第2問 初仕事。
ああー。小鳥遊貢です。初期設定ではエロくなっていましたが、そこまでエロくなくなりそうなのであらかじめ了承してください。あと次話は、コメディーっぽくするつもりです。
「おっきろー。クータ。」
と、何かが僕の上で飛び跳ねている。
「ううん。」
呻き声と共に目を開けると、明るい日差しと、パジャマのまま僕の上で飛び跳ねているハルナが目に映った。
「なにやってんの?」
「よくあるお父さんの起こし方を実践してみた。」
「その時俺のあれが折れたらどうするつもり?」
「まあ。クータをそんなお下品な子に育てたつもりはありません!」
などという。
「まあ。いいや。」
大きな欠伸を一つすると、ベッドから起き上がり(どうやら昨日は何事も起きなかったようだ。
)ハルナを部屋から出して着替えた。
今日は少し冷え込みそうなので、黒いジーンズに、黒いTシャツにした。
外出するときは、黒のジャケットか、コートを着れば寒くはないだろう(もちろん俺が好きな色は黒だ)。
部屋を出ると、香ばしい匂いが満ちていた。
「おお。嬉しいねぇ。理想の人生だ。」
「なんか分かんないことあったら聞けよ。」
そういって八人掛けテーブルのお誕生日席に座る。
テーブルには焼きたてのパンとベーコンエッグ、サラダなどが並んでいる。
「オー。感激。」
こんな簡単に夢が叶うなんて一昨日までは露ほども思っていなかったのに、幸せは突然舞い込んできた。
“ピンポーン”飯を食い終わった俺が玄関を開けると、いつも警察の難事件(犯人が人間でないと思われる事件)を運んでくる、近くの警察の刑事、伊達 綱紀がいる。
「よう、宗谷。仕事持ってきたぜ。」
と中年のおっさんが入ってくるのだ。
ハルナとキョーコが驚いて、伊達さんの顔に炎を吐くのも仕方がない。
「ああー。大丈夫すか?」
居心地の悪さにむずむずしながら聞く。
「誰だ?この乱暴な娘っこはー?」
いかにもやくざのような口調で、怒鳴る伊達さん。
「いや。この子達は…」
言い掛けた時、ハルナが、
「私達は、暴漢クータにピーされて、連れ去られた可哀想な子猫なの。」
目に涙をためて発せられたその言葉は、妙に説得力があり、伊達さんは手錠を取り出し僕の手首にかけた。
「どわっ。ちょっ、何すんですかー。」
ハルナとキョーコは口を隠してクスクス笑っている。
「宗谷クータ。お前を誘拐および監禁の罪で現行犯逮捕する。」
「な、な、な、何いってんですか。この子達は狐の物怪で、僕は憑かれてるんですよ。」
その後三十分みっちり取り調べ(?)された。
「で、今日はどんな仕事なんですか?」
「ああ、そうだった。今日は貊の件だ。」
「貊、ですか?」
べったり寄り掛かってくるハルナの頭を撫でてやりながら(実はこの時キョーコが物凄い目で睨んでいたのをクータは知らない。)
「ああ、ありがと。」
キョーコが出した緑茶を受け取りながら、その件を話し始めた。
ちなみに貊は、夢や生気を喰らう物怪で、単独で行動し、夜、人の夢を渡り歩きながら喰う。
「一昨日からなんだが、○△アパートの全員がのっそり歩く豚みたいな生きものをの夢を見たと証言してる。しかしおかしいのは、一人も犠牲者がいないことなんだ。君も知っての通り、貊は夢を好き好んで食べる。なのに何故食べなかったのか。」
「ふーん。それはおかしいなぁ。それが貊だとしたらありえない。奴らは何の見境もなしに喰うんだ。」
まだエプロン姿で隣に座ったキョーコも撫でてやりながら(結構大変だった。
でも二人ともかなり気持ち良さそうに目を細めた。やっぱ動物だなー。)この仕事は面倒かもなぁ、と思った。
「伊達さん。この仕事有り難く、お受け致します。」
「毎度ありがとよ。」
「ちなみに報酬は?」
「五十万。」
「少しあげて頂くわけには…。」
「無理だ。」
「そんなはっきりいわなくても…。(汗)」
その日の夕方、ハルナとキョーコも連れて(かなりせがまれたから。)被害現場に行った。
話を聞かずとも、その土地に入った瞬間、僕ら全員が冷や汗をかくような悪寒がするオーラを纏った何かがいることを感じ取った。
「これは巌気喰生じゃないでしょうか?」
キョーコの言ってることはどうやら正しいようだ。
屋上の貯水タンク辺りからこっちを見ている視線が感じられた。巌気喰生は、「龍鬼。」
押し殺した声で呼ぶと自分のなかの龍鬼が体を支配というか合体した感じがする。
「クータの目、紅いよ。」
ハルナが不安そうに言う。
「これは龍鬼の目の色が映ったんだ。」
「いくぞ!」
巌気喰生の気配が動き、三人とも構える。
ハルナとキョーコは歯を剥きだし、眉間にすごい量の皺が寄っている。
同時にハルナは手や足などに、キョーコは辺り一帯に気(五行で言う金気。)を巡らしている。
彼女達の気はすごい。体中がピリピリする。
ふと僕の真横の気が動いた。
右手をその方向に凪いだ。
手応えがある。
かなりの確立で巌気喰生は真後ろに吹き飛んだはずだ。
ハルナは吹き飛んだ奴を追い掛けて追撃を開始する。
キョーコは金桜吹雪を唱えおわる。
バッとハルナは追撃を止め金気が最も作用するように土気で奴を覆う。
そして金桜吹雪発動。
凄い量の鎌が空気を切り裂き奴も裂く。
俺は金気を利用した水気の術、水牙流転聖を無詠唱で発動させる。
無数の水刃が奴をズタズタにする。
だが巌気という名だけあって、簡単には引きさがらない。
「なぜ邪魔をする。」
皺がれた奴の声がどこからか聞こえてくる。
「それが俺の仕事だからだ。」
また奴が襲ってきた。
龍鬼のおかげで早くなった身体能力を駆使して攻撃しつつ防御する。
ハルナとキョーコは俺の邪魔をしないように小さい術を遠くから放つ。
「これじゃあ埒があかないな。」
独り言をいい。
奴を突き飛ばし距離をとる。
同時に曼陀羅文字で“封”という文字を指で書く。
するとそれが光りだし奴を飲み込む。
「まさかおまえがそうなのか?」
よくわからない独り言を奴は呟きやがて消えていった。
「満月の夜に悪魔の口付けを。」
静かに決め台詞。
「すごぉい。」
ハルナはキャッキャッと喜びながら擦り寄ってくる。
「まさかここまでの術師とは…。」
キョーコは唖然としているようだ。
これぐらい普通なんだがなぁ。こうして彼女達との初仕事を終え、資産がまた増えた。