表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

承認欲求?

家族と従兄弟達に「親離れしなさい。」と言われた愛恋(あいこ)は、言い返した。


「出て行くわ。

 でも、それは結婚して出て行くのじゃないからね。

 それは期待するだけ無駄だから諦めてね。」

「愛恋、そんなに向きにならなくても……。」

「あ……ごめんなさい。お母さん。

 でも、そろそろ出ないとね。

 なるべく早く出るようにするわ。

 親離れしないと……ね。」

「愛恋……、一人で暮らせるのか?」

「やってみないとね。お兄ちゃん。」

「愛恋ちゃん、あまり遠くない所でね。」

「実家から?」

「ええ。」

「それじゃ意味が無いな。」

「そうよね。……それに……今の私って何も無いのよね。」

「何も無いってどういうこと?」

「そのままよ。何も無い人生ってこと。」

「何も……って、そんなことないわよ。愛恋ちゃん。」

「お義姉さん、私は結婚してない。だから、子どもも居ない。

 仕事も私が居なくても何も問題ない。

 趣味も無ければ、夢も無い。」

「そんな………。」

「だから、何かを残したいな……と思ったりしてるの。」

「愛恋、何かって、何なんだ?」

「お父さん、あのね……私、物語を書こうと……っていうか書いてるの。」

「物語?」

「うん。投稿したいと思って書き始めてるのよ。

 私がネット上に残すの。」

「あのさ…………。

 それって、多くの人に読んで貰いたいっていう承認欲求?」

「承認欲求?……そうかもしれないわ。」

「自己顕示欲ではないの?」

「それは、どうだろう? 絶対に目立ちたいって訳じゃないもん。」

「見てくれないかも……でも?」

「う………そうね。」

「じゃあ、自己顕示欲では無いわね。

 目立ちたくないんだったら……。

 でも、認めて貰いたいんだ。誰かに……。」

「うん。」

「で、どんなのを書いたんだ?」

「色々、見てるとね。」

「うん。」

「タイトルは長い方が読んで貰えるみたいなのよね。」

「ふぅ~~ん。今はそうなの?」

「ネット小説は。」

「川端康成『伊豆の踊子』、森鴎外『舞姫』、樋口一葉『たけくらべ』……。

 それから……夏目漱石『坊ちゃん』、昔の小説家は短いな。」

「F・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』も……。

 あぁ、それからエミリー・ブロンテ『嵐が丘』やマーガレット・ミッチェル『風

 と共に去りぬ』とかね。

 確かにタイトルは短いな。」

「そうね、短いわ。

 あのね……実は、私読んだことがあるのよ。WEB小説を……。」

「ええ――っ! お母さんが?」

「ええ、でも何と言うか……『水戸黄門』なのよね。」

「『水戸黄門』?」

「私が好きな時代劇だ。」

「そうですね。お義父さん。」

「色々あるけど、最後はハッピーエンドなのよね。私が読んだのは……。

 それから、設定も似通ってるのよ。

 西洋の中世のような異世界へ転生するの。

 ……そして、王子様とかとハッピーエンド。」

「そうですね。大まかに言えば……。」

「それで、そんなのを書いてるのか?」

「う……ん。

 ……だって、読んで貰えないと悲しいじゃん。」

「承認欲求そのものだな。」

「もう!……お父さん!」

「そうだよね。伯父さん。」

「承認欲求でも良いじゃないか。何かに打ち込めた……なぁ、そうだろう。」

「まぁ……そうだけど……誰も読んで貰えなかったら承認欲求は叶えられないか

 ら……

 それは、どうなんだと、思うんだけど……お父さん。」

「いいじゃないか。孫娘が書いた小説なら私は読むよ。」

「読者一人獲得ぅ!」

「愛恋、楽しめるようにしなさい。

 誰にも読んで貰えなくても、書き上げた喜びを感じられたらいいんじゃないか。

 お前には仕事があるのだからね。」

「それは、勿論!

 それこそ、親離れするために、会社にはしがみ付くわ。」

「まぁ、楽しみなさい。」

「はぁい。」

「はい、は短く!」

「はい。」


愛恋は、物語を書くことを続けた。

小説家には、なれないけれども……誰にも読んで貰えないけれども……頭の中にある言葉を繋げて物語を作っていく楽しみは「寂しい時間」を減らすことになった。


愛恋は結婚したい女の子だった。

恋もしたかった。

でも、残念なことに、そんなチャンスは訪れなかった。

その理由を「背が高いから!」にしている。

母や義姉のように可愛い女の子に生まれたかったと密かに思っている。今も……。

そう、そして自分が書いた物語では背が高い女の子が幸せな結婚をするという物語を書きたいと思っている。

自分がなりたかった女の子を書こうと思っているのだ。

その物語が誰の目にも止まらなくても良いと本当に思える日が来るかは、誰にも分からない。


小説家に……なり……たい……愛恋なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ