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第1問 狐登場。(うわー。シンプル!?)

 俺の名前は宗谷 繰太(そうや くうた。

)だ。歳は22。髪は茶色で、背は180。かなり高いと思う。町でよくバスケ選手と見間違われるくらいだ。実は宗谷というのは、岐阜の入り組んだ山のなかにある、ものすごく大きな本家をもつ。昔岐阜一帯の大地主だったらしい。そして武士の習わしということで、宗谷の跡取り候補には代々宗谷流武道が受け継がれる。もちろん跡取り候補でないものも、ほとんどが習う(ちなみに俺はその跡取り候補で、宗谷流武道十段だ)。そして宗谷家の最大の秘密、…それは、昔から陰陽道に密接な関係をもっていたため、その宗谷家のほとんどには産まれた時から物怪もののけないしは、獣に憑かれる。もちろん大体はいうことをきく、家臣的なものだが、中にはあれた性をもつものもいる。 一人に憑く物怪の数は、大部分が一匹だが、その者の器量によって数は増える。今までで最高は一人に九匹だ。 だが俺は生れ付きの物怪がいないらしく。宗谷家から絶縁状態にある。しかし宗谷流武道では、一族の誰にも負けたことはない。 おっと、携帯が鳴ってる。婆ちゃんからだ。(一族のなかで当主の婆ちゃんだけは、俺に何かと接してきてくれる。)

「もしもし。婆ちゃん?」


「おー。クータ、明日家にこい。」


「な、何いきなり?」


「お前に吉報があるんじゃよ。」


「あー。なんかよく分かんないけど明日の昼頃にはそっち行くよ。」


「そうか。では明日な。」

そういって電話を切られた。

 そのあと少し外の空気を吸いたくなったから、今俺は俺が住んでるマンションの前にある商店街にきてる。

あ。そうそう。俺には秘密にしていることがある。それは、俺には産まれた時から物怪が憑いていることだ。なぜ一族が知らないかというと、あまりにその物怪が大きく、人間には感じ取ることができないオーラを発しているからだ。 名前は、龍鬼。そいつは、西洋でいうイフリートにそっくりで、全身が冷たい炎を帯び、肩幅が広い猫背の大男といった感じだ。顔は龍の様で長い髭と頭の後ろのたてがみが格好良い。僕が気付いたのは物心がつきはじめた頃で、それをきちんと理解したのは小学校の六年の時だ。それを他人に言わなかったのは、もう縁を切られたあとで物凄く腹が立っていたからである。 俺は両親がいないから、婆ちゃんに頼って今まで生きてきた。誰を一番守りたいかと言われたら、もちろん婆ちゃんと答える。まあ前口上はこのくらいにして、家に帰るか。――その頃宗谷家本家ではふー。孫が久しぶりに帰ってくることにわしは胸がはずんだ。もう77になったこの身には、孫と物怪以外には楽しみが無い。スッと前方の襖が開いて、幻光げんこうが入ってきた。もちろん若い人間の男に化けているが幻光はわしの物怪の一人で、本当は大鷲の霊じゃ。

「何か用かの?」


「はい。例の者に明日あることを伝えましたところ。快諾してくださいました。」


「お前が敬語を使うほどのやつでもなかろうに。」


「ええ。まあそうですが。」


「もうよい下がれ。」


「は。」


「明日は良い日になりそうじゃ。フッフッフッ。」

わしは独りで笑った。――翌日昼の宗谷家本家の入り口

「あー。やっと着いた。」

大きな門の前で俺はそう呟いた。

俺が住んでるのは静岡だからもちろんここまでは、龍に化けた龍鬼の背中に乗ってきた。

ゴンゴンと、木製の扉を叩くと間もなく脇にある関係者用の小さな扉が開き、幻光が出てきた(ここから登場してくる物怪はすべて人間姿だ。特別な場合はちゃんと書く)。

「こちらからどうぞクータ様。」


「ああ。ありがと」

言いながら関係者用門をくぐる。

見慣れた景色だ。

だが何度見てもきれいだと思う。

道は石畳で両側には桜が植えられている。

今はまだ11月だが春にはとてもきれいな花が咲く。

先導してくれてる幻光に従い、婆ちゃんの部屋まで行った。

部屋に入ると幻光は下がり、襖が閉まった。

「で、今日は何の用?」


「今日はのう、おぬしに物怪を授けようと思っての。」


「へ?物怪?」

妙に裏返った声が出てしまった。

「そうじゃ。もういらんかの?」


「いやいやいやいや。いります。欲しいです。」


「そうか。では早速会いに行ってこい。」


「裏のお産堂でしょ?」

お産堂は、出産に使われる建物で、そこしか物怪は立ち入ることが許されていないから、そこで取り憑き、赤ん坊と共にこの地を行き来できるようになる場所である。

故に神聖で特別な場合以外、入ってはならないのだ。

場所はさっきの本堂の裏でその向こうには、物怪がたくさんいる、岐阜怪地がある。

 堂に入ると、たくさんのオーラが感じられた。

龍鬼ほど強いのはいなかったが。

奥に進むとオーラが全く感じられない、絶世の美女が正座していた。

少し顔を上げこっちを見てくる。

その動作がおしとやかで、ズキューンと心を射ぬかれたようだった。冷静になろうと頑張りながら、

「君が僕の物怪になってくれるのかい?」


「はい。」

静かに答えてくれた。その声は澄んだ小川のせせらぎのようだった。

「君の名前は?」


藕璃ぐうり 響恋きょうこといいます。」


「いい名前だね。俺は宗谷 繰太。よろしくな。」


「もう名前わかっただろ?契約しようぜ?」

契約というのは、指切りをすることによって繋がる契りだ。

「ちょ―――――――っと待った―。」

天井の方から声が聞こえてくる。

「何でわたしに気付かないかな?わたしだってあんたの物怪になりたいんだよ!」

なんか少々怒っている様子。

「あー。ごめん。君の名前は?」


「藕璃 覇瑠凪!」


「君たち姉妹!?」


「ああ。そうだ。」


「へー。じゃあ指きりしよう。」

僕が小指を出すとキョーコも天井から降りてきたハルナも同じように指を出した。

「我宗谷の名において、藕璃 響恋、覇瑠凪と契約を交わす。」

言って、三人共右手の小指を出し指切りをする。これで終わり。

「さて。ここから出よう。」

外へ出ると、オーラを消した龍鬼が、僕の中に戻って行くのが分かった。そして婆ちゃんの所へ戻る。

「おー。成功したようじゃな。」


「はい。」

俺は答えた。その後少し話してから門を出た。

「こっからどうやって帰んの?」

と、ハルナ。

「私たち狐ですから飛べませんよ。」

とキョーコ。

「大丈夫。俺にはもう一人物怪がいる。」


「は?聞いてねえぞ。んなこと。」

とハルナ。

「うん。今まで誰にも言ったことねぇもん。」

平然というと、

「まあいいけどね。」

ハルナ。

「キョーコが嫉妬しない程度にしといた方がいいよ。」


「何言ってんのハルナ!」

とキョーコ。

「龍鬼。」

と呼ぶとボンッと傍らに大蛇が現われた。

「キャッ。」

と二人は僕に抱きついてきた。ウハウハ。

「大丈夫だって。」

渋々二人は了承し、龍鬼に乗った。

そこから1時間位かけて、家まで飛んだ。

家に着くと直ぐに龍鬼は僕の中に入り、ハルナとキョーコは、あまりの広さに目を点にしていた。

超高級マンションと呼ばれるうちのマンションは静岡の顔といっても過言じゃない。

僕の部屋は1502号室で15階にある。

玄関からまっずぐ廊下があって、正面突き当たりの扉を開くとリビングダイニングキッチンがあり、その部屋の左隅の扉を開くと、寝室がある。

寝室にはテレビが一つあり、ベッドは超特大トリプルベッドだ。

今までは一人だったが、今度はここを二人に譲ろうと思う。

そして寝室の奥の扉を開くと、僕の書斎というか趣味の部屋がある。

ここもかなり広いから、いろんなでかい工具がある。

まあこんなとこしか話には出てこないと思うが、本当はあと五つくらい部屋がある。


二人を寝室に案内してここが君たちの部屋だ。というと、


「クータの部屋は?」


とハルナ。


「ああ。そんなことは気にしなくていいよ。どこでも寝れるから。」




「でもご主人さまを独りのけ者にするなんてことはできません。」


とキョーコ。


「そーだよ。どーせだから一緒に寝よ?」


可愛らしく言うが、俺だって年ごろの男だ。


そんなことしたら理性がいつまで保つか分からない。


「だめだって。無理だよ無理。」


あくまで否定する俺。


「ご主人さまはわたくし達のことがお嫌いなのですね?」


目頭を押さえて寝室の床にへたりと座り込むキョーコ。


「いや違うけど…。」


なんと説明すればいいか分からず言葉を濁す俺。


隣では、やーい女泣かせ、とハルナが連呼している。


俺はおろおろした挙げ句、キョーコの肩を抱くように立たせ、


「わかったよ。一緒に寝るよ。」


と言ってしまった。



――そうして俺の慌ただしい日々が、始まった。――

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