと疲れたのかもしれません…

 ネル様は大丈夫ですか?」




 「私は大丈夫ですよ、ありがとうございます。

 そうでしたか…

 確かに、初対面の人と話すのには体力を使いますからね。

 無理はさせたくありませんので、疲れたと感じたらすぐに教えてくださいね」



 「ありがとうございます」




 本当にありがとうございます。

 ご自身も疲れて無いはずないだろうに、それをおくびにも見せずに私をただ気遣って下さる。

 …相変わらず優しすぎます、旦那様。

 大好き。





 絶対誰にも譲りたくない、心の底からそう思います。

 彼の愛情は本当に心地がいい。

 ずっと一緒にいて欲しい。



 こんなこと考えてるのバレたら、彼に引かれちゃうかな…



 ごまかしましょう。






 「ネル様の笑顔でだいぶ疲れが取れました……」



 「ッ!?

 そ、それは良かったです」





 完了。


 顔を赤らめる貴方が愛しいなぁ。

 うっとりしちゃう。

 私の顔がゆるゆるなのが分かります。

 きっと締まりのない笑顔をしちゃってるのでしょう。

 仕方ないよね、ネル様効果だもん。

 まわりがピンク色なのがデフォな気がしてきました。

 この光景、よく見ますね。






 「…お二人とも、いつもこの空気に耐えているんですか…!?」


 「慣れましたわ」


 「ええ、慣れましたぁ。

 それに、業務時間外の時は頭つっこんでってリィカ様の愛情の取り合いに参加しています」


 「なんという……!」


 「それミッチェラだけですからね。

 私は違いますから」





 なにか聞こえますね。

 気にしないでおきましょう。

 私は今、ネル様分の補給に忙しいのです。

 私の名前が聞こえた気がしましたが、気のせいでしょう。






 じーーーっと彼をを見てしまう。


 あ、固まってる。



 動かないとまさに芸術品のようですね、どこをどうしたらこんな美形さんが生まれるんだろう。

 …彼とグリドルウェス王子殿下と血が繋がっているんですよね。

 ご両親の顔を想像できません。

 お二人とも、それぞれ真逆に個性が強い見た目ですもの…。



 ネル様のご家族と会うのが、別の意味で怖いような楽しみなような。




 ………。





 グリドルウェス王子殿下、か。


 手紙で私への当てつけのように書かれてましたね…すみません、私がネル様を諦めないせいでそんな扱いをされてしまって。

 手紙の内容を告げるわけにもいかないので、心の中で謝ります。




 ………。







 そんなことを考えていると、なにやら人がこちらに走ってきました。


 えっ?



 王宮の廊下で走っちゃう人なんているの!?

 何事!?



 唖然としていると、まっすぐ走ってきたその人はリーガさんに捕まりました。

 見事な一本背負いです。

 この世界にも一本背負いがあったんですね。

 うわ、投げられた人も簡易甲冑だし痛そう…



 ネル様がいつの間にか再起動していて、私の前に立ち、投げられた人から私を守るような体制になっていました。

 紳士ですほんと惚れざるをえない!


 一瞬、投げられた人を忘れてネル様に視線が釘付けになってしまいました。

 緊張感がなくていけませんね。




 リーガさんが苦々しげな表情をしています。

 重い口を、開く。




 「ストラス…!」


 「……ッつぅーーー!何するんですか先輩!甲冑のやつに一本背負いなんて、下手したら首の骨ヤラれてますよ!」


 「やかましい。

 お前が悪いだろう?

 …この間、廊下を走るなと注意したばかりだろうが!」




 なんだろう。

 リーガさん、アマリエさんと同じ苦労人のかおりがするのですが。

 小学校低学年の担任の先生、みたいな…?

 あ、アマリエさんも頷いてる。

 ひどく同情的な視線です。




 投げられた人、ストラスさん?

 無造作な短めのライトグリーンの髪に、琥珀の瞳、比較的ととのった顔の方です。 背は低めかな。


 この王宮でそんな人が見れるだなんて、ちょっと感動です…!

 さっきから、初対面の人はたいていブサイクブスさんばかりでしたから。

 いるんだ、普通の人!



 感心したように見ていると、ストラス青年は起き上がりいきなりポーズを決めました。





 ビシッッッ!!!!





 仁王立ちして、人差し指をネル様に突きつける甲冑A。




 …この人、ネル様が王子様だって分かってやってるんですか?

 優しい彼のことだから不敬罪はないかと思いますが、これあきらかにダメなやつだ!?

 ネル様の麗しいお顔がちょっと引きつっている。




 反対に、なぜかストラス青年の瞳はキラキラと爽やかに輝いています。

 その表情は非常に晴れやかだ。

 ニッと笑った唇からは無駄に白い歯が覗いていて、雰囲気が暑苦しい。



 リーガさんが頭を抱えている。

 かわいそうに…



 彼はネル様に向かって高らかに言い放った。




 「ネルシェリアス王子殿下!

 どうか俺に稽古をつけて下さい!」





 なにそれ超見てみたい。


 そして言いたい。




 ここまで雰囲気作っといて決闘とかじゃなくてそっちか!!!



感想の返信は明日になります!


読んでくださってありがとうございました!

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