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トリップ

美醜反転ものが好きなのですが、作品数が少ないので書いてみました。

はじめての小説なので拙くてすみません。

皆様、美醜反転もの書いて下さい!

読みに行きます!

 ーーー白昼夢でも見ているのかと思った。


 目を開けたら知らない場所にいた。自分の部屋にいたはずなのに。ここはどこなの?




 贅の限りを尽くしたであろう豪奢な大広間、中世ヨーロッパ風のきらびやかに着飾った貴族のような沢山の人々、大きな大きな魔法陣。

 高貴な身分であろうお方たちが誰も彼も目をまんまるくして私を見ている。

 イタいほどの沈黙がこの場を支配していた。値踏みするような、あまりにぶしつけな視線にさらされ顔を引きつらせながら、私はゆっくりと首を回転させた。




 … 見渡すかぎりのブサイク。ブサイク、ブス、ブサイク、ブサイク、ブス、ブサイク、ブス、ブサイク!



 そしてたった一人の超絶美形!




 なんなんだこの空間は!




 目の前の光景に脳みその処理が追いつかない。

 頭を抱えていまいそうになった時、少しフラつきながらその超絶美形が私の目の前にやってきて、おもむろに片膝をついた。


 思わず息をのむ。


 オパールみたいに神秘的な輝きを放つ乳白の髪に、シミ一つない白い肌。長いまつげに彩られた瞳は空を閉じこめたような青。スリムな身体に白をベースにした上質な貴族服が似合いすぎる。


 えっ何これ怖い!どうして貴方みたいな美しい人が私なんかにかしづいているの!?

 ぎょっとしてカチコチに固まった私に向かって、潤んだ瞳で見上げながらその超絶美形はうっとりするような甘い声で語りかけてきました。




 「美しい女神。私の妻になって下さいませんか」





****************





 皆さん初めまして。鏡 麗華と申します。




 突然ですが私はブスです。



 厚ぼったいひとえの瞳に低い鼻、歯並びまで悪い大きな口。伸ばしっぱなしの天パな髪、身長155cmの短足、ぽちゃ…いいえデブです。



  麗しい?華やか?全くもって名前負けも甚だしいです。


 苗字のおかげで鏡見ろや!もからかいの常套句です。両親もブサイク・ブスの部類だったのに、どうして子供にこんな名前を付けてしまったのか…理解に苦しみます。

 両親の見た目の悪いところばかりを受け継いでしまった私は、残念な見た目の両親と比べても圧倒的にかわいそうな容姿をしています。

 泣いていいですか。




 そんな私も本日ようやく成人しました。

 思えば友だちもおらずいじめられまくった20年間、よくぞここまでと自分でも思います。



 さいわい殴られたり蹴られたりといった肉体的ないじめはなく、悪口陰口シカト仲間外れなど精神的なものばかりだったので、なんとか生きてこれました。

 教科書破られたり上履き隠されたりも無かったし。

 すすんで皆の嫌がる掃除やクラス委員長なんかをしてポイント稼いでたから悪口程度のいじめで済んだんだと思います。もう自分で自分のたくましさを褒めてやりたい。




 そんなこんなで今日は成人の日。

 男子は真新しいスーツ姿、女子は華やかな振り袖で成人したことを祝う日です。




 私ももちろん振り袖を買ってもらいました。正直、ブスのくせに!って自分でも思うけど、私だって可愛い綺麗な物が大好きなんです。

 いつも目立たないように地味な服装ばかりだから、今日だけは着物だけでも素敵な女の子になりたい。

 そう言ったら両親は(実体験があるだけに)たいそう頷いて、それはもうビビるくらいの素敵な着物を買ってくれました。


 鮮やかな深紅色をベースに、黄色やピンクなど色とりどりの花が咲き乱れる乙女全開の振り袖。

 上品な白の帯をキュートな黄緑の紐で留めます。首にはふわっふわのリアルファー。

 もう見た瞬間に可愛すぎて鼻血出すかと思いました。

 こんなに素敵な振り袖を私が着れるなんて夢みたいです!




 いつももさもさで放置していたクセの強い髪には艶出しのオイルを塗り、高い位置で綺麗に結い上げます。

 ブスがオシャレしてんじゃねーよ!って言われるのが怖くて わざともさもさヘアなまま学校に行っていたんだけど、家の中ではいろんな可愛い髪型を楽しんでいたのでセルフ結い上げ楽勝でした。


 最後に大輪の花を髪に飾って、着付けは完了です。

 家の中でひたすら磨き上げられた自分の技術の高さにはホレボレします。




 憧れの可愛い格好がうれしくてくるくると周りながら眺めていると、ふと鏡が目に入りました。高そうな立派な姿見です。


 私は自分の部屋にはけして鏡を置きませんでした。鏡の向こうの醜い私と目が合うと、どうしてこんな姿で産まれてしまったのかと自分そのものを後悔してしまうから。

 今日ここにある鏡は、せっかくおめかしするのだからと母が贈ってくれたものです。



 いつだって泣きそうな顔でこちらを睨みつけてきていた鏡の中の私は、たまたま鏡が視界に入った瞬間だけは幸せそうにはにかんでこちらを見ていました。

 自分の幸せそうな顔なんていつぶりに見ただろう。何も分からない赤ちゃんだった頃の写真以降ではじめてだったかもしれません。




 ーーーそのはにかんだような笑顔さえ醜いなんて、なんて人生なの。





 そう思った瞬間に頭が冷えた。

 これからこの醜い顔にお化粧をして、成人式の会場に向かう予定です。


 そこには顔も着物も美しい少女たちがたくさんいて、男の子たちと一緒にきっと私を嘲笑うのでしょう。ブスのくせに、ブスのくせにと。私はきっと、ごめんねって笑って言いながら顔をうつむかせてはしっこに縮こまるんだろうな。


 …怖い。

 つらい。

 泣きたい。




 さっきまで高揚していた気持ちが一気にしぼんでいきました。ため息をついて前を向くと、鏡の向こうの私はいつもみたいな半泣きの顔。


 あーあ、せっかく綺麗に着飾ったのになあ。少女の花盛りにこんなんじゃ、将来結婚してくれる相手なんてできやしないんだわ。

 唯一 私に優しくしてくれる両親に申し訳なくて、素敵な振り袖に申し訳なくて、もう見ていられなくて目を閉じた。





 ーーー神様、神様。



 ーーーどんなに醜くても、貧乏でも、このさい性格悪くても良いです。どうか、



 ーーー私のことを愛してくれる人が欲しいです。




 そう願った瞬間に身体がカッと熱くなりました。


 そして脳内に聞いたこともないような甘美な声で、私と全く同じセリフが響き渡ります。それはまるですがるような声音でした。



 ーーー私のことを愛してくれる人が欲しいです。




 いきなりのことに混乱しながら、ジンジンと熱くしびれる瞼をなんとか開けると、そこは豪奢な大広間でした。




****************






 「美しい女神」



 誰が?え、何それどこにいるの?

 えっとこの美形さんなんでずっとこっち見てるのまぶしいんですけど。

 ありがとうございますごちそうさまですこの瞳に見つめられただけで一生モノでしょハリウッドスターも真っ青だもの、美しいー!




 「私の妻になって下さいませんか」



 あああいいなあー!

 こんな人に求婚されるなんて なんて羨ましい人なの、きっと美しい人なんだろうな見てみたい美男美女のカップル!

 私なんて結婚できるかどうかも怪しいし、万が一結婚できても醜い人なんだろうな。それか財産めあてかもしれないし。まあ一時的にでも愛してくれたなら万々歳なレベルかな、言ってて悲しくなってきたよー…




……。



……………。






 なぜだ。


 この超絶美形さんの視線が私から離れない。なにこれまぶしい。私的には眼福なんだけど、向こうからしたら目の毒(悪い意味で)なんじゃないのかな。


 そして沈黙が痛いです。

 周りの貴族のような人たちも息を飲んでこちらを見ているようで、居心地が悪すぎます。



 この場をどうしたらいいんだろうって困っていると、ふと超絶美形さんの形の良い唇が少し震えました。

 私の手を取りまっすぐにこちらを見て、そのまま熱を多分に含んだ声でささやくように語ります。



 「どうか再びの発言をお許し下さい、黒髪の女神。

 私はもう貴方に魅せられてしまった。

 このようなお目汚しな見た目で申し訳なく、身の程知らずは承知していますが、この気持ちを貴方に知ってもらいたいのです。



 愛しています。


 私は貴方に、私の妻になって頂きたい」





 ーーーええええええええええ!?





読んで下さってありがとうございました。

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