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黒白の傀儡  作者: 水凪瀬タツヤ/AQUA
第10章―合宿3―
101/134

【10-5】

「山道だから、足元気を付けろよ」

 一番後ろを走る北先生がそう言った。

 筋トレの後の走り込みは山道でだった。てっきりアスファルトの道を走るものだと思っていた私には少し喜びがあった。アスファルトの道を長く走ると足を痛めるから。だから山道がありがたい。

「大丈夫?」

 私が並走している沙紀ちゃんは少しつらそうだった。やっぱり彼女は体力が少ない。まだ1キロも走っていないのに。普段運動していないとこうなるのだろうか。

 やっぱり運動って大切だなぁ。そう実感する。

「大丈夫です。……まだ」

「まあ、気楽に行こ! 景色も楽しみながらさ」

「ええ。そうですね」

 足を振り、手を振り、走る。

 昨日、肝試しで使った山を走り込んでいて、夜とはまた違った山の風景がある。夜はやっぱり涼しくて、心地よかったけど、日中は暑い。七月後半だからまだこれぐらいで済んでいるけど、これが八月半ばの一番暑い時期だったら部屋から出ないと思う。

 風を全身で感じながら、だたひたすら無心で足を動かす。

 前のほうでは酒井くん、二条くん、皇貴、京華と体力のあるメンバーが走っていて、その一群の後ろに薫ちゃんが食いついている。その後ろを私と沙紀ちゃんがついてきて、そのまた後ろに小倉くんと先生だ。

 やっぱり余裕があるのか前の一群は走りながら談笑をしている。酒井くんが体力あるのが少し意外だった。彼は療と似て博識で、いわゆる運動の苦手なガリ勉だと思っていたからだ。まあ、運動部に所属しているし、あってもおかしくはないか。

 なにを話しているか気になりはするけど、やっぱりゆっくり自分のペースで走るのが一番いいかもしれない。

 この走り込みの一応のゴールは昨日の肝試しの折り返し地点だった小さな神社だ。祠と鳥居しか目印がないけど、私たちは全員そこに言っているので、先生は先導する必要がなくなってありがたいと言っていた。

 このままのペースで行くと十分もすると到着するだろう。

 あ、この辺り昨日のあの場所だ。

 辺り一帯の木がなぎ倒されている。この辺りだけやけに明るい。しかし、昨日の療は何かいつもと全く違う人に見えた。あんな風に怒りをあらわにするようなこと今までなかったし、意外だった、というよりびっくりした。

 それに幾分か疲労が見えていた。

 なにがあったんだろう。そうふとした瞬間に思ってしまう。ギルドに所属していてモンスターを斃していると聞いた時にはこんなふうに考えるとは思わなかった。彼はモンスターに対峙するときも授業と同じように冷静に対処するのかと思っていたから。しかし違った。

 私が襲われていたからあそこまで怒ったのかな。

 でも、同時多発テロの時、療はあんな風になっていなかった。私の想像通り、冷静に対処していた。

 なら、なにが違ったんだろうか。

「……はあ」

「どうしました?」

 思わずため息が出ていたらしい。

「ううん。ちょっと考え事。気にしないで」

「はあ。そうですか」

「うん。今は頑張らないと!」

「そうですね」

 くすっと沙紀ちゃんは笑った。笑えるってことは大分、余裕が出てきたのかな。長く走るコツみたいなのを掴んだのだろうか。それかこの良い雰囲気の中で気分がよくなったのだろうか。

 よし! もう一頑張りだ! 頑張って走り抜こう!

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