23:49. 19. Jun. 2785
冷たい風が街に吹く。
ここは少し郊外、そのなかでも国立公園となってお昼にはピクニックや日向ぼっこに来ている人がいる所だが、今は深夜。人は俺たち三人を除き、誰一人いない。ほかに存在しているのは鋭い牙を持った獣のカタチをしたものたちだ。
今し方、突然連絡が来てここに行けと指示された。
そして来たらこのざまだった。
モンスターが溢れかえり、異臭が溢れ、邪気のような悪意のようなものが集まり、今まさに爆発しようとしている爆弾のよう。
「療! そいつ任せた!」俺は暗闇に向かって叫ぶ。そこに黒鉄がいることはわかっているので、そちらに向かうモンスターは全て一任してもよいのだろう。
「……はい」少し遠くから声が聞こえてきた。やや低く、しかし響く声だ。その直後には肉を断ち切る無残な音が聞こえてきて、その後に叫び声も聞こえてきた。
「あとどれくらいだ!」「あと十かそんなところです」黒鉄はこちらに走りながら手短に答える。俺も刀を振りながらなのである程度言葉数が少なくなり言葉遣いも悪くなるけれど、黒鉄はあまりそのように感じない。戦いに余裕があるのか、同時に二つ以上のことができるのか。まあ、今はどうでもいいが。
「アヤメ、なんかできるか!」俺は少し離れた所で『結界』を張っているらしいアヤメに叫ぶ。どこにいるかはよく分からないが、すぐ近くに待機しておくから、とは言っていた。
「なんかぶっ放しましょうか?」丁寧なのだか雑なのかよく分からない言葉遣いで返ってきた。すぐ後ろから聞こえたので後ろを振り返るが、そこには何も見えない。「ただしちょっと待ってくださいね。時間がかかるし集中が必要なんで。あっ、あと、合図したらなにか防御なり離れるなりしてくださいね。死にますから」とても凄いことするんだな、この娘は。
「よし! じゃあ耐えるぞ、療!」「はい」なんとまあ冷静な声なのだろうか、彼は。