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黒白の傀儡  作者: 水凪瀬タツヤ/AQUA
第2章―魔法―
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【2-2】

 ◇  ◇  ◇


「それでどうするの、この()。学校に連れてくの?」いつも通り玄関で俺の準備を待つのは律だ。いつも通りの茶髪のポニーテールを揺らしている。

「そうだな。今日はまあ、ちょうど一週間だし都合がいいだろ? 一応校長には話を通してあるから、大丈夫だろ」その話題の少女を見て言う。

「そうだといいんですけど。正直早くめんどくさいことは終わらせておきたいです」彼女の言うとおりだ。

 一週間前、彼女ことアヤメ=ニシムラが来てからはずっと我が家に彼女を置いていた。単純に彼女の部屋がないという事もあったが、それから部屋をとるには時間がかかるし、それに金が取られるから、うちに置いていたわけだが、一つ違う事がある。

 簡単だ。律もうちに泊まっているということだ。理由も簡単。「女の子と男が同棲したらどうなるかは目に見えてるもん!」だそうだ。

 まあ、そのおかげで飯を作る手間がある程度減ったので助かったが。家計も少々助かった。買い物も律と割り勘だったので助かる。

「まあ、それは持って行けよ、アヤメ。ここで過ごすにはそれが必要だから」指差す先にあるのはクレジットカードほどの大きさのカードだ。個人証明書のようなもので、エリアを越えるにはそれがゲスト用でも必要なのだ。なければ軽い不正入区罪にあたる。これは最近できた法で、簡単にいうと、そのままだが、勝手に他のエリアに移動することだ。昔はそんなにきついものではなかったのだが、最近になって、とても厳しくなりつつある。やはりモンスターが増えていることも要因なのだろうか?もはや江戸時代のような藩制度のようだと俺は感じている。

「分かりました。肌身離さず、持っておきます」少し発音が危うかったぞ、アヤメ。「さて、そろそろ行くか」

 俺は戸締り、電気の元を確かめて、家から出る。玄関のドアを施錠し、いつものアパートの階段を下りていく。



「校長か……どんな人っていうと難しいな。まあ聡明な人ではあるが、それだけがその人を決める材料っていうわけじゃないからな」

 いつもの並木道を歩いているとアヤメが聞いてきた。本当のことを言うと幻滅するだろうし、いや幻滅ではなく驚愕してしまうのだろうが、まあいいだろう。凄さに驚くだろうしな。

「聡明かぁ……すごそうですね。一度会いたいです」

「いや、今から嫌でも会うぞ。でも、心配する必要は全くないからな。優しい人ではあるからな」

 アヤメはだまって頷き、その言葉を咀嚼しているようだ。「まあ、いいです。頑張ります!」少しはにかんだ。

「ねぇ、眠いよ。どうすればいい?」律だ。髪先の整った髪に薄めのメイクで、文字通り普段通りなのだが、顔だけは眠そうな顔をしている。昨日はまた夜遅くまで酒を呑んでいたので、それがまだ抜けないのだろう。それに寝たのが二時過ぎだ。俺はそれよりも後だが、まあ、耐えうるほどの眠気だ。

「シュンくんはどうしたらあんな遅くに寝ても平気でいられるの?」

「そりゃ……、慣れだよ。仕事で遅寝は慣れているからな。もっとも体質もあるな」

「そうか。そうね。そうだと思うよ」もう適当になりつつある。

「っていうか、少し酒の匂い残っているぞ。ブレスケアでもしとけな」そういうと律は口を押さえ、恥じた。しかしすぐに手持ち鞄に手を突っ込み、そこからブレスケアを取りだし一錠手にし口にした。「……これでよしっ」すっかり眠気も飛んだようだ。


 ◇  ◇  ◇


「おはよう、諸君!」瞬さんが教室に入ってきた。時計を見ると八時四十分少し前、そろそろ朝会の時間だ。

「おはよー、せんせー!」クラスのムードメーカーだ。

「おう、おはよう。今日もうるさいな」「せんせー、ひどーい!」「はは、ジョークジョーク」「そう聞こえないってー」

 いつも通りの光景だ。朝に瞬さんがジョークをふっかけ、それでクラスが和む。俺も正直にそれに釣られて笑うが、ついつい昨日あった光景とかを思い出したりしてしまうときもある。まあ、その前日にギルドの方の仕事があったさいに限るが。

 しかし、今は心から笑う。瞬さんは本心で動けと常々言っている。それに従うまでだ。

「さて、今日の連絡な。今日は六時間目の後も補習あるから、帰るなよ。特にお前」さっきのムードメーカーに向けてだ。

「分かってるよーだ!」「分からないから言ってるんだぞ」「もーー!」

「それと、今日の戦闘技術は模擬戦闘をやる。始めは二人でやるけど、途中からはグループを組んでもらってグループ戦をするから、早めに組んどいてくれ」クラスメートは応える。

「それじゃ朝のHRは終了。今日も頑張れよ」瞬さんは教室から出て行った。

「一時間目なんだっけ?」「数学だよ」至る所で声が聞こえてきた。

 今日も始まったのだ。

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